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見えない本心
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考えていても埒が明かない。
リュークザインは、そう結論した。
ファイについて調べようとしても。
誰に聞いても、皆が同じ意見を口にする。
判で押したように同じことを答えるのだ。
それでも、どうしても拭うことが出来ない、言葉では表せないこの違和感。
何の証拠もない。確たる理由もない。
あるのは違和感を訴え続ける自身の感覚だけ。
自分に信を置いてくれている陛下にさえ、報告を躊躇してしまうような。
そんな、あやふやな疑念。
いつもだったら、こんな不定要素では動かない。
動けない。いつもだったら。
だが、シュリエラが。
もし、シュリエラが、駒として狙われていたら。
やっと、父からの呪縛から逃れられた妹が、また何かに囚われてしまったら。
そう思うと。
動く。この選択肢しかなくて。
私の手には負えないのかもしれない。
だが。それでも。
後悔するのは、もう御免だから。
「・・・ファイ」
藤色の髪の使用人は、私の声に気づくと、ゆっくりと振り向いて、薄い笑顔で答えた。
「何でございましょう、リュークザインさま」
そのとき、私は本能的に背筋にぞくりと冷たいものが走るのを感じた。
焦りと恐怖をポーカーフェイスで覆い隠し、リュークザインは真っ直ぐに相手の顔を見つめる。
そして、努めて平静な声で問いかけた。
「お前は・・・何者だ?」
リュークの言葉に、ファイは薄い笑みを浮かべながら首を傾げる。
「嫌ですね、リュークザインさま。たった今、私めをファイとお呼びになったではありませんか」
「そのような意味で問うているのではないと、分かっているだろう」
背中を嫌な汗が伝う。
なんだ。・・・この威圧感は。
拳をぐっと握りしめ、声を振り絞る。
「ファイ。・・・お前は、何の目的でここにいる?」
首を傾げたまま、ファイはじっとリュークの目を見つめた。
測るように。探るように。
それから、ゆっくりと口を開いた。
「まるで、私めに、ここにいて欲しくないと仰りたいかのような口ぶりですね。腕を買われて是非にと請われて参りましたのに」
な・・・?
この男、何を言っている?
口を開こうとしたリュークを、ファイは両手を前に出して制する。
「ああ、何もおっしゃらないで下さい、リュークザインさま。私めに何か不足がございましたらお詫びいたしますから」
「な・・・?」
「私はここが気に入ってるのです。まだ、ここで働かせていただきたいのですよ」
・・・正面からぶつかっても、無駄ということか。
「もうしばらく、ここに置いてください。御者としての腕にも、さらに磨きをかけましょう。馬の世話も、もっと念入りにいたします。それでもまだ、私めが必要ないと判断されるようでしたら・・・」
不自然に言葉が途切れ、ファイは一度息を吐く。
「その時はすぐに故郷に帰りますので」
なんだ?
何か・・・見落としているような気がする。
「・・・そこまで、この家に拘る必要もないと思うが」
その言葉に、ファイが面白そうに片眉を上げた。
「私めは、とても気に入っているのですよ。・・・貴方さまが」
「・・・私が?」
「はい。辛抱強く、決して諦めることなく、それでいて情もお有りで、難しいご気性の他のご家族の方々を簡単に切り捨てることが出来ない、お優しい次期当主さまが」
リュークの反応を試すかのように、じっとその目を見つめながら言葉を継いでいく。
「だからこそ、お力になれたらと思っているのです。・・・恐らくは、最後まで非情な手段を取ることは出来ないであろう貴方さまをお助けしたいと、そう思いましてね」
リュークはごくりと唾を飲んだ。
早く。
早く理解せねば。
この男の言わんとしていることを。
この男の本心を。
焦るリュークザインを他所に、ファイは、ふわりと包み込むような極上の笑顔を浮かべた。
「ご心配なさらずとも、いずれその時が来たら、こちらから伺いますよ。・・・私めが必要かどうか」
さらに優しげに目を細める。
「なに、もう直でございます。・・・そのときには、どうか賢明なご判断をお下しくださいませ」
