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素敵な上書き
しおりを挟むーーー本当に裁定者になったのか。考えている事が何もかも筒抜けとは恐ろしい
ーーー今はあの子に会えないわ。心の準備が必要なの・・・だって、もう普通の子ではないのよ?
ーーー怖いな、もう俺の知ってるユスじゃないんだ
ーーー部屋にいなさい、側に来ないで
ーーーすまん、今はまだお前に会えない
そう言って、彼らはユスターシュに背を向ける。
つい昨日まではユスターシュに笑いかけ、抱きしめ、頭を撫でてくれていた『家族』たちが。
これらの言葉を投げかけられたのは、ユスターシュが5歳の時。
そう、能力が発現したばかりで、誰も彼もが混乱し戸惑っていた時だった。
決して嫌われた訳ではなかったのだと、今なら分かる。
ユスターシュが混乱した様に、彼らもまた混乱していたのだ。ただそれだけだった。
けれど、その時のユスターシュが世界全体から拒絶された気持ちになったのも、仕方ない事だった。
なのに、不思議なことに今そこに蹲っているのは幼子ではなく、何故か成長した23歳の彼で。
大人のユスターシュは、ただ唇を噛み、去っていく家族の背中を見つめていた。
その時だ。
―――便利な力ですよね
―――だって、口にしなくても分かってもらえるんだもの
―――罰する為じゃなくて、正しい人を守る為に裁きの目が与えられるの
―――裁定者に選ばれるのは、それができる人なのよ
この声、この言葉は。
ユスターシュがそう思った時、意識が浮上した。
「・・・」
目を覚ましたユスターシュは、右の手で額を抑え、大きく息を吐いた。
久しぶりの夢だった。
最近は見る事が少なくなって、遠い記憶になりかけていたあの頃の苦しい思い出。
・・・でも。
「ヘレナが出て来たのは初めてだ・・・」
そのせいだろうか。
これまでとは違い、頭も気持ちもスッキリしている。
水に流したつもりでいた事が、けれどやっぱり心のどこかに棘の様に突き刺さっていて、それがやっと抜けた様な、そんな気分。
まだ傷は残っていて、時々ひりつく事はあるけれど、たぶん後は回復していくだけの。
「・・・」
額に当てていた手をずらし、両目を覆う。
夢の終わりは、ヘレナの笑顔だった。
皆の背中ではなく、ヘレナの笑った顔。
嬉しそうで、ちょっと得意げな、ヘレナの可愛いドヤ顔。
思い出すだけで、ふ、と自然に笑みが溢れる。
なんて素敵な情報の上書きだろう。
きっと、もうあの夢で嫌な気分になる事はない。昔を思い出して気持ちが沈む事も。
だってユスターシュにはヘレナがいるから。
「・・・さて、そろそろ起きないとね。今日は待ちに待った結婚式だもの」
そう、今日ユスターシュは、彼にとって番とも言える唯一無二の女性、ヘレナと結婚する。
「よし、頑張るぞ」
実はその前にロクタンとひと仕事あるのだけれど、その後のご褒美を思えばなんてことはない。
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