177 / 334
第1章
第177話 二人の問題だけど
しおりを挟む
兄上はゆっくりと振り向き、僕を見つめながら首を傾げた。
「どうした?」
「……ハロルド君とシェリル嬢のこと、あのままじゃ、、まずいかも……」
「今の庭園の会話?……うーん、プライベートな話だから放っておくしかないと思うよ」
兄上は少し身を屈めて僕の両肩に手を置いた。
「気になるのはわかるけど、あの二人の問題だからね」
僕の目を見つめ、諭すようにニコリと微笑む兄上。兄上の言うことはその通りなんだけど、やっぱりこのままにして良いのかと考えてしまう。無理にハロルド君とシェリル嬢をくっつけようとかって話ではない。ざわつく気持ちをどう伝えたら良いんだろう。
「でも……。夢で見たんだ。シェリル嬢に弟さんができたら、シェリル嬢は……」
「夢か……」
どう伝えようか迷いながら絞り出すように僕が言うと、兄上は考え込むように俯いて、指先で顎を撫でた。ほんの数秒で顔をあげ、庭園の奥の先ほど灯りが動いていた辺りに目を向けた。
「……夢で見たってことは何か意味があるかもしれないね。……気になることは言っておいた方が良いかもな。明日にも領地に帰るかもしれないなら、言うなら今言っておいた方が良いかもしれない」
「……明日帰るのかな……」
「それは聞いてないけどな」
兄上が肩を竦めた。明日か明後日帰るかもって言う話も気にはなる。狩りの訓練は終わりって言ってたから、そろそろ帰るんだろうけど出発の日にちは誰が決めてどこまで話が通ってるんだろうか。食事の準備だってあるんだから、しっかり予定を決めて欲しい。ジャックだって困っちゃうよ。
だけど、今はシェリル嬢とハロルド君の間の話が先だ。
本館の正面玄関に入り、広間に向かう。広間から庭園に出入りができるから。シェリル嬢とハロルド君も広間を経由して庭園に出たんじゃ無いかと考えている。
広間の入り口は特に警備されていなかったけど、広間から庭園に出る場所には騎士が立っていた。
ハロルド君の家の騎士だ。僕と兄上が広間に入ると、じろりと鋭い目線を向けてきた。
「こんばんは。テッセン伯爵令息を見かけませんでしたか?」
兄上が、余裕のある微笑みを浮かべて騎士に尋ねた。
騎士が眉を顰めた。
「ハロルド様は今はお話中です」
「そうなんですね。すみませんが、ちょっと急ぎなんです。明日の朝のネイサン殿下も交えた訓練のことで……」
兄上がサラッと適当なことを言った。
騎士がピクッと肩を揺らした。殿下の名前を言ったからかな。
あっさりと脇によけて、庭園へ通してくれた。
「明日の訓練の話は、本当に話したいことではあるんだよな」
庭園に足を踏み入れ、広間の明かりが届かない薄暗い場所まで来て兄上が言った。
「そうなんだ」
てっきり、庭園に入るための出任せかと思ったら、違っていたらしい。
「今日みたいなのをもう一度やって終わったら、微妙だろ」
「うーん……」
また、ハロルド君が手加減して……ってやつ。殿下が手加減に気がついているなら確かに気まずいよね。兄上は何か良いアイデアがあるのかな。
「どうした?」
「……ハロルド君とシェリル嬢のこと、あのままじゃ、、まずいかも……」
「今の庭園の会話?……うーん、プライベートな話だから放っておくしかないと思うよ」
兄上は少し身を屈めて僕の両肩に手を置いた。
「気になるのはわかるけど、あの二人の問題だからね」
僕の目を見つめ、諭すようにニコリと微笑む兄上。兄上の言うことはその通りなんだけど、やっぱりこのままにして良いのかと考えてしまう。無理にハロルド君とシェリル嬢をくっつけようとかって話ではない。ざわつく気持ちをどう伝えたら良いんだろう。
「でも……。夢で見たんだ。シェリル嬢に弟さんができたら、シェリル嬢は……」
「夢か……」
どう伝えようか迷いながら絞り出すように僕が言うと、兄上は考え込むように俯いて、指先で顎を撫でた。ほんの数秒で顔をあげ、庭園の奥の先ほど灯りが動いていた辺りに目を向けた。
「……夢で見たってことは何か意味があるかもしれないね。……気になることは言っておいた方が良いかもな。明日にも領地に帰るかもしれないなら、言うなら今言っておいた方が良いかもしれない」
「……明日帰るのかな……」
「それは聞いてないけどな」
兄上が肩を竦めた。明日か明後日帰るかもって言う話も気にはなる。狩りの訓練は終わりって言ってたから、そろそろ帰るんだろうけど出発の日にちは誰が決めてどこまで話が通ってるんだろうか。食事の準備だってあるんだから、しっかり予定を決めて欲しい。ジャックだって困っちゃうよ。
だけど、今はシェリル嬢とハロルド君の間の話が先だ。
本館の正面玄関に入り、広間に向かう。広間から庭園に出入りができるから。シェリル嬢とハロルド君も広間を経由して庭園に出たんじゃ無いかと考えている。
広間の入り口は特に警備されていなかったけど、広間から庭園に出る場所には騎士が立っていた。
ハロルド君の家の騎士だ。僕と兄上が広間に入ると、じろりと鋭い目線を向けてきた。
「こんばんは。テッセン伯爵令息を見かけませんでしたか?」
兄上が、余裕のある微笑みを浮かべて騎士に尋ねた。
騎士が眉を顰めた。
「ハロルド様は今はお話中です」
「そうなんですね。すみませんが、ちょっと急ぎなんです。明日の朝のネイサン殿下も交えた訓練のことで……」
兄上がサラッと適当なことを言った。
騎士がピクッと肩を揺らした。殿下の名前を言ったからかな。
あっさりと脇によけて、庭園へ通してくれた。
「明日の訓練の話は、本当に話したいことではあるんだよな」
庭園に足を踏み入れ、広間の明かりが届かない薄暗い場所まで来て兄上が言った。
「そうなんだ」
てっきり、庭園に入るための出任せかと思ったら、違っていたらしい。
「今日みたいなのをもう一度やって終わったら、微妙だろ」
「うーん……」
また、ハロルド君が手加減して……ってやつ。殿下が手加減に気がついているなら確かに気まずいよね。兄上は何か良いアイデアがあるのかな。
335
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる