転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
131 / 334
第1章

第131話 ダンジョンとの違い

しおりを挟む
どの部位をどういう風に切って使うかはジャックに任せようってことで、とりあえず皮を剥いで内臓を取り除くところまでをやっておく。

「……殿下達の訓練はいきなり角兔狩りに進んじゃったね。明日はどうするんだろう」
「どうだろうな。角兎の状態を見た感じじゃ、単独で狩れるようになったって感じじゃないから、もっと慣れるまで角兎で訓練を続けるんじゃないか。
それか、色々な魔獣狩りを体験したいってことなら他の魔獣狩りにするんだろう」
兄上は流れ作業のようにナイフで角兎の角を切り落としていった。切り落とした角は兄上の「収納」の中に収められていく。

「角兎に進んじゃったら、角兎より小さくて弱そうな魔獣は狩りたくないってことになりそうじゃない?」
「まあ、そこは訓練を進めている人達が考えるだろう」

作業をしながら淡々と兄上は言っているけど、「程よい強さの魔獣の狩場を教えろ」とか注文が来そうで僕はちょっと心配だ。
角兎で訓練を続けた場合は、毎日泥々の角兎が持ち替えられるんだろうか。いや、上手に狩れるようになったら泥々じゃなくなるのかな。

「肉が美味しい魔獣の狩場」とか希望されたらどうしよう。オオトカゲの肉は美味しいけど、沼地が荒らされたから狩りができるような状態じゃないんだよね。
沼地が普通の状態でも、オオトカゲ狩りは難しそうか。土に埋めるのも沼地じゃうまくいかなさそうだし。

どの角兎にも魔石が残ったままになっていた。角兎の魔石を回収しながら、背びれイタチの狩りの時のことを思い出していた。

「……王宮騎士の人って、狩りの後始末とか大雑把なのかな。背びれイタチはそこらに放ってたし、角兔は血抜きもしてなかったし……」
「王都のあたりだったら、ダンジョンでの魔獣討伐に慣れすぎているのかもしれないでさぁ」

ボソリと言ったらボブに聞こえていたらしい。

「ダンジョン?ダンジョンだと狩りの仕方が何か違うの?」

王都近くにダンジョンがあると言うのは聞いたことがあった。ダンジョンは洞窟みたいになっていてその中に魔獣がうじゃうじゃいるというイメージしかなかった。

「ダンジョンでは、倒した魔獣を放置しているとダンジョンに吸収されていくんだそうでさぁ。倒すと魔石だけになるとか、肉や素材に変わるって話も聞いたことがあるんで、ダンジョンによっても違うのかもしれないですがね」

「魔石だけになるの?ちょっと面白そうだね!」

ただの魔獣が多い洞窟ってわけじゃない不思議空間みたいで気になる。
魔石や肉だけとかになるなら、解体をしなくても良いし不要な部位の後始末をする必要もないのか。

騎士達が倒した背びれイタチを放り投げていたのも、ダンジョンに居る時みたいな感覚だったのかな。
ダンジョンの時みたいに吸収されるとは考えてなかったかもしれないけど、習慣的にやってたのかもね。

「ボブはダンジョンに行ったことあるの?」
「ありやせん。この国にはダンジョンは王都近くとあと北の方に一箇所位しかないんでさぁ。隣の国には沢山あるらしいんですがねぇ。
まあ、この辺はダンジョンに行かなくても魔獣が出るんで、特に行く必要はなかったんでさぁ」
「隣って、ディステル王国のこと?森の先だね」
「だいぶ遠いですがね」

ゲンティアナ男爵領はペオニア王国の端っこにあって、広大な森を隔てた向こう側はディステル王国という国があるそうだ。
強い魔獣が多い森に隔てられているからゲンティアナ男爵領では隣国との交流はないみたいだ。隣の国から来たって人に会ったことないし。
何年か前にディステル王国との戦争があったって聞くし、国同士はあまり仲良くないのかな。
いつかダンジョンに行ってみたいけど、森を超えてディステル王国に行くよりも、王都近くのダンジョンに行く方が手軽なのかもしれない。

三人で話しながら解体をしていると結構作業が早い。
日が暮れないうちに解体を終えることができた。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...