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第1章
第6話 大勢の来客
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倉庫部屋から一度厨房に戻ると、料理人のジャックとメイドのマーサに母様が指示を出しているところだった。
「オオトカゲのお肉も使いましょう。マーサ、パンと野菜の追加をボブに仕入れてくるように伝えて。」
「え?食料足りないの?」
厨房の台の上のいくつかのかごには、人参や玉ねぎ、芋類がこんもりと入っていた。パンも布を敷いた籠に入っているのが見える。普段見るよりかなり多い気がするのにどうしたんだろうと思って母様に訊いてみた。
「お客様の人数が多そうなのよ。」
「辺境伯様?」
「ええ。他にも何組かいらっしゃると先触れが来たの。」
「ええ?大変じゃない?」
「心配しなくて大丈夫よ。少し多めに用意しておくだけだから。」
「角兎、大量に狩ってきた方が良いね。」
「無理しなくて大丈夫よ。明日以降はお客様も狩りをされる予定だから。」
「ああ、だから野菜?」
「そう。お肉は足りると思うわ。」
元々は辺境伯様と護衛の騎士達が来られる予定で準備をしていたらしいのだけど、他の貴族が何組か同行してくると先ほど連絡があったのだそうだ。
母様は、ニコニコしていて余裕そうだけど僕だったら大慌てだよ。
「クリス、手を洗ってこい。昼飯食っちゃおう。」
既に手を洗ってきたらしい兄上が、厨房まで僕を呼びにきた。
「あ、うん。」
兄上に促されて僕は洗面所に向かった。
重たいレバーを引くと、ボトボトと木桶に水が注ぎ込まれる。上流の川から引いてきている水だそうでとても冷たい。
木桶で手を洗った後、コップに水を注いでうがいもする。手洗い、うがいは大事だって母様がよく言っている。
手を洗い終わって食堂に行くと、兄上が既に席について待っていた。テーブルの上には既に食事が用意されていた。
ソーセージと芋のソテー。豆のスープとパンだ。スープは熱々で湯気が立っている。
「「いただきます。」」
僕が席につき兄上と同時に言ってから食べ始める。
ソーセージは香草が練り込んであって僕が好きなタイプだ。美味しい。
「ねえ。お客さん増えたって。」
「らしいね。初めての人もいるからきちんと挨拶しなきゃいけないから、早めに戻れって言われた。着替えとか面倒~。」
「え?そうなの?兄上だけ?」
「うーん……。長男として挨拶ってなるとは思うけど、クリスも顔を合わせるかもしれないし、ちゃんとしておいた方が良いかもよ。」
「ええ~。」
辺境伯様には挨拶をしたことがある。兄上の後から名前を名乗っただけだけど。
すごい大柄でゴリゴリマッチョな人で、僕が挨拶をしたら「うむ。」とだけ言ってた。
初めて、いらした時にそうやって挨拶をしたきりで、以降は遠巻きに見かけただけだ。食事も一緒の席ではないし。
兄上だけが最初の晩餐の時に同席していたけど、僕とメイリはマナーだとか出来てないからって、辺境伯様滞在中は別室で食事をとっていた。
僕は食事のマナーを勉強しているしメイリだってお行儀は良いと思うけど同席しない方が気が楽なのは確かだ。
いつもみたいに楽しくおしゃべりしながら食事というわけにはいかないだろうしなぁ。
「あ!兄様たち!もうお食事をされているの?」
食堂の入り口からひょこっと姿を現したメイリが大きな声を上げた。
「メイリも一緒にお食事します!」
「ごめん、メイリ。もう食べ終わっちゃうよ。」
兄上が最後に残っていたパンのかけらを手にしながら残念そうにメイリの方を見て行った。
「ああ~。」
メイリが悲しそうに口の端を下げる。可哀想になって、「夕食はみんなで一緒に」と言いかけたけど、お客さんが来るから兄上はお客さんと同席をすることになるかもしれないことを
思い出した。
「メイリ、ごめんね。にはこれから角兎を狩りに行くから早くお昼を食べてたんだ。角兎の魔石を持って帰ってくるよ。」
「緑の魔石ね!」
角兎の魔石の事を話したらメイリは目をぱっと輝かせた。魔獣には心臓近くに魔石があるのだけど、角兎の魔石は小さいけど色鮮やかな緑色をしていて綺麗なのだ。
魔道具には使えないくらいの弱い魔力量だし、時間が経って魔力が抜けると色も褪せるのだけど、手軽なアクセサリーに加工されることが多い。
メイリは風属性が強いみたいだから緑の魔石は合っているけど、魔法は勉強中で日常で使うことも少ないから魔力水を飲むほどじゃない。
