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第1章
第68話 光水
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「何か毒鑑定以外のことは否定されたみたいな……。」
ちょっと凹みつつある僕のことは気が付く様子もなく、メイリが熱弁を振るう。
「クリス兄様は耐えられる?一人王都に連れて行かれて、知らない人達の中で生活するの。それで王族の人達とかに連れまわされて毒を見て回るのよ。
一緒にお勉強するかはわからないけど、お勉強の内容が難しくてわからなくても隣に座っていなきゃいけないかもしれないのよ。」
「……無理。」
王都に行ったことないのはずに妙にリアルに語るメイリ。毒見の為に知らない人達のところに連れ回されてる僕……。
少しだけ想像したけど、考えるまでもなく無理だと思った。怖い怖い。この地を離れるのは、何より家族と離れるのは嫌だ。
それに、自分の意思じゃなくて誰かの都合で連れ回されたりするのも嫌だ。
「ね!だから、内緒にした方が良いと思うの!」
凄い勢いで力説したメイリは、少し息を切らして、目の前にあった小さいグラスを持ってゴクンと中の液体を飲み込んだ。
「あ!それ!」
「メイリ!」
僕はギョッとした。母様も声を上げた。でももうグラスは空になっていた。
メイリが飲んだのは、小さいグラスに入れた「光水」だった。毒鑑定スキルの件があって、まだ誰も飲まないまま放置していたんだった。
「メイリ!母様が先って言ったでしょう?」
「もう飲んじゃったもの。甘ーい!」
メイリは悪びれずにそう言って、ペロリと唇を舐めた。母様はため息をついて、光水の入ったグラスを手にしてゴクリと飲んだ。
「……確かに甘いわね。」
母様は「仕方ない」って顔をして僕と兄上を見た。僕と兄上も光水のグラスに手を伸ばした。
甘くてどことなくフルーツのような香りがした。
ーーー名称:光水
ーーー効果:毒耐性・一定期間解毒(呪いの毒を含む)
飲んだら鑑定結果が変わった? 毒状態じゃなかったから、解毒効果がしばらく持続するってことか。結果が変わったわけではなかったみたいだ。
母様達に、頭に浮かんだ光水の効果について説明をすると、母様は少し難しそうな顔をして考えていた。
「……薄めて継続的に飲むのはどうかしら……。」
「え?僕達って毒で狙われるとか、何かありそうなの?」
「泉の向こうに『呪いの毒』を持った魔獣がいる可能性が高いということは、いずれこちらに流れてくるかもしれないわ。」
「ああ。誰か持ち帰るかもしれないのか。」
強い冒険者なら、泉の向こう側にいる強い魔獣を倒しに行ったりする。父上達だってそうだ。黎明の泉の向こう側に行くなら、「呪いの毒」を持った魔獣に会う可能性があるんだよね。
僕は父上のことを思い浮かべてギョッとした。そうだったよ、毒を持った魔獣に会う可能性が高い人を気にしないと!
「大変!父上に!飲んでもらわないと!あっ、でも町の人達も……!」
あわあわしていたら、兄上が僕の頭にポフンと手を置いた。
「落ち着け。今はまだ何も起きていないんだから。」
「でも……。」
兄上に落ち着けと言われても、僕はまだ心配だ。兄上は心配じゃないんだろうか。兄上は普段と変わらない表情で、ゆっくりした口調で言った。
「まず、光水のことも薬師のばあちゃんに確認してもらってからだろう。
それで効果がありそうなら、もっと泉の水を汲みに行こう。」
「うん……。」
「あ、薬師のばあちゃんにも一応、光水はあの白い粒の果物で作ったってことだけ言っておくか。ばあちゃんは泉のことは知ってるけどさ。」
白い粒の果実。僕がドームの果実って呼んでいるアレ。そうだった。光水を作るにはドームの果実が必要なんだった!
また手に入るかどうかわからないのに!
ちょっと凹みつつある僕のことは気が付く様子もなく、メイリが熱弁を振るう。
「クリス兄様は耐えられる?一人王都に連れて行かれて、知らない人達の中で生活するの。それで王族の人達とかに連れまわされて毒を見て回るのよ。
一緒にお勉強するかはわからないけど、お勉強の内容が難しくてわからなくても隣に座っていなきゃいけないかもしれないのよ。」
「……無理。」
王都に行ったことないのはずに妙にリアルに語るメイリ。毒見の為に知らない人達のところに連れ回されてる僕……。
少しだけ想像したけど、考えるまでもなく無理だと思った。怖い怖い。この地を離れるのは、何より家族と離れるのは嫌だ。
それに、自分の意思じゃなくて誰かの都合で連れ回されたりするのも嫌だ。
「ね!だから、内緒にした方が良いと思うの!」
凄い勢いで力説したメイリは、少し息を切らして、目の前にあった小さいグラスを持ってゴクンと中の液体を飲み込んだ。
「あ!それ!」
「メイリ!」
僕はギョッとした。母様も声を上げた。でももうグラスは空になっていた。
メイリが飲んだのは、小さいグラスに入れた「光水」だった。毒鑑定スキルの件があって、まだ誰も飲まないまま放置していたんだった。
「メイリ!母様が先って言ったでしょう?」
「もう飲んじゃったもの。甘ーい!」
メイリは悪びれずにそう言って、ペロリと唇を舐めた。母様はため息をついて、光水の入ったグラスを手にしてゴクリと飲んだ。
「……確かに甘いわね。」
母様は「仕方ない」って顔をして僕と兄上を見た。僕と兄上も光水のグラスに手を伸ばした。
甘くてどことなくフルーツのような香りがした。
ーーー名称:光水
ーーー効果:毒耐性・一定期間解毒(呪いの毒を含む)
飲んだら鑑定結果が変わった? 毒状態じゃなかったから、解毒効果がしばらく持続するってことか。結果が変わったわけではなかったみたいだ。
母様達に、頭に浮かんだ光水の効果について説明をすると、母様は少し難しそうな顔をして考えていた。
「……薄めて継続的に飲むのはどうかしら……。」
「え?僕達って毒で狙われるとか、何かありそうなの?」
「泉の向こうに『呪いの毒』を持った魔獣がいる可能性が高いということは、いずれこちらに流れてくるかもしれないわ。」
「ああ。誰か持ち帰るかもしれないのか。」
強い冒険者なら、泉の向こう側にいる強い魔獣を倒しに行ったりする。父上達だってそうだ。黎明の泉の向こう側に行くなら、「呪いの毒」を持った魔獣に会う可能性があるんだよね。
僕は父上のことを思い浮かべてギョッとした。そうだったよ、毒を持った魔獣に会う可能性が高い人を気にしないと!
「大変!父上に!飲んでもらわないと!あっ、でも町の人達も……!」
あわあわしていたら、兄上が僕の頭にポフンと手を置いた。
「落ち着け。今はまだ何も起きていないんだから。」
「でも……。」
兄上に落ち着けと言われても、僕はまだ心配だ。兄上は心配じゃないんだろうか。兄上は普段と変わらない表情で、ゆっくりした口調で言った。
「まず、光水のことも薬師のばあちゃんに確認してもらってからだろう。
それで効果がありそうなら、もっと泉の水を汲みに行こう。」
「うん……。」
「あ、薬師のばあちゃんにも一応、光水はあの白い粒の果物で作ったってことだけ言っておくか。ばあちゃんは泉のことは知ってるけどさ。」
白い粒の果実。僕がドームの果実って呼んでいるアレ。そうだった。光水を作るにはドームの果実が必要なんだった!
また手に入るかどうかわからないのに!
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