転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
78 / 334
第1章

第78話 肖像画

しおりを挟む
ルドおじさんは棚の一角に目を向けると、棚に手を伸ばして平たいケースを取り出した。テーブルの上にケースを置いて蓋をあける。ケースの中には薄そうな紙が入っていて、何枚か紙を僕に差し出した。

手渡しながらニヤリと笑う。

「この紙も面白いんだ。魔力で変色するんだよ。指で魔力を込めてなぞると絵を描けるよ。」
「へえー!」

僕が紙を受け取って凝視している間にルドおじさんは薬師のおばあちゃんの居る部屋に絵を見せに行った。

早速、ちょっと紙の端っこの方を魔力を込めた指で撫でてみた。
指が触れたところが黒ずむ。
紙を持っている方の手には魔力を込めていないんだけど、そちらは紙に触れている部分の色は変わらない。

「おおー。面白い。何かに使えるかなぁ。」

ちょっと面白いけれどどう使うのが効果的だろうか。

魔力で反応する紙の使い道を考えているうちにルドおじさんが作業部屋に戻ってきた。なんだか出て行った時の様子と違う。少し慌てた感じだ。

「クリスくーん!」

戻ってくるなり困ったような顔をして僕の方に駆け寄ってくるルドおじさん。

「ごめん!母さんの絵も描いてもらえないかな?母さん、自分は年寄りだから描いてもらえないんだねって…。」

どうやら、薬師のおばあちゃんがちょっと拗ねてしまったらしい。おばあちゃんの絵は描いたことがなかったなぁ。
それは、急いで描かないとと思って、早速筆を取る。

筆を手にした一瞬、脳裏に銀髪の令嬢の姿が浮かんできた。ドレスを着て少し哀しげに佇む姿だ。
台詞は特に何も聞こえなかったし、どういう場面なのかよくわからない。
何となく、薬師のおばあちゃんの昔の姿かなと思った。

その姿を描こうかと思ったけど、哀しそうに見えたのでやめにした。薬師のおばあちゃんかどうか確かめられないし。
どうせ描くなら薬師のおばあちゃんがなるべく楽しそうにしている姿を描きたいよね。

ペンをくるくる回して考える。薬を調合している時の様子を描こうと思いついた。薬師のおばあちゃんは、薬を調合している時だけ笑顔なんだ。
ニコニコと薬草を潰している薬師のおばあちゃんの絵を描いていたら横から覗き込んでいた兄上が「ぷ。」と吹き出した。

「ニッコニコな絵だな。」
「うん。」
「ははは。」

ルドおじさんも笑ってた。そして、出来上がった絵を薬師のおばあちゃんの所に持って行ったら、薬師のおばあちゃんは何故か顔を真っ赤にしてた。

「こんな、笑った顔するもんかね。」
「してるよぉ。」
「ふん!」

薬師のおばあちゃんはそっぽを向いたけど、喜んでくれたような気がする。

「額に入れて飾っておくね!」

ルドおじさんは僕が描いた絵のことをかなり気に入ってくれたみたいで、作業場に飾っておいてくれるらしい。

「そうだ、ガラス!窓ガラスをもっと歪みなく透明に作ってそれで絵を覆ったら……!」

ルドおじさんは窓の方にチラリと目を向けた。
窓ガラスは確かに向こう側が少し透けて見える。ただ分厚くて濁った緑色をしているのであまりはっきりとは見えない。
それを絵に覆い被せたら、絵自体は埃とかから保護できるけど、絵の見た目はだいぶ違って見えると思う。
それで絵を保護する為のガラスを作ろうと思ったらしい。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

処理中です...