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昼食会
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食堂は300人ほどが座れそうだ。イスとテーブルがキレイに並んでいる。すでに100人ほどの人間が食事をしている。3人は空いている一角に座った。3人とも同じメニューだが、各々自分の皿には好きな量が盛られている。パンにスープ、それに肉と野菜を炒めたものが昼食の内容だ。
「――だからね、この世界にきて4年でドラゴンの討伐に抜擢されるのってすっっっっごいことなんだよ! ホント八京さんって天才!」
さっきから明日香は八京の話ばかりしている。八京がどんな人間なのかを明日香フィルターで熱弁している。食事中それを聞かされっぱなしだ。隣の八京は恥ずかしそうにしながら時々違う話題にしようとするが、そこから再び明日香が八京の話に戻してしまうのだった。
明日香もまだこの世界に来てから10日なのによくここまで八京のことを知ることが出来たものだと感心してしまう。
八京さんの話じゃなくて他の話も聞きたいんだけどなぁ……
「僕、ちょっと飲み物取ってくるよ」
この場にいるのが耐えられなくなった八京が席をたった。
「………………」
「………………」
八京がいなくなって妙な沈黙が訪れた。気まずい雰囲気が苦手なナオキは明日香に一つ質問をすることにした。
「ねぇ、あ、明日香……」
「なに?」
八京がいなくなったことで、明日香はスープを飲んでいた。食事が済んでいないのはマシンガントークを繰り広げた明日香だけだった。
「その……明日香って八京さんのことが好きなの?」
ブフォッ!!
いきなりの質問に明日香は勢いよくスープを噴き出した。
「んなっ!? な、な、な、何言ってるのよ? 急に……」
明日香の顔が真っ赤になった。鼻からはスープが垂れている。
やっぱり……
「ちょっと何でそうなるのよ? まったく……あ、会ってまだそんなに経ってないのに、て、適当なこと言わないでよ。わけわかんないんだけど」
早口で必死に否定しようとするが、言っていることとは裏腹に明日香の表情はナオキが言ったことが正解だと物語っている。
「いや、明日香ってすっごいわかりやすいって言うか……食堂に来てから八京さんの話ばっかりだし、オレに話してる割に八京さんのほうばっかり見てるからそうかなぁって……」
「え? 私そんなに八京さんのこと見てた? ホントに?」
「うん。メチャメチャ見てた」
「うわ~……八京さんもしかしてそれ気付いてる……かなぁ」
本人は全く自覚していなかったようだ。自分の行動がマズいと思ったのか、焦りだして顔はまだ赤いままだ。
「オレが気付いてるんだから、たぶん気付いてると思うけど……」
「どうしよう……ねえ何でもっと早く言ってくれないのよ! これじゃあ私が変な女だと思われるじゃない」
熱く火照った両頬を両手で冷やしている。その仕草が何とも可愛らしい。
まぁオレの中じゃすでに変な女に認定してるけど……
「オレのせいかよ。それに、さっきまで八京さんが一緒にいたんだから言えるわけないだろ」
「ゔっ……そ、そうだけど……確かにナオキが言える訳無いんだけど……あ~、どうしよう八京さんと顔を合わせづらくなっちゃった~」
明日香が頭を抱え真剣に困っているが、正直どう言ってフォローをしていいかわからなかった。こっちはこの17年間恋愛経験なんか無い。しかも直近の数か月はニートで人との会話もほとんど無かったのだ。
「ねぇ、どうして八京さんのこと好きになったの? 会ってまだ10日でしょ? 短くない?」
「ナオキぃ、私達会ってまだほんの少ししか経ってないのに随分私の心の中に踏み込んでくるじゃない」
明日香は目を吊り上げ、下からナオキを覗き込むような恰好をした。
「あ、ごめん。なんか明日香なら聞きやすいって言うか。答えてくれそうだからつい……」
