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回復魔法
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あぁ……気持ちいい……
自室のベッドで横になってナオキは治療されていた。
ベッドの横には一人の女性が立っている。
真矢 涼音――肩甲骨辺りまであるオレンジ色の髪、丸眼鏡を掛けた切れ長の目にはどことなく知性的さを感じる。
年は八京より少し上――20代後半だろうか。白のロングコートを纏い、ブラウンの上着とベージュのロングスカートというシンプルな装いをしている。
クールビューティー
涼音を表現するのにふさわしい言葉だった。
涼音はナオキへ向かって両手をかざし、回復魔法をかけていた。
この気持ち良さヤバいなぁ……明日香の気持ちが良くわかる……
「はい、これでОK。身体動かしてみて」
魔法を解き、涼音は両手を腰に当てた。
もう少し魔法を受けていたかったがそういうわけにもいかず、ナオキはベッドから起き上がった。
「……全然痛くない……」
今までは痛みで身体を動かすこともできなかったのに、全く痛みを感じなかった。
ベッドから出て身体を動かすがやはり痛みは感じなかった。
「凄い。本当に治ってる……」
「当たり前でしょ。私の回復魔法は凄いんだから」
涼音はこの国でもトップクラスの回復魔法の使い手らしい。頻繁に遠征組に組み込まれるため、滅多に城へ戻ることは無かったが、遠征がひと段落して今日帰ってきたところを八京が頼んだのだ。
「帰ってきて早々治してもらって、ありがとうございます。ホント助かりました」
「いいわ。八京君の頼みだし、それに新しくできた後輩のためなんだから」
涼音はポケットに入っていた煙草を一本取り出しくわえた。
「あ、吸っていい?」
こちらが応える間もなく、指先で小さい炎を出し吸い始めた。
「は、はい。大丈夫です」
もう吸ってるし……それに治してもらって断れないだろう
「アリガト。魔法使った後の一服ってたまんないのよね~」
くわえていた煙草をしなやかな指で離し、ゆっくり煙を吐き出す。その仕草に妙な色っぽさを感じる。スグにナオキの部屋にはメンソールの香りが充満した。
「ゴブリンにやられたんだって? 君ねぇ、まだこっちに来て間もないんだし、無茶なことしてるとスグに死ぬよ?」
窓を開けながら涼音は言った。外からの風で部屋の匂いが和らぐ。
「耳が痛いです……実際、八京さんがいなかったら殺されてたと思います」
「でしょ? たかがゴブリンでも舐めてかかったらダメよ! 向こうだって必死なんだから」
「はい……気を付けます」
オレのせいではない……とは言わないでおこう。
「それはそうと、今日ってもう一人召喚されるんだって?」
訊きながらも涼音は煙草を吸っている。
「はい、今回も八京さんが立ち会うって言ってましたけど」
「ふ~ん。じゃあ夜は八京君空いてないかな……久しぶりに飲みたいんだけど。君は? 飲めるの?」
「いえ……オレまだ未成年だし……」
飲み潰れたことはあるけど……
「真面目ね。でもこっちの世界じゃ年関係なしに皆飲んでるのよ」
「そうなんですか?」
というか城以外で食事をすることが無かった。
「八京君も真面目だから、あんまりそういうの教えないのかもね。じゃあお姉さんが代わりに色々教えてあげよっかなぁ~」
涼音は意味深な笑みを浮かべながらナオキに歩み寄り顔を近づけ、煙草を持っていない指でナオキの顎を『クイッ』っと持ち上げる。メンソールの香りが鼻を刺激する。
「い、色々……ですか?」
涼音の顔が近い……目を見るのが恥ずかしいので視線を少し下げる。すると涼音の胸元が見える。前かがみになっているので胸の谷間が強調される。
「そう。いろいろ……」
一体どんなことを教えてくれるんだ……
想像するだけでナオキの胸の鼓動がデタラメに高鳴る。
『フッ』っと涼音は小さく息を出し、顔を引いた。
「冗談よ。何想像してるのよ、少年」
「え……じょ、冗談……で、ですよねぇ……」
からかわれた
ホッとした気持ちと残念な気持ちが入り混じってため息が漏れる。
「なぁに? 本気にした? でも流石に私も10代の子はちょっとねぇ」
「そ、そうですか。ハハハ、そうですよね」
涼音といい明日香といい、こっちの世界に来ておちょくられる機会が多い気がする。いや、彼女たちの性格か。
「ねぇ。体動かせるんだし八京君のとこ行ってみない? もう召喚も終わってる頃だし、君の後輩とも会えるよ?」
後輩……そうか、ここに来て一週間経つけどもう後輩が出来るのか……オレも挨拶したほうがいいかな……
「そ、そうですね。行きます」
「OK! じゃあ八京君の部屋へ行ってみよう」
涼音はナオキの部屋のドアを開けて歩き始めた。気付けば煙草は吸い終わっている。
