転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第47話 魔石水

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僕は、訓練場の入り口近くの水瓶を置いてある一角に駆けて行った。空のピッチャーに水魔石を入れる。
手持ちの薬草ケースから乾燥させた薬草が入った小さい瓶を取り出し蓋をあけて念の為匂いを嗅ぐ。予想通りのすっきりした香りだ。

あらかじめ小さい布袋に小分けにして瓶に入れていた薬草をピッチャーに布袋ごと入れた。
陶器の大きいボトルの蓋のコルクを引き抜いて、重たいボトルを慎重に両手でもって、ピッチャーにボトルの中の水を注ぎ入れる。

ボトルの中の水は「黎明の泉」から汲んできた水だ。
魔石水は、「黎明の泉」の水じゃないと上手く作れない。僕が上手く作れないというだけで、薬師のおばあちゃんなら上手く作れるのかもしれないけど。
単純に材料を入れて水を注いだだけだ。

それを少し念入りに棒でかき混ぜたら魔石水の出来上がり。片手にピッチャー。片手に重ねたコップを持って、リネリア嬢の居るところに戻る。

「魔石水です。飲んでください。」
「君……。」

僕がピッチャーを見せるとリネリア嬢が返事をする前に騎士が一人すっと前に出た。あ!「警戒」の気配!

「……ゲンティアナ家の定番の、魔力補給用の栄養水です!
僕が先に飲みます。毒じゃないですよ。」

僕はそう言うと、 小さい台の上にコップを置いて、コップの一つに魔力水を少し注いで飲み干した。

「俺も飲みます。」

兄上が僕に続いて、魔石水をコップに注いで一気飲みした。そして、コップの一つを騎士に差し出した。

「毒見されますか?」
「あ。ああ……。」

兄上から魔石水が入ったコップを受け取った騎士は、コップの水面を凝視した後、鼻を近づけて匂いを嗅いでから舐めるように一口飲んだ。

やっぱりめちゃくちゃ警戒されてる!

騎士は、魔石水の効果をを確認するようにパチパチと瞬きをした。それからぐびぐびと魔石水を飲み込んだ。

「問題はないようです。それと、なかなか美味しいです。」
「でしょう?」

味を褒められて僕は嬉しくなる。薬草の布袋は僕がブレンドしたハーブを入れているものだ。お茶に入れてもすっきりした香りになるブレンドだよ。

毒見をした騎士が、魔石水をもう一口飲むと。もう一人の騎士とリネリア嬢がそわそわし出した。

「気になるわ。飲んでみたい。」
「どうぞ。」

リネリア嬢ともう一人の騎士にも魔石水の入ったコップを差し出してあげる。

リネリア嬢は騎士と同じように一度匂いを嗅いでから、魔石水を口に含んだ。コクンと飲み込んで口を開く。

「本当。匂いを嗅いだだけだとわからないけど、飲むと爽やかな香りを感じて美味しいわね。」
もう一口、二口と飲んでから、リネリア嬢は自分の状態を確認するように目をキョロキョロと動かした。

「なんとなくジンワリと身体が暖かくなるわ。それと、クラクラしてたのが収まってきた。これって魔力が回復しているの?」
「回復はゆっくりです。魔力ポーションよりゆっくりの回復だけど、体の負担がずっと少ないそうです。」

薬師のおばあちゃんに教わったことを伝える。
僕は魔力ポーションは飲んだことがないから、自分で比較した感想は言えないんだ。

「え、凄い、かも。魔力ポーションより高価なのかしら?」
「いえ、そんなには高くないんじゃないかと思います。薬師のおばあちゃんのところで、大体銀貨1枚くらいでした。瓶の大きさによりますけど。」
「え?それってかなり安いんじゃない?どうなってるの? 魔石水って、聞いたことがないけど、薬師のところで売られているものなの?」
「この町の薬師の店にはありますが、他の土地の薬師の店で売られているかは知らないです。」
「ええー?ちょっと……。後何回か魔法が撃てそうよ。」

リネリア嬢が自分の掌に魔力を集めながら言う。その時、剣術コーナーの方から、声がかかった。
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