やっぱりいきなりぶっこみ過ぎたか。マズったかなぁ
「……まぁいっか。嘘ついてもしょうがないし、聞かれたから答えるけど。やっぱり、一目惚れ? 八京さんカッコいいし。でもそれだけじゃなくて、背も高くて強いし何よりすっごく優しいじゃない。初めてあった時『この人だ』ってホントにビビビッ! ってきちゃったの。私、好きな人の前だとついしゃべり過ぎちゃうのよね。はぁ~……あぁもう八京さんと今後どう接していいかわかんないよぉ」
テーブルに突っ伏した明日香からは紫色をした負のオーラが出ているようだ。
「ま、まぁ今までのことを無かったことにはできないけど、これから挽回したら? まだ会って10日でしょ? 十分挽回できるよ」
「ナオキわかってないわね。いい? 人間初めの印象が肝心なのよ! 『まだ10日』じゃなくて『もう10日』経ってるの。この10日で八京さんが私に対してどう感じてたかがが重要なのよ」
バンッ! とテーブルを叩き、明日香は顔をナオキへ近づけた。明日香との距離が急に近くなり、ドキッとする。
「じゃ、じゃあオレの印象は?」
「モジモジして気が弱くてパッとしないヤツ」
「…………」
最悪じゃん
初めの印象が肝心なら明日香の中のナオキはそのままでいくのだろうか。今のままでは間違いなく恋愛対象にはなりえないだろう。何もしてないのに失恋をしたような感覚に襲われた。
そんな会話をしていると八京がトレーを持って戻ってきた。トレーには3つのカップが乗っていて湯気が揺らいでいる。
「二人とも楽しそうに話してるね。もう仲良くなったの? 何の話? 興味あるなぁ」
まさか、明日香が自分のことを好きだなんて話をしているとは思ってもいないのだろう。
明日香の視線が痛いほど刺さってくる。分かっている。余計なことはしゃべるなと言いたいのだ。流石に野暮なことを言って、これからの異世界生活で明日香を敵に回すほどナオキは馬鹿ではない。
「いや~、そんなに面白いこと話してたわけじゃないですよ」
そう。とりあえずは明日香の出方を伺ってみる。
「そ、そうですよ。ナオキの第一印象が、気が弱そうで頼りなさそうでパッとしないどうしようもない奴だからこの世界でやっていけるのかなぁなんて話をしてたんですぅ」
明日香の言葉が胸を突き刺さりえぐってくる。しかもさっき話してた時よりも酷い言われようで気持ちが奈落の底まで落ちそうだ。
確かにこの世界でやっていけるか不安だけど、何もこのタイミングで言わなくても良いのに。
「そうなの? 僕はナオキ君はしっかりやっていけると思うけどな」
意外なことを八京は言った。
「え~そうですかぁ? すっごく弱そうで何かスグ魔物にやられちゃいそうじゃないですか?」
明日香。そこまで言わなくても……ひょっとしてオレのこと嫌いなのか……
「会ってそんなに経ってないけど、ナオキ君って割と冷静に物事を考えて行動してるように思うんだ。それっていざって時にすごく大事で、生きるか死ぬかって時に活かされることなんだよ」
八京は持ってきた飲み物を二人の前に置いた。色と香りから言ってコーヒーのようなものだろう。何かを煎ったような香りが気分を落ち着かせる。自分の椅子に座りながら八京は話し続けた。
「これは持論なんだけどね。召喚された時って、突然すぎて訳が分からなくってパニックになり易いんだけど、これって正に生死を分ける時に取りやすい行動だと思うんだ。そんな時にナオキ君は落ち着いて冷静に今の状況を把握しようとしてたから、僕は大丈夫なんじゃないかなぁってあの時そう感じたんだ」
あの短時間でそこまで見ていたとは驚いた。だが褒められたことは気分がよく、なにより嬉しかった。先ほど明日香に突き落とされた気分がエレベーターに乗って上がってきたようだ。
「そうだったんですか? でも、もしかしたらただボーっとしてただけかもしれませよ?」
明日香……ほとんど当たってるけど本人を目の前にしてそこまで言わなくてもよくね?