「――そういえば召喚って条件があるみたいですけど、具体的にどんな条件なんですか?」
以前から気になっていたことだ。この際だから涼音に聞いてみることにした。
「八京君から聞いてないのね。条件で言えば魔石が必要かな」
「魔石? 何ですかそれ?」
「魔石も知らないの? まだこっちに来て一週間だもんね。いい? 魔石って言うのはね、魔人が自分の魔力を凝縮して作ったものなのよ。凝縮って言うからには純度100%の魔力の塊ってわけね」
両手で大きなおにぎりを作るような仕草を涼音はした。そこから少しずつおにぎりは小さくなっていく。
「魔人!? ドラゴンだけじゃなくって魔人もいるんですか?」
「そっからかぁ。そう、魔人は初めて魔法を使い始めた存在なの。見た目は人間に近いらしいけど……私達とは別物。魔力も私達人間とは比べ物にならないほど膨大なのよ。そして何より強い! それこそドラゴンに匹敵するほどにね」
ドラゴンに魔人……異世界感満載な生き物たちだ。
「そうなんですか……涼音さんは魔人を見たことあるんですか?」
一体どんな姿なのだろう……
興味が湧いてきた。
「残念だけど見たこと無いわ。そもそも魔人は数が少ないのよ。一説には、ここから遠く離れた辺境で国を作ってるって言うけど、実際に見た人はそんなにいないのよ。でも八京君は見てるかな」
「八京さんが? やっぱり凄いんですね」
「まぁね。とにかく、その魔人が作ったのが魔石。召喚するには相当な魔力が必要になるから、基本的に人間の魔力だけで召喚するのは無理なの。それを可能にするのが魔石。珍しく今回、魔石が大量に見つかったからアナタたちを召喚することが出来たのよ。それに他にも使い道はあるんだけどね……」
最後の一言は小声でよく聞き取れなかった。
「え? 最後何て言いました?」
「う、ううん。何でもないの。気にしないで……」
慌てた様に涼音は両手を振った。妙な感じがしたがあえて聞かなかった。
「あの、魔石ってどこで見つかるものなんですか?」
「それが企業秘密。私もどうやって探しているのか、誰が探しているのか知らないのよ。私の周りにいるリスタも一緒。この国の人間は大事なことをリスタには教えてくれないの。都合のいい時だけこっちを頼って。まったく嫌になるわ」
何か都合の悪いことがあるのか……
そんなことを考えていると八京の部屋が見えてきた。
今回召喚されたのは一体どんな人だろう……どうか怖い人じゃありませんように。
ナオキは神に祈った。
自室のベッドで横になってナオキは治療されていた。
ベッドの横には一人の女性が立っている。
真矢 涼音――肩甲骨辺りまであるオレンジ色の髪、丸眼鏡を掛けた切れ長の目にはどことなく知性的さを感じる。
年は八京より少し上――20代後半だろうか。白のロングコートを纏い、ブラウンの上着とベージュのロングスカートというシンプルな装いをしている。
クールビューティー
涼音を表現するのにふさわしい言葉だった。
涼音はナオキへ向かって両手をかざし、回復魔法をかけていた。
この気持ち良さヤバいなぁ……明日香の気持ちが良くわかる……
「はい、これでОK。身体動かしてみて」
魔法を解き、涼音は両手を腰に当てた。
もう少し魔法を受けていたかったがそういうわけにもいかず、ナオキはベッドから起き上がった。
「……全然痛くない……」
今までは痛みで身体を動かすこともできなかったのに、全く痛みを感じなかった。
ベッドから出て身体を動かすがやはり痛みは感じなかった。
「凄い。本当に治ってる……」
「当たり前でしょ。私の回復魔法は凄いんだから」
涼音はこの国でもトップクラスの回復魔法の使い手らしい。頻繁に遠征組に組み込まれるため、滅多に城へ戻ることは無かったが、遠征がひと段落して今日帰ってきたところを八京が頼んだのだ。
「帰ってきて早々治してもらって、ありがとうございます。ホント助かりました」
「いいわ。八京君の頼みだし、それに新しくできた後輩のためなんだから」
涼音はポケットに入っていた煙草を一本取り出しくわえた。
「あ、吸っていい?」
こちらが応える間もなく、指先で小さい炎を出し吸い始めた。
「は、はい。大丈夫です」
もう吸ってるし……それに治してもらって断れないだろう
「アリガト。魔法使った後の一服ってたまんないのよね~」
くわえていた煙草をしなやかな指で離し、ゆっくり煙を吐き出す。その仕草に妙な色っぽさを感じる。スグにナオキの部屋にはメンソールの香りが充満した。
「ゴブリンにやられたんだって? 君ねぇ、まだこっちに来て間もないんだし、無茶なことしてるとスグに死ぬよ?」
窓を開けながら涼音は言った。外からの風で部屋の匂いが和らぐ。
「耳が痛いです……実際、八京さんがいなかったら殺されてたと思います」
