転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
125 / 334
第1章

第125話 盗み聞き?

しおりを挟む
屋敷に帰り着いたら、なんとなく騒がしい気配がするのを感じた。
正門から敷地内に意識を巡らせると本館の奥の辺りから感じるようだ。

「あれ?」
「うん?どうした?」
「何か騒がしい感じがして」
「川辺にいた連中が捕まったんじゃないか?」

騒がしい気配に注意を向けていたら、兄上が見に行こうと言ってくれた。
一旦、馬を厩舎に戻して、本館の玄関に駆け込んだ。

出迎える人はいなかった。食堂や厨房に気配はあるからマーサやジャックは夕食の支度をしているんだろう。
後は本館の奥の方に人が集まっているようだ。

早足で廊下を進んで行ったけど怒鳴り声のような声が聞こえてきて思わず速度を緩めた。
響き渡るような音量じゃないけど、怒鳴っているのがわかる。
兄上が僕を制して廊下の角で立ち止まった。壁に沿って立ってその先の様子を伺う。

何か秘密っぽくてドキドキする!

「……訓練で来てるんだ!火魔法を使って何が悪い!」

めちゃめちゃ怒っているような興奮しているような気配だ。聞こえてくる内容からすると川の近くで僕達に絡んできた人達はやっぱり沼地を荒らした犯人らしい。でも訓練って言い張っているのかな。
訓練のつもりで沼地を燃やしたってこと?

「俺らに文句言うなら、あの冒険者の奴らにも文句を言えよ!」

尋問?している人の声はよく聞こえなくて怒鳴っている人の声だけが聞こえてくる。
冒険者の奴らって何のことだろう。
兄上を見上げたら、「シーッ」と口の前に指を立てていた。

「俺らはあいつらと火魔法の撃ち比べをしてただけだ!俺らが咎められるんならあいつらも同罪だろうが!」

沼地を荒らした人が他にもいるってことなのかな。冒険者って……ゲンティアナの冒険者だろうか?
そんなことする人いるのかな。ゲンティアナにいる冒険者ってチャラチャラしたりイキリ立ったような感じの人は少なくて、渋いおじさんが多いイメージなんだけどな。とは言っても僕は冒険者ギルドには直接行かないから、冒険者ギルドの近くとかで見かけたり、薬師のおばあちゃんのところに薬を買いに来たりする冒険者風の格好をした人達を見た印象なだけだ。

「盗み聞きかしら?」

冒険者のことが気になってしまってもっと詳しく聞こうと耳を澄ませていたら突然声をかけられてギョッとしてピクンと少し飛び上がってしまった。
振り向くと、レオノールさんが立っていた。

涼しげな表情で僕達を見ている。

盗み聞きしていると思われちゃった。どうやって答えようかと思ってちょっと慌てていたら、兄上が僕を庇うように立ってレオノールさんに向き直った。

「自分の家ですので別に盗み聞きではありません。取り込み中のようなのでタイミングを見計らっていただけです」

緊張した声で兄上が言い切る。

「あら、そうだったの」

レオノールさんが目元だけで微笑んだ。貴族っぽい微笑みだなぁ。まつ毛長い。

兄上は盗み聞きじゃないって主張したけど、状況的には盗み聞きな気がしないでもない。でも自分の家の中だし、聞いちゃいけないってことはないと思う。家に取って重要なことだと思うし、父上や母様から聞いちゃダメとはまだ言われていないからね。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...