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第1章
第52話 泉の向こうの魔獣
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「一本より二本、二本より三本だよ。クリスの獲物だけど手伝ってって頼まれたからな。」
兄上はそういうとボブから受け取ったフックみたいな鎌の先みたいなものにロープを縛り付けて、泉の向こう岸に向かって投げた。
フックが蛇の開いた口に突き刺さる。
「よし!」
兄上がロープを引っ張ると、ズルズルと蛇の魔獣の頭が引き寄せられた。
「それではこちらも引っ掛けやしょう。」
ボブが鏃みたいな形のナイフを投げる。こちらも端にロープが繋がっている。ストンと鳥の魔獣のお腹にナイフが突き刺さった。
クイクイとロープを引くと、鳥の魔獣が手前に引き摺られた。
「よし!それじゃあ引くか。」
兄上は周囲を見回して、ロープの端に何かつけたものを上に放り投げた。
ロープが枝の上を通り抜けて落ちていき、ロープの端に括り付けてあった枝がぶらぶらと揺れた。
どうやらなるべく泉の中に獲物を落とさずにこちらに引き寄せる作戦らしい。ボブが投げたナイフの繋がったロープも、僕が放った矢が繋がっているロープも木の高い位置の枝に引っ掛けた。
そして三本のロープを3人で一気に引っ張る。
気合いを入れたのに、なぜかふわっと軽い感覚が起きた。
「おぉ、これも『運搬』か?」
兄上が楽しそうな声を上げた。兄上もふわっとした感覚だったみたいだ。
「運搬」スキル?そうなのか。楽に引き寄せられるなら、わざわざロープを木の枝に引っ掛けなくても良かったかな。でも、それだと魔獣の亡骸が泉に堕ちちゃうか。
「運搬」スキルの発動にちょっとびっくりしながら、引き寄せた獲物の解体を始めた。
蛇の魔獣はよく見ると身体の三文の一爛れていて黒ずんでいる。大丈夫なのかな、これ。
「この蛇、大丈夫?」
「……毒でしょうかねぇ。肉は食べない方が無難でさぁね。」
ボブが身を屈めて蛇の魔獣の黒ずんだ外皮の部分を覗き込んで言った。
「食べない方が良いのか。せっかく獲ったのに。」
「皮の大丈夫そうな方は売れるんじゃないか。あと、魔石と牙と。」
「そうだね。全くの無駄ってことはないか。」
「そもそも、鳥の狩りの『おまけ』だろ。」
「まあ、そうだね。」
鳥の魔獣を狩るつもりだったんだから、蛇の方は肉が取れなくても、ある程度素材が取れるなら儲け物だ。
毒の影響があるかもしれないから、皮の手袋をして水魔法でなるべく血を洗い流しながら、魔石を取り出す。
ゴロリと出てきた魔石はなかなか大きい。少し濃いめの水色で中になにかキラキラしたものが混じっている。
「水色だから水の魔石?でも、何か混じったみたいになってるね。」
「もしかしたら毒耐性がついているのかもしれねぇでさぁ。」
「毒耐性?」
「毒で爛れたみたいになってたのに、生きてやしたからねぇ。」
「毒耐性か……。」
僕は、レオノールさん毒に倒れた光景を思い出した。
「ねえ……。この魔石で治癒玉を作ったら、解毒もできるのかな。」
「うーん……。解毒の魔法陣は違うかもしれないぞ。母上に聞いてみた方が良い。」
「そうだね……。」
兄上の言葉に頷いて魔石を水で洗い流して、カバンのポケットに仕舞い、残りの解体作業を進めた。
「運搬」スキルで、泉の向こう岸の魔獣の引き寄せも何とかなりそうってことで、今日の狩りは遠隔攻撃祭り。
派手派手しい鳥を狙った時に、僕はどうやら矢に風魔法を纏わせて撃っていたみたいだった。魔力は込めた覚えがあったけど、風刃みたいな鋭利さを増す効果みたいなのが出て想定より貫通力が高かったようだ。
貫通力が高いのは悪いことじゃないけど、泉の向こう側だと木に刺さったら困るんだよね。