「でしょ? たかがゴブリンでも舐めてかかったらダメよ! 向こうだって必死なんだから」
「はい……気を付けます」
オレのせいではない……とは言わないでおこう。
「それはそうと、今日ってもう一人召喚されるんだって?」
訊きながらも涼音は煙草を吸っている。
「はい、今回も八京さんが立ち会うって言ってましたけど」
「ふ~ん。じゃあ夜は八京君空いてないかな……久しぶりに飲みたいんだけど。君は? 飲めるの?」
「いえ……オレまだ未成年だし……」
飲み潰れたことはあるけど……
「真面目ね。でもこっちの世界じゃ年関係なしに皆飲んでるのよ」
「そうなんですか?」
というか城以外で食事をすることが無かった。
「八京君も真面目だから、あんまりそういうの教えないのかもね。じゃあお姉さんが代わりに色々教えてあげよっかなぁ~」
涼音は意味深な笑みを浮かべながらナオキに歩み寄り顔を近づけ、煙草を持っていない指でナオキの顎を『クイッ』っと持ち上げる。メンソールの香りが鼻を刺激する。
「い、色々……ですか?」
涼音の顔が近い……目を見るのが恥ずかしいので視線を少し下げる。すると涼音の胸元が見える。前かがみになっているので胸の谷間が強調される。
「そう。いろいろ……」
一体どんなことを教えてくれるんだ……
想像するだけでナオキの胸の鼓動がデタラメに高鳴る。
『フッ』っと涼音は小さく息を出し、顔を引いた。
「冗談よ。何想像してるのよ、少年」
「え……じょ、冗談……で、ですよねぇ……」
からかわれた
ホッとした気持ちと残念な気持ちが入り混じってため息が漏れる。
「なぁに? 本気にした? でも流石に私も10代の子はちょっとねぇ」
「そ、そうですか。ハハハ、そうですよね」
涼音といい明日香といい、こっちの世界に来ておちょくられる機会が多い気がする。いや、彼女たちの性格か。
「ねぇ。体動かせるんだし八京君のとこ行ってみない? もう召喚も終わってる頃だし、君の後輩とも会えるよ?」
後輩……そうか、ここに来て一週間経つけどもう後輩が出来るのか……オレも挨拶したほうがいいかな……
「そ、そうですね。行きます」
「OK! じゃあ八京君の部屋へ行ってみよう」
涼音はナオキの部屋のドアを開けて歩き始めた。気付けば煙草は吸い終わっている。
「――そういえば召喚って条件があるみたいですけど、具体的にどんな条件なんですか?」
以前から気になっていたことだ。この際だから涼音に聞いてみることにした。
「八京君から聞いてないのね。条件で言えば魔石が必要かな」
「魔石? 何ですかそれ?」
「魔石も知らないの? まだこっちに来て一週間だもんね。いい? 魔石って言うのはね、魔人が自分の魔力を凝縮して作ったものなのよ。凝縮って言うからには純度100%の魔力の塊ってわけね」
両手で大きなおにぎりを作るような仕草を涼音はした。そこから少しずつおにぎりは小さくなっていく。
「魔人!? ドラゴンだけじゃなくって魔人もいるんですか?」
「そっからかぁ。そう、魔人は初めて魔法を使い始めた存在なの。見た目は人間に近いらしいけど……私達とは別物。魔力も私達人間とは比べ物にならないほど膨大なのよ。そして何より強い! それこそドラゴンに匹敵するほどにね」
ドラゴンに魔人……異世界感満載な生き物たちだ。
「そうなんですか……涼音さんは魔人を見たことあるんですか?」
一体どんな姿なのだろう……
興味が湧いてきた。
「残念だけど見たこと無いわ。そもそも魔人は数が少ないのよ。一説には、ここから遠く離れた辺境で国を作ってるって言うけど、実際に見た人はそんなにいないのよ。でも八京君は見てるかな」
「八京さんが? やっぱり凄いんですね」
「まぁね。とにかく、その魔人が作ったのが魔石。召喚するには相当な魔力が必要になるから、基本的に人間の魔力だけで召喚するのは無理なの。それを可能にするのが魔石。珍しく今回、魔石が大量に見つかったからアナタたちを召喚することが出来たのよ。それに他にも使い道はあるんだけどね……」
最後の一言は小声でよく聞き取れなかった。
「え? 最後何て言いました?」
「う、ううん。何でもないの。気にしないで……」
慌てた様に涼音は両手を振った。妙な感じがしたがあえて聞かなかった。
「あの、魔石ってどこで見つかるものなんですか?」
「それが企業秘密。私もどうやって探しているのか、誰が探しているのか知らないのよ。私の周りにいるリスタも一緒。この国の人間は大事なことをリスタには教えてくれないの。都合のいい時だけこっちを頼って。まったく嫌になるわ」
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ナオキは神に祈った。
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