瓶に入れて眺めて楽しんでいる。属性に拘らず綺麗な色なら眺めて楽しいらしい。今度、ペンダントか何か作ってあげたいなぁ。
「オオトカゲのお肉も使いましょう。マーサ、パンと野菜の追加をボブに仕入れてくるように伝えて。」
「え?食料足りないの?」
厨房の台の上のいくつかのかごには、人参や玉ねぎ、芋類がこんもりと入っていた。パンも布を敷いた籠に入っているのが見える。普段見るよりかなり多い気がするのにどうしたんだろうと思って母様に訊いてみた。
「お客様の人数が多そうなのよ。」
「辺境伯様?」
「ええ。他にも何組かいらっしゃると先触れが来たの。」
「ええ?大変じゃない?」
「心配しなくて大丈夫よ。少し多めに用意しておくだけだから。」
「角兎、大量に狩ってきた方が良いね。」
「無理しなくて大丈夫よ。明日以降はお客様も狩りをされる予定だから。」
「ああ、だから野菜?」
「そう。お肉は足りると思うわ。」
元々は辺境伯様と護衛の騎士達が来られる予定で準備をしていたらしいのだけど、他の貴族が何組か同行してくると先ほど連絡があったのだそうだ。
母様は、ニコニコしていて余裕そうだけど僕だったら大慌てだよ。
「クリス、手を洗ってこい。昼飯食っちゃおう。」
既に手を洗ってきたらしい兄上が、厨房まで僕を呼びにきた。
「あ、うん。」
兄上に促されて僕は洗面所に向かった。
重たいレバーを引くと、ボトボトと木桶に水が注ぎ込まれる。上流の川から引いてきている水だそうでとても冷たい。
木桶で手を洗った後、コップに水を注いでうがいもする。手洗い、うがいは大事だって母様がよく言っている。
手を洗い終わって食堂に行くと、兄上が既に席について待っていた。テーブルの上には既に食事が用意されていた。
ソーセージと芋のソテー。豆のスープとパンだ。スープは熱々で湯気が立っている。
「「いただきます。」」
僕が席につき兄上と同時に言ってから食べ始める。
ソーセージは香草が練り込んであって僕が好きなタイプだ。美味しい。
「ねえ。お客さん増えたって。」
「らしいね。初めての人もいるからきちんと挨拶しなきゃいけないから、早めに戻れって言われた。着替えとか面倒~。」
「え?そうなの?兄上だけ?」
「うーん……。長男として挨拶ってなるとは思うけど、クリスも顔を合わせるかもしれないし、ちゃんとしておいた方が良いかもよ。」
「ええ~。」
辺境伯様には挨拶をしたことがある。兄上の後から名前を名乗っただけだけど。
すごい大柄でゴリゴリマッチョな人で、僕が挨拶をしたら「うむ。」とだけ言ってた。
初めて、いらした時にそうやって挨拶をしたきりで、以降は遠巻きに見かけただけだ。食事も一緒の席ではないし。
兄上だけが最初の晩餐の時に同席していたけど、僕とメイリはマナーだとか出来てないからって、辺境伯様滞在中は別室で食事をとっていた。
僕は食事のマナーを勉強しているしメイリだってお行儀は良いと思うけど同席しない方が気が楽なのは確かだ。
いつもみたいに楽しくおしゃべりしながら食事というわけにはいかないだろうしなぁ。
「あ!兄様たち!もうお食事をされているの?」
食堂の入り口からひょこっと姿を現したメイリが大きな声を上げた。
「メイリも一緒にお食事します!」
「ごめん、メイリ。もう食べ終わっちゃうよ。」
兄上が最後に残っていたパンのかけらを手にしながら残念そうにメイリの方を見て行った。
「ああ~。」
メイリが悲しそうに口の端を下げる。可哀想になって、「夕食はみんなで一緒に」と言いかけたけど、お客さんが来るから兄上はお客さんと同席をすることになるかもしれないことを
思い出した。
「メイリ、ごめんね。にはこれから角兎を狩りに行くから早くお昼を食べてたんだ。角兎の魔石を持って帰ってくるよ。」
「緑の魔石ね!」
角兎の魔石の事を話したらメイリは目をぱっと輝かせた。魔獣には心臓近くに魔石があるのだけど、角兎の魔石は小さいけど色鮮やかな緑色をしていて綺麗なのだ。
魔道具には使えないくらいの弱い魔力量だし、時間が経って魔力が抜けると色も褪せるのだけど、手軽なアクセサリーに加工されることが多い。
メイリは風属性が強いみたいだから緑の魔石は合っているけど、魔法は勉強中で日常で使うことも少ないから魔力水を飲むほどじゃない。
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