「確かにそうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないよ? 僕はあの時直感でそう感じたんだ。これでも僕の感は当たるんだよ」
軽く笑いながら八京は言った。その言葉が本音かは分からないが八京の言葉が嘘になってしまわないよう頑張っていこうと心に誓った。
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さっきから明日香は八京の話ばかりしている。八京がどんな人間なのかを明日香フィルターで熱弁している。食事中それを聞かされっぱなしだ。隣の八京は恥ずかしそうにしながら時々違う話題にしようとするが、そこから再び明日香が八京の話に戻してしまうのだった。
明日香もまだこの世界に来てから10日なのによくここまで八京のことを知ることが出来たものだと感心してしまう。
八京さんの話じゃなくて他の話も聞きたいんだけどなぁ……
「僕、ちょっと飲み物取ってくるよ」
この場にいるのが耐えられなくなった八京が席をたった。
「………………」
「………………」
八京がいなくなって妙な沈黙が訪れた。気まずい雰囲気が苦手なナオキは明日香に一つ質問をすることにした。
「ねぇ、あ、明日香……」
「なに?」
八京がいなくなったことで、明日香はスープを飲んでいた。食事が済んでいないのはマシンガントークを繰り広げた明日香だけだった。
「その……明日香って八京さんのことが好きなの?」
ブフォッ!!
いきなりの質問に明日香は勢いよくスープを噴き出した。
「んなっ!? な、な、な、何言ってるのよ? 急に……」
明日香の顔が真っ赤になった。鼻からはスープが垂れている。
やっぱり……
「ちょっと何でそうなるのよ? まったく……あ、会ってまだそんなに経ってないのに、て、適当なこと言わないでよ。わけわかんないんだけど」
早口で必死に否定しようとするが、言っていることとは裏腹に明日香の表情はナオキが言ったことが正解だと物語っている。
「いや、明日香ってすっごいわかりやすいって言うか……食堂に来てから八京さんの話ばっかりだし、オレに話してる割に八京さんのほうばっかり見てるからそうかなぁって……」
「え? 私そんなに八京さんのこと見てた? ホントに?」
「うん。メチャメチャ見てた」
「うわ~……八京さんもしかしてそれ気付いてる……かなぁ」
本人は全く自覚していなかったようだ。自分の行動がマズいと思ったのか、焦りだして顔はまだ赤いままだ。
「オレが気付いてるんだから、たぶん気付いてると思うけど……」
「どうしよう……ねえ何でもっと早く言ってくれないのよ! これじゃあ私が変な女だと思われるじゃない」
熱く火照った両頬を両手で冷やしている。その仕草が何とも可愛らしい。
まぁオレの中じゃすでに変な女に認定してるけど……
「オレのせいかよ。それに、さっきまで八京さんが一緒にいたんだから言えるわけないだろ」
「ゔっ……そ、そうだけど……確かにナオキが言える訳無いんだけど……あ~、どうしよう八京さんと顔を合わせづらくなっちゃった~」
明日香が頭を抱え真剣に困っているが、正直どう言ってフォローをしていいかわからなかった。こっちはこの17年間恋愛経験なんか無い。しかも直近の数か月はニートで人との会話もほとんど無かったのだ。
「ねぇ、どうして八京さんのこと好きになったの? 会ってまだ10日でしょ? 短くない?」
「ナオキぃ、私達会ってまだほんの少ししか経ってないのに随分私の心の中に踏み込んでくるじゃない」
明日香は目を吊り上げ、下からナオキを覗き込むような恰好をした。
「あ、ごめん。なんか明日香なら聞きやすいって言うか。答えてくれそうだからつい……」
やっぱりいきなりぶっこみ過ぎたか。マズったかなぁ
