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第1章
第130話 霧吹き
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日が傾きかけているけれど、まだ空は明るい。屋外でも十分解体作業はできると思う。
屋敷の裏手の林の手前で地面の上に敷布を広げてその上に「収納」から角兎を出して積み上げた。
「うわぁ……。改めて見ると本当にボロボロだねぇ」
「……ちょっと角兔に同情したくなるな」
泥と血で汚れまくっている上に毛皮が切り刻まれたような状態になっている。
多分、背びれイタチの狩りの時みたいに、土の中に埋めて動けなくしてから魔法や弓で撃つ訓練をしようとしていたのだろうけど
角兎はキック力が強いから土に埋めても飛び出してしまって何度もやり直したんじゃないだろうか。
ある程度痛めつけて、弱らせていたのかもしれない。
「あれ、魔石も残ったままだね」
頭から胸のところまで刃物で切られたような跡の中にチラリと魔石が見えた。
「角もそのままだな。角の方は折れたり罅がが入ったりしているのばっかりだけど、魔石は返しておくか」
「返すって、持ってきた騎士さんの名前聞かなかったよ」
「殿下達に討伐の記念って渡せば良いんじゃないかな」
「それは良いかも」
ダラダラと敷布に血が滲んでいっているけれど、血抜きもしていないのかな。魔石もそのままだし仕留めてそのまんまのような気がする
「血抜き、していないかもしれないね」
「先に全部、木に吊るすか」
解体は順番にやっていくつもりだけど、血抜きだけはまとめて一気にやってしまう。
角兎の後ろ足を二本まとめてロープで縛って林の手前に生えている木の枝に吊るしていく。
足が切られてたり、変な風に骨が折れているのもあるけど、何とか全部逆さ吊りにした。
血抜きをしている間に、水魔法で毛皮の泥や血を落としていく。
切り刻まれて肉が見えている状態だから水っぽくなっちゃいそうだけど、泥だらけだから仕方ない。
土がついた部分の肉って洗い流せば大丈夫なのかな。地面に落ちた肉と同じように考えたら結構微妙な気がする。
毒鑑定では大丈夫そうだったけど、念の為に光水を使おうかな。
ちょっと思いつきで、光水の瓶の蓋を開けて、水魔法と風魔法で光水を霧状にして吊り下げられている角兎に振りかけてみた。水を細かい粒状にするのは初めてやってみたけど、まあまあ上手く行った。
でも白い霧みたいにはならないな。もっと細かくしないといけないのかな。それとも温度だろうか。
光水の温度を少し冷やしながら振りまくように調整していると兄上が僕の肩越しに声をかけてきた。
「何やってんだ?」
「お腹壊したらいけないと思って、光水を振りかけてみたんだ」
「魔法で遊んでるのかと思った」
「遊びじゃないよ!もっと白い霧みたいにならないかなと思ったけど」
「今は白い霧にする必要ないだろ。さっさと解体しよう」
確かに、夕食の支度に間に合うように解体を終わらせることのほうが重要だった。水を霧状にするのがちょっと楽しくなってきちゃったのが見抜かれちゃったようで兄上に注意されちゃったけど、角兎に光水を振りかけること自体は反対されなかった。
それだけボロボロなんだよね。
「こんなにボロボロのを、お客様に出して良いのかなって思っちゃうね」
「狩りの成果を召し上がりたいのだろう。リクエストされているのだし、無難な部位だけ使うしかないんじゃないか」
「まあ……、自分達で狩った魔獣は食べてみたいかもね」
騎士さん達は状態をわかっていて運んできたんだから「こんなボロボロの食材を使って」とか怒られることはないんだよね。
それなら良いか、と解体作業を続けた。
屋敷の裏手の林の手前で地面の上に敷布を広げてその上に「収納」から角兎を出して積み上げた。
「うわぁ……。改めて見ると本当にボロボロだねぇ」
「……ちょっと角兔に同情したくなるな」
泥と血で汚れまくっている上に毛皮が切り刻まれたような状態になっている。
多分、背びれイタチの狩りの時みたいに、土の中に埋めて動けなくしてから魔法や弓で撃つ訓練をしようとしていたのだろうけど
角兎はキック力が強いから土に埋めても飛び出してしまって何度もやり直したんじゃないだろうか。
ある程度痛めつけて、弱らせていたのかもしれない。
「あれ、魔石も残ったままだね」
頭から胸のところまで刃物で切られたような跡の中にチラリと魔石が見えた。
「角もそのままだな。角の方は折れたり罅がが入ったりしているのばっかりだけど、魔石は返しておくか」
「返すって、持ってきた騎士さんの名前聞かなかったよ」
「殿下達に討伐の記念って渡せば良いんじゃないかな」
「それは良いかも」
ダラダラと敷布に血が滲んでいっているけれど、血抜きもしていないのかな。魔石もそのままだし仕留めてそのまんまのような気がする
「血抜き、していないかもしれないね」
「先に全部、木に吊るすか」
解体は順番にやっていくつもりだけど、血抜きだけはまとめて一気にやってしまう。
角兎の後ろ足を二本まとめてロープで縛って林の手前に生えている木の枝に吊るしていく。
足が切られてたり、変な風に骨が折れているのもあるけど、何とか全部逆さ吊りにした。
血抜きをしている間に、水魔法で毛皮の泥や血を落としていく。
切り刻まれて肉が見えている状態だから水っぽくなっちゃいそうだけど、泥だらけだから仕方ない。
土がついた部分の肉って洗い流せば大丈夫なのかな。地面に落ちた肉と同じように考えたら結構微妙な気がする。
毒鑑定では大丈夫そうだったけど、念の為に光水を使おうかな。
ちょっと思いつきで、光水の瓶の蓋を開けて、水魔法と風魔法で光水を霧状にして吊り下げられている角兎に振りかけてみた。水を細かい粒状にするのは初めてやってみたけど、まあまあ上手く行った。
でも白い霧みたいにはならないな。もっと細かくしないといけないのかな。それとも温度だろうか。
光水の温度を少し冷やしながら振りまくように調整していると兄上が僕の肩越しに声をかけてきた。
「何やってんだ?」
「お腹壊したらいけないと思って、光水を振りかけてみたんだ」
「魔法で遊んでるのかと思った」
「遊びじゃないよ!もっと白い霧みたいにならないかなと思ったけど」
「今は白い霧にする必要ないだろ。さっさと解体しよう」
確かに、夕食の支度に間に合うように解体を終わらせることのほうが重要だった。水を霧状にするのがちょっと楽しくなってきちゃったのが見抜かれちゃったようで兄上に注意されちゃったけど、角兎に光水を振りかけること自体は反対されなかった。
それだけボロボロなんだよね。
「こんなにボロボロのを、お客様に出して良いのかなって思っちゃうね」
「狩りの成果を召し上がりたいのだろう。リクエストされているのだし、無難な部位だけ使うしかないんじゃないか」
「まあ……、自分達で狩った魔獣は食べてみたいかもね」
騎士さん達は状態をわかっていて運んできたんだから「こんなボロボロの食材を使って」とか怒られることはないんだよね。
それなら良いか、と解体作業を続けた。
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