転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第220話 ピリピリの気配

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お茶会を終えて廊下に出た時、何だか廊下の奥からビリビリとした気配を感じた。

「どうかしたかい?」

廊下の奥の方を振り返ったら、ハロルド君に不思議そうな顔をされた。ネイサン殿下もニコニコして「じゃあ、また明日の朝」なんて挨拶をしているる。

「はい。明日もよろしくお願いいたします」

兄上と目が合うと兄上は少しだけ目を見開いたけど、すぐに殿下達の方を向いてにこやかに挨拶をした。
僕も兄上に続いて挨拶をしておく。

殿下達の姿が見えなくなるまで見送ってから、兄上が僕の方に向き直った。

「どうした?」
「うん……。何か言い争いしているのかな?父上も居る気がするんだけど……」

気配を探ってみると、ビリビリした気配のうち一人は父上みたいな気がした。炎がグワっと燃え上がるみたいな感じだ。

「ああ……。魔獣の檻の件とか色々あったから、文句言っているんじゃないかな」

兄上は特に驚いた様子もなく平然としていた。

「喧嘩してるのかな?大丈夫かな?」

ビリビリした気配を感じると、心臓がドキドキしてしまう。

「父上なら大丈夫だろう。というか、僕だって腹立ってるし」
「……相手の人、黒焦げになっちゃう?」
「流石にそれはないんじゃないかな。文句言っているとしたら相手はゴーシュさんかな」
「父上対ゴーシュさん……」
「対戦しているってわけじゃないと思うけど」

気配がする方に廊下を進む。位置的には父上の執務室の近くの応接室に居るのだと思う。
廊下の角からそっと様子を伺うと、応接室の前に人が立っているということもない。
兄上が先に進もうとするので、ちょっと焦って声をかけた。

「どうするの?」
「とりあえず、何を話しているのか聞こえるところまで行くよ:
「立ち聞き?」
「話の内容に寄っては部屋に入って聞かせてもらっても良いと思うけど」
「え?いいの?」

怒られたりしないかドキドキしながら兄上の後ろをついて歩く。
応接室に近くなってきて、話し声が聞こえてきた。

「すぐにでも出て行って貰いたい!領民も子供達も危険に晒したんだぞ!」
「本当に申し訳なかった。檻の手配をした者を尋問している。
なぜこのような問題を起こしたのか明確になるまで、お待ちいただけないだろうか。
協力者がいる場合、このまま出発をしても道中が危険になる」
「前にもそう言って、新たな事件が起きているじゃないか!」

「それは……」

父上と話しているのは兄上の予想通りゴーシュさんのようだ。言い争っているというより
父上がお怒りモードのまま話をしているって感じ。

「まあ、まあ。セルジュ君の気持ちもわからないではない。しかしだな。……重要なのは殿下の身の安全、ではないかな?」

別の低い声が聞こえてきた。辺境伯様かな。
父上を諌めるような口調。静かな言い方なんだけど、ビリビリした気配がする。

「考えてもみたまえ。魔獣の入った檻を屋敷に持ち込もうと画策した疑いがあるのは、王宮騎士第一小隊の小隊長だ。
小隊のうちの一つが機能できない状態となっているんだよ。このまま、君の希望通りにゲンティアナを出たとしても、護衛の隊列が整っていない状態になる。
その事が殿下を危険に晒すとは思わないかね?」

辺境伯様はゆっくりと冷淡な口調で話をしているけど、何となく父上を責めるような雰囲気だ。
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