【完結】あなたが私を『番』にでっち上げた理由

冬馬亮

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膝枕効果

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「・・・なんか随分とお疲れの様ですね」


今日も今日とて帰りが遅くなったユスターシュは、げっそりとやつれた顔になっていた。


二人で夕食を取った後、ユスターシュは補給と称してヘレナの膝枕を所望する。


「え? ええええ?」


小さい頃からロクタンに追いかけ回されていたとは言え、恋愛経験そのものは皆無のヘレナ。

ユスターシュが時折り不意打ちでスキンシップをするものの、それだってまだ手を握ったり、エスコートしたりとかの控えめなものだ。

まあ確かに、指先に口づけを落とされたりとか、一度だけだけど抱き・・・抱きしめられたりとかはあったけれども。

だからと言って膝枕はちょっとハードルが高すぎやしないだろうか、とヘレナは真剣に悩む。


「膝枕がダメなら、またハグでも良いよ? でも、もの凄く疲れてるから、最低でも10分くらいは抱きしめたままでいさせて貰うけど」

「膝枕でお願いします・・・っ」


ヘレナは速攻で返事をした。




「あ~、癒される~・・・」


ヘレナの膝の上で気持ち良さそうに頭をころころ左右に動かすユスターシュは、年上なのにどこか可愛らしい。


そして、これは今回初めて膝枕をして気づいた事なのだが、いざやってみると意外に落ち着くのだ。

ドキドキと言うより、心がぽかぽかする感じで、視線を落とすと無防備に寛いだユスターシュが見えるのが、なんとも言えない特別感がある。

さらりと横に流れた灰色の髪に触れたい気持ちになるのは、きっと膝枕効果なのだろう。

安心しすぎて、居心地が良すぎて、いつもなら意識して出来ないことも当たり前のように出来るような、そんな気分になるのだ。


たとえば、ほら。こんな風に。


ヘレナは手を伸ばし、ユスターシュの髪をさらさらと指で梳く。

すると、ユスターシュは気持ち良さそうに目を細める。


きっとこんな事は、膝枕の時しか自然に出来ないだろう。


そうか。

膝枕って、やってあげる方も補充になるんだ。


ヘレナは、ふふ、と微笑んだ。


今日は、朝から夕方まで、書庫にこもって本を読んでいた。
本は大好きだからとても楽しかったし、寂しいなんて思いもしなかったけれど、でもやっぱりこうしていると。


「・・・こうしていると?」


ユスターシュが瞑っていた目を開け、ヘレナを見上げる。

その目には、ちょっとの期待がこめられていた。


「ねえ、教えて。こうしていると、なに?」

「・・・聞こえているのに?」


心で呟くのと、口に出して言うのとでは全然違う。振り絞る勇気が、全く、全然。


だからユスターシュが心を読み取ってくれるのはとても有り難いのだ。
だって、これはちょっと、いや本当に、かなり、とても恥ずかしいから。


「・・・口に出して言ってよ。ヘレナの声で聞きたい」

「・・・」

「お願い」

「・・・うう」


口に出すのは勇気が要るって言ってるのに。



ヘレナは観念した。

少し前屈みになって、ユスターシュの耳元近くに唇を寄せる。


そしてこう囁いたのだ。


ーーー ユスターシュさまと一緒にいる時間が、一番好きだなぁって思います


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