53 / 256
もしこれが恋だとしたら
しおりを挟む
アリエラさまとカトリアナさまは、エントランスに出迎えに出た私の顔を見るなり、泣きそうな顔で飛びついてきた。
「エレアーナさまっ! ご無事でよかったですわ!」
「知らないところで、そんな恐ろしい事が計画されていたなんて、もう、本当に、何て言ったらいいのか・・・」
息が出来なくなるかと思うくらい、ふたりに両側からきつく抱きしめられる。
一緒に迎えに出ていたアイスケルヒが、エレアーナへの親愛の情に感謝を示しつつ、そっとふたりを引き離す。
アリエラたちは真っ赤になって恥じらって、それがまたなんとも可愛らしい。
ふたりの恥じらう姿に薄い笑みで応えた後、アイスケルヒは、実に優雅にサロンの入り口まで皆を案内した。
エレアーナはそんな兄の姿を見て、氷の貴公子と呼ばれているとの話だったけれど、やはり噂は噂、兄はやはり優しい紳士な態度を崩さないわ、などと考えていた。
そんないつも友人同士の姦かしましさも、お茶を飲んでひと息吐いたら、なんだか少し様子が変わり始めて。
「・・・こんな事を言ったら、エレアーナさまに怒られてしまうのかもしれませんけど・・」
なんだか嬉しそうにアリエラが話を切り出した。
「お顔を見るまでは、心配で心配でたまりませんでしたの。・・・ですが、ふふ、ちょっと安心しましたわ。エレアーナさま、すごくお幸せそうです」
「へ?」
「ええ、本当に。それに、なんでしょう。もともと素晴らしくお綺麗でいらしたけど、さらにお美しくなられましたわ」
嫌味でも、好奇心でもなく、素直に心から、そう言ってくれているのは、わかる、けど。
幸せそう?
さらに美しく?
・・・それは、どういう意味なのかしら。
いま一つ、よくわかっていないエレアーナを他所に、マスカルバーノ姉妹は会話をどんどん進めていく。
「今までのエレアーナさまは、なんていうのかしら、気持ちに余裕があったというか、もっとさらりと受け止めていたというか・・・」
「ええ、わかりますわ。あの天然なエレアーナさまも、いい味出してましたけれど、今はもう完全に乙女ですわね」
「・・・乙女?」
今はって、私は前から乙女ですよ?
「そうですわ。恋する乙女」
途端に、ぷわっと顔が赤くなるのが、自分でもわかって。
ええ、なに? 妄想がたくましいだけかと思ってたけど、実はものすごく鋭いお方だったりするの?
「ふふ、エレアーナさま。お顔が真っ赤ですわ。なんてお可愛らしい」
「良かったですわね。これで殿下の今までの頑張りも報われるというものですわ」
・・・ダメだ、このふたりとは実力が違いすぎる。
というか、アリエラさまとカトリアナさまって、今の私の悩みの相談相手として最適なのでは・・・?
でも、ケインさまの話もしなきゃいけなくなっちゃうし・・・。
「まぁ、でも、ケインバッハさまには、お気の毒ですけれど」
「そうですわね。エレアーナさまを心からお慕いしているご様子でしたものね」
ぶっ。
・・・危うく、飲みかけてたお茶を吹きこぼしそうになって。
え? この方たち、千里眼か何か?
凄い。
頼りになる、かも。
「あの・・・」
ぷるぷるぷるぷる
アリエラの肩が震えている。
カトリアナは両手を頬にあてて、目をうるうるさせている。
「まぁまぁまぁまぁ! まぁまぁまぁまぁ! そんな素晴らしい、夢のような展開が!」
「さすがは殿下ですわ! なんて太っ腹なのかしら! ああ、二人の麗しい殿方から同時に愛を告げられるなんて・・・。これぞ乙女の晴れ舞台ですわ!」
「・・・」
・・・ああ、おふたりが嬉しそうなのは、なぜかしら。
「殿下のような方なら、きっとスマートにエレガントにすべてをびしっと決められたに違いないわ。ああ、でもケインさまはどうだったのかしら。やはり、ここは格好よく? いえいえ、普段はあんな涼し気な顔で澄ましてらっしゃっても、告白の段となると実は・・・なんてこともあるわよね」
・・・す、鋭い。
「そうですわ、お姉さま。わたくし、きっとケインさまは、ひどく純情でいらっしゃると思うんですの。きっと、ものすごく緊張して、エレアーナさまの元に向かう時に、右手と右足が同時に出ていたり・・・なんてしていたら、可愛らしすぎです!」
そこまでじゃなかったけど、かなり近いです。カトリアナさま。
「ああ、そうね! それをケインさまがおやりになったら、ギャップがすごすぎて、一瞬で心臓を撃ち抜かれてしまうわ!」
う、撃ち抜かれる・・・。心臓を撃ち抜かれるって。
・・・まぁ、確かに、あの照れたお姿は可愛らしいわよね。
普段との差が・・・。
「エレアーナさま? どうかなさいまして?」
あれ、ど、どうしよう。
あのときのこと、思い出したら。・・・また、心臓がばくばくしてきた。
もう、体が熱くて、胸のあたりがキュッとして、息が、しづらい。
これが、もし、恋というものなのだとしたら。
私は、これまで、ものすごい勘違いをしていたのだと思う。
だって、もっと楽しいものかと思ってた。
恋をするって、もっと幸せな気持ちになるものだと、そう思っていたから。
「エレアーナさまっ! ご無事でよかったですわ!」
「知らないところで、そんな恐ろしい事が計画されていたなんて、もう、本当に、何て言ったらいいのか・・・」
息が出来なくなるかと思うくらい、ふたりに両側からきつく抱きしめられる。
一緒に迎えに出ていたアイスケルヒが、エレアーナへの親愛の情に感謝を示しつつ、そっとふたりを引き離す。
アリエラたちは真っ赤になって恥じらって、それがまたなんとも可愛らしい。
ふたりの恥じらう姿に薄い笑みで応えた後、アイスケルヒは、実に優雅にサロンの入り口まで皆を案内した。
エレアーナはそんな兄の姿を見て、氷の貴公子と呼ばれているとの話だったけれど、やはり噂は噂、兄はやはり優しい紳士な態度を崩さないわ、などと考えていた。
そんないつも友人同士の姦かしましさも、お茶を飲んでひと息吐いたら、なんだか少し様子が変わり始めて。
「・・・こんな事を言ったら、エレアーナさまに怒られてしまうのかもしれませんけど・・」
なんだか嬉しそうにアリエラが話を切り出した。
「お顔を見るまでは、心配で心配でたまりませんでしたの。・・・ですが、ふふ、ちょっと安心しましたわ。エレアーナさま、すごくお幸せそうです」
「へ?」
「ええ、本当に。それに、なんでしょう。もともと素晴らしくお綺麗でいらしたけど、さらにお美しくなられましたわ」
嫌味でも、好奇心でもなく、素直に心から、そう言ってくれているのは、わかる、けど。
幸せそう?
