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なんかデジャヴ
しおりを挟む「・・・という訳で、私たちが飲む前にあっさりと暗殺計画が発覚してね。側妃はその場で拘束、その後直ぐに処刑になった。
全員まとめて毒殺とは、随分と短絡的なやり口だよねえ」
「いや、何が『という訳で』ですか!」
カップを傾けながら説明するユスターシュは淡々としているが、聞いてるヘレナとしては、とても落ち着いてはいられない。
「『短絡的なやり口だろう?』なんてあっさり終わる話じゃありませんよ! その毒を自分で飲んだ人はどうなったんですか、まさか無実を証明する為に死んでしまったんですか?」
「え? もちろん生きてるよ」
驚きすぎて、もはや心の中で呟くことも忘れて絶叫したヘレナに、ユスターシュはさらりと返す。
「やだな、ヘレナ。あなたも今朝、会って話したじゃないか」
「・・・はい?」
「あれ? もしかして気づいてない? 話の中で名前が出てたでしょ?」
「なまえ・・・」
「そう。言ったよね、ハインリヒって」
「ハインリヒ・・・ハインリヒって、あのハインリヒさまのことですか? え? 図書館長の?」
「そう。図書館長のハインリヒ」
「・・・」
ヘレナは次の言葉がなかなか出せず、ぽかんと口を開けてしまう。
穏やかでダンディな図書館長の知られざる過去が、突然に暴かれてしまった。こんな時に何だが、ちょっと秘密諜報員の気分である。
「でもあの、毒は、毒を飲んだのにどうして」
「侍従の一人に医者を紛れ込ませておいたんだ。ローハン兄上のポケットにも水と解毒剤を忍ばせてあったしね」
「・・・はあ」
「もう凄い早業だったんだよ。兄上がパッと立ち上がって速攻でハインリヒに水を飲ませたと思ったら、医者が口の中に手を突っ込んで吐かせてさ、今度はすかさず解毒剤を飲ませて」
・・・ああ、やっぱり死にかけたんですね、ハインリヒさま。
ヘレナは思わず目を瞑った。いや、決して冥福を祈る為ではない。
「ハインリヒもさ、毒が入ってるって知らせたかったのなら一口飲むくらいで済ませれば良かったのに。一気に全部飲んじゃうものだから、あの時は私もかなり焦ったよ」
なかなか悲惨な話をしていると思うのに、何故だろう、『あんな時代もあったな』的なノスタルジックな表情は。
「・・・裁定者の言葉があれば、そんな茶番劇の様なことをしなくても良かったんじゃないですか?」
「本当に『裁定者』の言葉と認められてたならね」
空のカップを置くカチャリとした無機質な音が響く。
「でもまだあの時は、誰もそうは思ってなかった。証明する十分な時間もない。
何せ初めて能力が発現した訳だし、まだ私の髪も眼も完全に灰色にはなっていなかったからね」
「なるほど・・・」
「それに、もし私たちが先に動いていたとしたら、ハインリヒもその家も処罰対象から外れなかっただろう。毒は側妃が用意したとしても、それを混ぜ込むのに使用した茶葉はハインリヒの父親が献上したものだし、茶の用意をしたのはハインリヒだ」
「あ、なるほど」
「私も最後まで彼がどう動くか読めなかったよ。ハインリヒは・・・嫌がっていたし躊躇もしてたけど、それでもずっと悩んでいたからね」
ああ、そうか。
人質を取られてたんだっけ。
「ローハン兄上とレクター兄上が真面目に話を聞いてくれたから直ぐに対処出来たんだ。でなかったら、本当にハインリヒは死んでたかもしれない」
おおう。またとんでもない事をさらりと言ってくれましたね。
・・・あら? そう言えば、その人質に取られていた妹さんは無事だったのかな?
「ああ、もちろん無事だよ。やだな、ヘレナ。あなたも今朝、会って話したじゃないか」
そう言って、マノアだよ、とユスターシュは微笑んだ。
・・・なんかデジャヴ・・・
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