「……まぁいっか。嘘ついてもしょうがないし、聞かれたから答えるけど。やっぱり、一目惚れ? 八京さんカッコいいし。でもそれだけじゃなくて、背も高くて強いし何よりすっごく優しいじゃない。初めてあった時『この人だ』ってホントにビビビッ! ってきちゃったの。私、好きな人の前だとついしゃべり過ぎちゃうのよね。はぁ~……あぁもう八京さんと今後どう接していいかわかんないよぉ」
テーブルに突っ伏した明日香からは紫色をした負のオーラが出ているようだ。
「ま、まぁ今までのことを無かったことにはできないけど、これから挽回したら? まだ会って10日でしょ? 十分挽回できるよ」
「ナオキわかってないわね。いい? 人間初めの印象が肝心なのよ! 『まだ10日』じゃなくて『もう10日』経ってるの。この10日で八京さんが私に対してどう感じてたかがが重要なのよ」
バンッ! とテーブルを叩き、明日香は顔をナオキへ近づけた。明日香との距離が急に近くなり、ドキッとする。
「じゃ、じゃあオレの印象は?」
「モジモジして気が弱くてパッとしないヤツ」
「…………」
最悪じゃん
初めの印象が肝心なら明日香の中のナオキはそのままでいくのだろうか。今のままでは間違いなく恋愛対象にはなりえないだろう。何もしてないのに失恋をしたような感覚に襲われた。
そんな会話をしていると八京がトレーを持って戻ってきた。トレーには3つのカップが乗っていて湯気が揺らいでいる。
「二人とも楽しそうに話してるね。もう仲良くなったの? 何の話? 興味あるなぁ」
まさか、明日香が自分のことを好きだなんて話をしているとは思ってもいないのだろう。
明日香の視線が痛いほど刺さってくる。分かっている。余計なことはしゃべるなと言いたいのだ。流石に野暮なことを言って、これからの異世界生活で明日香を敵に回すほどナオキは馬鹿ではない。
「いや~、そんなに面白いこと話してたわけじゃないですよ」
そう。とりあえずは明日香の出方を伺ってみる。
「そ、そうですよ。ナオキの第一印象が、気が弱そうで頼りなさそうでパッとしないどうしようもない奴だからこの世界でやっていけるのかなぁなんて話をしてたんですぅ」
明日香の言葉が胸を突き刺さりえぐってくる。しかもさっき話してた時よりも酷い言われようで気持ちが奈落の底まで落ちそうだ。
確かにこの世界でやっていけるか不安だけど、何もこのタイミングで言わなくても良いのに。
「そうなの? 僕はナオキ君はしっかりやっていけると思うけどな」
意外なことを八京は言った。
「え~そうですかぁ? すっごく弱そうで何かスグ魔物にやられちゃいそうじゃないですか?」
明日香。そこまで言わなくても……ひょっとしてオレのこと嫌いなのか……
「会ってそんなに経ってないけど、ナオキ君って割と冷静に物事を考えて行動してるように思うんだ。それっていざって時にすごく大事で、生きるか死ぬかって時に活かされることなんだよ」
八京は持ってきた飲み物を二人の前に置いた。色と香りから言ってコーヒーのようなものだろう。何かを煎ったような香りが気分を落ち着かせる。自分の椅子に座りながら八京は話し続けた。
「これは持論なんだけどね。召喚された時って、突然すぎて訳が分からなくってパニックになり易いんだけど、これって正に生死を分ける時に取りやすい行動だと思うんだ。そんな時にナオキ君は落ち着いて冷静に今の状況を把握しようとしてたから、僕は大丈夫なんじゃないかなぁってあの時そう感じたんだ」
あの短時間でそこまで見ていたとは驚いた。だが褒められたことは気分がよく、なにより嬉しかった。先ほど明日香に突き落とされた気分がエレベーターに乗って上がってきたようだ。
「そうだったんですか? でも、もしかしたらただボーっとしてただけかもしれませよ?」
明日香……ほとんど当たってるけど本人を目の前にしてそこまで言わなくてもよくね?
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