夢と石牢ーエルフの女と淫魔の男ー

blueblack

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ばかげてる

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 アリアは、初めての感覚に戸惑っていた。
 ヘルディの腕に抱かれて、愛撫を受け続けている。体は勝手にくねって、甘い声が止められない。

「あ、あああ……っ」

 軽い音を立てて乳首を吸い立てられ、ゆっくりと膣内を擦り上げられる。じわじわと頭の奥が熱を持つ。疼き、脈打つような熱だ。抗いようもない官能だ。
 ぱちり、と黒い瞳と目が合う。
 頬が熱くなって視線を外そうとするが、頬に手を添えられてそれも叶わない。

「目、逸らさないで」
「な、んで……」
「見たいから」
「なんですか、ぁ、ああっ。悪、趣味っ」
「そう思うなら反応しなければいい」
「そんな、こと……っ! あう、うううっ」

 できないとわかっていて言っているのが表情からありありと伝わってきて、憎たらしいやら悔しいやら。
 せりあがって溜まってきた快感がいよいよ耐えがたくなってきて、アリアはヘルディの衣服を握り締める。

「ふ、ぅぅうっ! も、う……っ」
「いいよ。イって」
「ああ、んっ、あう、あううっ、あああっ!」

 調教で受けてきた絶頂は、責め立てられ、蹂躙され、外から叩きつけられるような感覚だった。
 だが、今は違う。
 体の中心が熱を持って、それが全身を駆け巡って外に弾けるような感じに、アリアは必死に体を縮こまらせる。
 ヘルディの指が、前髪を梳く。まるで愛する人にするように額にキスを落とされて、仄かな笑顔を向けられる。

「綺麗だよ」
「…………ひ、あっ! ああうっ! イ、く……っ」

 ぎゅう、と心臓を鷲掴みにされたように脈が上がる。感度も上がる。受けている愛撫に体が悦んで震える。
 乳首を触れるか触れないかぐらいの強さで撫でられ、蜜壺の指はGスポットを擦られる。さらに、陰核をぴん、と弾かれ、快楽が完全に飽和した。

「イく、イきま、すっ! いっくぅぅああああっ!」

 顔を抑えられて背けることもできず、絶頂の瞬間も見られながら、アリアは頂点を極めて激しく痙攣する。子宮を中心に痺れが伝播して、薄く媚肉の乗った四肢がふるふると震えた。
 ―――気持ち、良い。
 言わされたのではなく、自然と頭に浮かんだ感想を振り払う冷静さは、今はなかった。
 休む間もなく再開されるヘルディの愛撫を誘うように、無意識に太腿を薄く開く。硬い胸板に体重を預け、服を強く握る。

「あんっ、ふああ……ああああっ!」

 くすりと笑われた気がしたけど、それも今はどうでも良かった。
 全てを忘れて、ただ気持ち良くしてほしかった。
 喘ぎ声をあげ、体を震わせて、じんじんと痺れる頭が白く染まっていく。
 呼吸が浅くなり、ぐちゅぐちゅ、という音が強くなり、秘貝を責められまた果てる。
 抱き留められたアリアの下で、新しい緑が芽生え始めていた。

    ◇

 流石にちょっと腕が痺れた。
 ぐいーっと伸びをして、ヘルディは首をこきりと鳴らす。もう少し真剣に筋トレでもしてみたほうが良いかもしれない。女を抱いている途中にぷるぷると腕が震え出すなんて、みっともないことこの上ない。

「ちょっと復活してきたね。陽も出てきたし、その辺の公園ぐらいの広さだけど緑も戻った。いやあ良かった良かった」
「……………………」
「良かったよね? ねえ? おーい? なんでそんな隅っこでどんよりしてるの?」
「……ほっといてください」

 愛液などを拭きとられ、緑地の端で体育座りをしているアリアに声をかけるが、返事はそっけない。白いローブを纏って荘厳な雰囲気を醸す彼女が、幼子のように丸まっている姿はなかなかにシュールだ。

「まあまあ、元気も出たでしょ? おいでよ、林檎あげるから」
「……ますます動きたくなくなりました」
「敵に弱音を漏らして、あまつさえせがむように気持ち良くさせられて、それで心が元気になっている自分に葛藤していても良いことないよ? いじけるなって」
「そこまで言うことないじゃないですかっ!」

 ずかずかと迫ってきて、アリアの細い指がヘルディの眼前にびしりと突き出される。

「だいたい! あなたがもっとわかりやすければこんなことには……っ! というか今もわからないんですが、本当に何が目的なんですか! 敵に塩を送るようなことして……。まさか、心を折るのが楽しいから、持ち直させようとか思ってるんじゃ……」
「ああ、さっきのアレは塩を送られたカウントなんだ。やーい変態」
「黙りなさいっ!」
「オーケイ、だから風刃はしまおう。死んじゃう」

 へらへらと両手を上げて、ヘルディはにこやかに言う。

「敵か味方かって言うと悩ましいけど、僕は君を助ける気でいるよ」
「……助ける、とは」
「魔封石を外してあげる」

 後は自分で何とでもなるでしょ、と言われて、アリアは口をつぐむ。
 おそらく何とかなる、とは思う。だが、無視するには大きすぎる不安要素が一つある。

「敵の本拠地で、消耗したこちらに対し、万全のナスチャ=レインロード。……それでも正面からぶつかれば負けるとは思いませんが、搦め手あり罠ありと考えると、なんとも言えないですね」
「謙虚だねぇ。じゃあ、逆にナスチャが妨害に来なかったら?」
「どうとでもなります」
「だよね。だから彼女は、なんとかする」

 少し口調を速めて、ヘルディは言う。
 実のところ、そろそろ限界だった。
 強烈な力で、現実に体を引っ張られているのを感じる。火傷の痛みが強すぎて、本体が意識を取り戻そうとしているのだろう。当然、夢への介入は寝てないと行えない。

「決行は明日の夜。心構えはしておいてね。ごめん、詳しい話はまた後で」
「あ、ちょっと……っ!」

 アリアが何かを言おうとしているが、ヘルディの意識はそこで途絶えた。

    ◇

 ヘルディがいた場所に、アリアは手を伸ばす。
 伸ばした手を、今度は自分の胸に当てる。
 感度が戻っているはずの心臓がうるさく鳴っていて、うつむく。誰がいるわけでもないのに、翡翠色の髪で表情を隠そうとする。
 ―――馬鹿げている。
 相手は忌子だ。人間だ。インキュバスだ。調教師で、最低の感性を持ち、へらへらしていて、何一つ信用できない詐欺師のような男だ。

「……馬鹿げてる」

 術者がいなくなって溶けるように崩れる夢の世界で、もう一度ぽつりとつぶやいた。
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