木に突き刺さって抜けなくなっちゃったら矢を諦めれば良いのかな。そうなると獲物はちゃんと引き寄せられるだろうか。
矢の予備を多めに持って行って今度試してみようかな。
兄上はそういうとボブから受け取ったフックみたいな鎌の先みたいなものにロープを縛り付けて、泉の向こう岸に向かって投げた。
フックが蛇の開いた口に突き刺さる。
「よし!」
兄上がロープを引っ張ると、ズルズルと蛇の魔獣の頭が引き寄せられた。
「それではこちらも引っ掛けやしょう。」
ボブが鏃みたいな形のナイフを投げる。こちらも端にロープが繋がっている。ストンと鳥の魔獣のお腹にナイフが突き刺さった。
クイクイとロープを引くと、鳥の魔獣が手前に引き摺られた。
「よし!それじゃあ引くか。」
兄上は周囲を見回して、ロープの端に何かつけたものを上に放り投げた。
ロープが枝の上を通り抜けて落ちていき、ロープの端に括り付けてあった枝がぶらぶらと揺れた。
どうやらなるべく泉の中に獲物を落とさずにこちらに引き寄せる作戦らしい。ボブが投げたナイフの繋がったロープも、僕が放った矢が繋がっているロープも木の高い位置の枝に引っ掛けた。
そして三本のロープを3人で一気に引っ張る。
気合いを入れたのに、なぜかふわっと軽い感覚が起きた。
「おぉ、これも『運搬』か?」
兄上が楽しそうな声を上げた。兄上もふわっとした感覚だったみたいだ。
「運搬」スキル?そうなのか。楽に引き寄せられるなら、わざわざロープを木の枝に引っ掛けなくても良かったかな。でも、それだと魔獣の亡骸が泉に堕ちちゃうか。
「運搬」スキルの発動にちょっとびっくりしながら、引き寄せた獲物の解体を始めた。
蛇の魔獣はよく見ると身体の三文の一爛れていて黒ずんでいる。大丈夫なのかな、これ。
「この蛇、大丈夫?」
「……毒でしょうかねぇ。肉は食べない方が無難でさぁね。」
ボブが身を屈めて蛇の魔獣の黒ずんだ外皮の部分を覗き込んで言った。
「食べない方が良いのか。せっかく獲ったのに。」
「皮の大丈夫そうな方は売れるんじゃないか。あと、魔石と牙と。」
「そうだね。全くの無駄ってことはないか。」
「そもそも、鳥の狩りの『おまけ』だろ。」
「まあ、そうだね。」
鳥の魔獣を狩るつもりだったんだから、蛇の方は肉が取れなくても、ある程度素材が取れるなら儲け物だ。
毒の影響があるかもしれないから、皮の手袋をして水魔法でなるべく血を洗い流しながら、魔石を取り出す。
ゴロリと出てきた魔石はなかなか大きい。少し濃いめの水色で中になにかキラキラしたものが混じっている。
「水色だから水の魔石?でも、何か混じったみたいになってるね。」
「もしかしたら毒耐性がついているのかもしれねぇでさぁ。」
「毒耐性?」
「毒で爛れたみたいになってたのに、生きてやしたからねぇ。」
「毒耐性か……。」
僕は、レオノールさん毒に倒れた光景を思い出した。
「ねえ……。この魔石で治癒玉を作ったら、解毒もできるのかな。」
「うーん……。解毒の魔法陣は違うかもしれないぞ。母上に聞いてみた方が良い。」
「そうだね……。」
兄上の言葉に頷いて魔石を水で洗い流して、カバンのポケットに仕舞い、残りの解体作業を進めた。
「運搬」スキルで、泉の向こう岸の魔獣の引き寄せも何とかなりそうってことで、今日の狩りは遠隔攻撃祭り。
派手派手しい鳥を狙った時に、僕はどうやら矢に風魔法を纏わせて撃っていたみたいだった。魔力は込めた覚えがあったけど、風刃みたいな鋭利さを増す効果みたいなのが出て想定より貫通力が高かったようだ。
貫通力が高いのは悪いことじゃないけど、泉の向こう側だと木に刺さったら困るんだよね。
木に突き刺さって抜けなくなっちゃったら矢を諦めれば良いのかな。そうなると獲物はちゃんと引き寄せられるだろうか。
矢の予備を多めに持って行って今度試してみようかな。
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