さらに美しく?
・・・それは、どういう意味なのかしら。
いま一つ、よくわかっていないエレアーナを他所に、マスカルバーノ姉妹は会話をどんどん進めていく。
「今までのエレアーナさまは、なんていうのかしら、気持ちに余裕があったというか、もっとさらりと受け止めていたというか・・・」
「ええ、わかりますわ。あの天然なエレアーナさまも、いい味出してましたけれど、今はもう完全に乙女ですわね」
「・・・乙女?」
今はって、私は前から乙女ですよ?
「そうですわ。恋する乙女」
途端に、ぷわっと顔が赤くなるのが、自分でもわかって。
ええ、なに? 妄想がたくましいだけかと思ってたけど、実はものすごく鋭いお方だったりするの?
「ふふ、エレアーナさま。お顔が真っ赤ですわ。なんてお可愛らしい」
「良かったですわね。これで殿下の今までの頑張りも報われるというものですわ」
・・・ダメだ、このふたりとは実力が違いすぎる。
というか、アリエラさまとカトリアナさまって、今の私の悩みの相談相手として最適なのでは・・・?
でも、ケインさまの話もしなきゃいけなくなっちゃうし・・・。
「まぁ、でも、ケインバッハさまには、お気の毒ですけれど」
「そうですわね。エレアーナさまを心からお慕いしているご様子でしたものね」
ぶっ。
・・・危うく、飲みかけてたお茶を吹きこぼしそうになって。
え? この方たち、千里眼か何か?
凄い。
頼りになる、かも。
「あの・・・」
ぷるぷるぷるぷる
アリエラの肩が震えている。
カトリアナは両手を頬にあてて、目をうるうるさせている。
「まぁまぁまぁまぁ! まぁまぁまぁまぁ! そんな素晴らしい、夢のような展開が!」
「さすがは殿下ですわ! なんて太っ腹なのかしら! ああ、二人の麗しい殿方から同時に愛を告げられるなんて・・・。これぞ乙女の晴れ舞台ですわ!」
「・・・」
・・・ああ、おふたりが嬉しそうなのは、なぜかしら。
「殿下のような方なら、きっとスマートにエレガントにすべてをびしっと決められたに違いないわ。ああ、でもケインさまはどうだったのかしら。やはり、ここは格好よく? いえいえ、普段はあんな涼し気な顔で澄ましてらっしゃっても、告白の段となると実は・・・なんてこともあるわよね」
・・・す、鋭い。
「そうですわ、お姉さま。わたくし、きっとケインさまは、ひどく純情でいらっしゃると思うんですの。きっと、ものすごく緊張して、エレアーナさまの元に向かう時に、右手と右足が同時に出ていたり・・・なんてしていたら、可愛らしすぎです!」
そこまでじゃなかったけど、かなり近いです。カトリアナさま。
「ああ、そうね! それをケインさまがおやりになったら、ギャップがすごすぎて、一瞬で心臓を撃ち抜かれてしまうわ!」
う、撃ち抜かれる・・・。心臓を撃ち抜かれるって。
・・・まぁ、確かに、あの照れたお姿は可愛らしいわよね。
普段との差が・・・。
「エレアーナさま? どうかなさいまして?」
あれ、ど、どうしよう。
あのときのこと、思い出したら。・・・また、心臓がばくばくしてきた。
もう、体が熱くて、胸のあたりがキュッとして、息が、しづらい。
これが、もし、恋というものなのだとしたら。
私は、これまで、ものすごい勘違いをしていたのだと思う。
だって、もっと楽しいものかと思ってた。
恋をするって、もっと幸せな気持ちになるものだと、そう思っていたから。
19
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~
景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」
「……は?」
そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!?
精霊が作りし国ローザニア王国。
セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。
【寝言の強制実行】。
彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。
精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。
そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。
セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。
それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。
自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!!
大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。
すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる