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第1章
第46話 無詠唱訓練
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リネリア嬢が的前に向かって歩いて行くので、僕もついていく。兄上も移動してきた。
それとリネリア嬢の護衛の騎士二人もついてきた。
この騎士二人は僕がリネリア嬢と話をしているときも背後でガン見していたんだ。
脳裏の絵のことを詳しく打ち明けられなかったのは、この騎士達が聞いていたからでもある。「害意」ではないけど、かなり警戒されているみたいで、ちょっと緊張した。
「魔法制御に集中してみれば良いかしら。」
「そうですね。試しに詠唱なしでやってみては。」
リネリア嬢が自分の掌を少し見つめてから前に突き出した。ポーズは詠唱の時と同じなんだ。
「み、水っ。じゃなくて……。」
「落ち着いて。」
詠唱しそうになって口を閉ざして目を閉じた。リネリア嬢の掌の周囲に魔力が集まって行くのがわかる。
ボトボト。
水がリネリア嬢の掌から出て、足元に落ちた。
「ああっ。」
リネリア嬢が声を上げて後ろに下がった。
「……やっぱり上手くいかないわ。さっきよりダメだった。」
「でも詠唱なしで水が出ていましたよ。」
「……あ!……もしかして無詠唱?」
「はい。最初にチラッと『水よ』って言った以外は。」
「ああ……!もう一度、もう一度やってみるわ。今度こそ無詠唱よ!」
リネリア嬢がぎゅっと拳を握りしめた。
兄上がリネリア嬢に手拭き布を差し出した。
「どうぞ。あちらの柵がある位置でやった方が水が跳ねないかもしれません。」
兄上が的前の腰より高いところまで木で覆っている柵がある部分を指し示して言った。炎とかの魔法が跳ね返ってくるのを避けるために設置している柵だ。
リネリア嬢の場合は、魔法自体の跳ね返りというより、地面に落ちた水が跳ね返っているのだけど。確かにドレスが汚れないようにするには有用だと思う。
「あ、ありがとう。そうね。水が跳ね返るのが気になっちゃうわ。」
リネリア嬢が木の柵の前に移動した。兄上が柵の向こう側に木桶を置く。
水が全く飛んでいかずに足元に落ちていった時の備えだ。ちょっと失礼になっちゃうかもしれないと思ったけど、リネリア嬢は気にしていない様子だ。
「水が溜まって行くならどのくらい水が出せたのかわかるわね。」
そう言って、柵の前で手を突き出して、目を閉じた。
ボトボト
ボトボトボト
掌から水が断続的に出て木桶の中に落ちていく。
「最初より水の量が増えてきたように見えます。」
「そうかしら。……ふぅ……。」
数発魔法を放って、リネリア嬢は深く息を吐いた。汗を拭っている。凄く集中していたんだと思う。
しばらく息を整えてからこちらに顔を向けて口角を上げた。そしてチラリと剣の訓練をしている方に目を向けてから言った。
「……あちらもそろそろ終わるみたいだし、あと一回にするわ。少しクラクラしてきたし。」
「クラクラするなら魔力切れが近いのかもしれません。無理しない方が良いですよ。」
「そう……。」
兄上に、最後の魔法を止められて、リネリア嬢はちょっと残念そうだ。でも顔色もちょっと青ざめてきた気がする。
それとリネリア嬢の護衛の騎士二人もついてきた。
この騎士二人は僕がリネリア嬢と話をしているときも背後でガン見していたんだ。
脳裏の絵のことを詳しく打ち明けられなかったのは、この騎士達が聞いていたからでもある。「害意」ではないけど、かなり警戒されているみたいで、ちょっと緊張した。
「魔法制御に集中してみれば良いかしら。」
「そうですね。試しに詠唱なしでやってみては。」
リネリア嬢が自分の掌を少し見つめてから前に突き出した。ポーズは詠唱の時と同じなんだ。
「み、水っ。じゃなくて……。」
「落ち着いて。」
詠唱しそうになって口を閉ざして目を閉じた。リネリア嬢の掌の周囲に魔力が集まって行くのがわかる。
ボトボト。
水がリネリア嬢の掌から出て、足元に落ちた。
「ああっ。」
リネリア嬢が声を上げて後ろに下がった。
「……やっぱり上手くいかないわ。さっきよりダメだった。」
「でも詠唱なしで水が出ていましたよ。」
「……あ!……もしかして無詠唱?」
「はい。最初にチラッと『水よ』って言った以外は。」
「ああ……!もう一度、もう一度やってみるわ。今度こそ無詠唱よ!」
リネリア嬢がぎゅっと拳を握りしめた。
兄上がリネリア嬢に手拭き布を差し出した。
「どうぞ。あちらの柵がある位置でやった方が水が跳ねないかもしれません。」
兄上が的前の腰より高いところまで木で覆っている柵がある部分を指し示して言った。炎とかの魔法が跳ね返ってくるのを避けるために設置している柵だ。
リネリア嬢の場合は、魔法自体の跳ね返りというより、地面に落ちた水が跳ね返っているのだけど。確かにドレスが汚れないようにするには有用だと思う。
「あ、ありがとう。そうね。水が跳ね返るのが気になっちゃうわ。」
リネリア嬢が木の柵の前に移動した。兄上が柵の向こう側に木桶を置く。
水が全く飛んでいかずに足元に落ちていった時の備えだ。ちょっと失礼になっちゃうかもしれないと思ったけど、リネリア嬢は気にしていない様子だ。
「水が溜まって行くならどのくらい水が出せたのかわかるわね。」
そう言って、柵の前で手を突き出して、目を閉じた。
ボトボト
ボトボトボト
掌から水が断続的に出て木桶の中に落ちていく。
「最初より水の量が増えてきたように見えます。」
「そうかしら。……ふぅ……。」
数発魔法を放って、リネリア嬢は深く息を吐いた。汗を拭っている。凄く集中していたんだと思う。
しばらく息を整えてからこちらに顔を向けて口角を上げた。そしてチラリと剣の訓練をしている方に目を向けてから言った。
「……あちらもそろそろ終わるみたいだし、あと一回にするわ。少しクラクラしてきたし。」
「クラクラするなら魔力切れが近いのかもしれません。無理しない方が良いですよ。」
「そう……。」
兄上に、最後の魔法を止められて、リネリア嬢はちょっと残念そうだ。でも顔色もちょっと青ざめてきた気がする。
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