そう言うと、ファイはくるりと向きを変え、厩舎の方へと戻って行った。
リュークザインは、そう結論した。
ファイについて調べようとしても。
誰に聞いても、皆が同じ意見を口にする。
判で押したように同じことを答えるのだ。
それでも、どうしても拭うことが出来ない、言葉では表せないこの違和感。
何の証拠もない。確たる理由もない。
あるのは違和感を訴え続ける自身の感覚だけ。
自分に信を置いてくれている陛下にさえ、報告を躊躇してしまうような。
そんな、あやふやな疑念。
いつもだったら、こんな不定要素では動かない。
動けない。いつもだったら。
だが、シュリエラが。
もし、シュリエラが、駒として狙われていたら。
やっと、父からの呪縛から逃れられた妹が、また何かに囚われてしまったら。
そう思うと。
動く。この選択肢しかなくて。
私の手には負えないのかもしれない。
だが。それでも。
後悔するのは、もう御免だから。
「・・・ファイ」
藤色の髪の使用人は、私の声に気づくと、ゆっくりと振り向いて、薄い笑顔で答えた。
「何でございましょう、リュークザインさま」
そのとき、私は本能的に背筋にぞくりと冷たいものが走るのを感じた。
焦りと恐怖をポーカーフェイスで覆い隠し、リュークザインは真っ直ぐに相手の顔を見つめる。
そして、努めて平静な声で問いかけた。
「お前は・・・何者だ?」
リュークの言葉に、ファイは薄い笑みを浮かべながら首を傾げる。
「嫌ですね、リュークザインさま。たった今、私めをファイとお呼びになったではありませんか」
「そのような意味で問うているのではないと、分かっているだろう」
背中を嫌な汗が伝う。
なんだ。・・・この威圧感は。
拳をぐっと握りしめ、声を振り絞る。
「ファイ。・・・お前は、何の目的でここにいる?」
首を傾げたまま、ファイはじっとリュークの目を見つめた。
測るように。探るように。
それから、ゆっくりと口を開いた。
「まるで、私めに、ここにいて欲しくないと仰りたいかのような口ぶりですね。腕を買われて是非にと請われて参りましたのに」
な・・・?
この男、何を言っている?
口を開こうとしたリュークを、ファイは両手を前に出して制する。
「ああ、何もおっしゃらないで下さい、リュークザインさま。私めに何か不足がございましたらお詫びいたしますから」
「な・・・?」
「私はここが気に入ってるのです。まだ、ここで働かせていただきたいのですよ」
・・・正面からぶつかっても、無駄ということか。
「もうしばらく、ここに置いてください。御者としての腕にも、さらに磨きをかけましょう。馬の世話も、もっと念入りにいたします。それでもまだ、私めが必要ないと判断されるようでしたら・・・」
不自然に言葉が途切れ、ファイは一度息を吐く。
「その時はすぐに故郷に帰りますので」
なんだ?
何か・・・見落としているような気がする。
「・・・そこまで、この家に拘る必要もないと思うが」
その言葉に、ファイが面白そうに片眉を上げた。
「私めは、とても気に入っているのですよ。・・・貴方さまが」
「・・・私が?」
「はい。辛抱強く、決して諦めることなく、それでいて情もお有りで、難しいご気性の他のご家族の方々を簡単に切り捨てることが出来ない、お優しい次期当主さまが」
リュークの反応を試すかのように、じっとその目を見つめながら言葉を継いでいく。
「だからこそ、お力になれたらと思っているのです。・・・恐らくは、最後まで非情な手段を取ることは出来ないであろう貴方さまをお助けしたいと、そう思いましてね」
リュークはごくりと唾を飲んだ。
早く。
早く理解せねば。
この男の言わんとしていることを。
この男の本心を。
焦るリュークザインを他所に、ファイは、ふわりと包み込むような極上の笑顔を浮かべた。
「ご心配なさらずとも、いずれその時が来たら、こちらから伺いますよ。・・・私めが必要かどうか」
さらに優しげに目を細める。
「なに、もう直でございます。・・・そのときには、どうか賢明なご判断をお下しくださいませ」
そう言うと、ファイはくるりと向きを変え、厩舎の方へと戻って行った。
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