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辛い過去
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ルカは一度深呼吸をした。
「……えっと……私……両親がとても厳しくて……小中学校って進学校に通ってました。私、普段から勉強しかしてこなくて、その甲斐あって成績はいつも一番だったんですけど……って言っても自慢とかじゃなくって、その……私ってこんなだから友達もいなかったし、でも別にそれでもいいやって思ってました。友達がいても特にやりたいことも無いし。
私、周りから浮いてたみたいで、誰も声かけてくれなかったしその……私にはホントに勉強しかなかったんです。私の存在を示せるものが……両親も先生もそんな私に期待してて……私、とにかく周りの期待に応えたくって必死に勉強したんです」
拙いながらも一生懸命に話すルカを月光りが照らす。ルカの手は膝の上で強く握られている。
「当然高校は一流の進学校を受験しました。私の学力なら問題ないって両親も先生も言ってたし、私もそれなりに自信あったんです。
けど……結果は不合格……原因は分かってました。学力じゃないって。だって試験問題は全部分かりましたから……駄目だったのは面接でした」
ここでルカは再び深呼吸をした。
「私、面接官を前に頭が真っ白になっちゃって……何も言えなかったんです。もうどんな質問だったのか、どんなことを言ったのかも覚えてないくらいパニックになっちゃって……気が付いたら家へ歩いてるところでした。
その後は第二志望も落ちて第三志望の高校に入学したんですけど……その……やっぱり周りと馴染めなくて……元々同じ中学校にいた同級生もいたし周りの人たちが私のこと落ちこぼれだって見てる気がして……分かってるんです。そんなの気のせいだって。気にしなくってもいいんだって……でも今更誰かと話しなんかできないし。
両親は志望校に落ちた時点で私のことに関心が無くなっちゃったみたいで会話はほとんどなくなって」
いつの間にかルカの頬を涙が伝っていた。
「そんなことをしてるうちに、何だか学校に行くのが怖くなって……学校に行かなくなったら今度は家から出るのも怖くなっちゃって……気が付いたら一日中家に閉じ籠ってました。
もう……私には生きる価値が無いんだって感じながら、だからって死んだりとかは怖くて出来なくって……ただ部屋の中で時間が過ぎていくだけの日々だったんです。
そんな時です。この世界に来たのは。正直びっくりしたけど、ここには昔の私を知ってる人はいないし、皆さんこんな私に優しくしてくれて……本当に嬉しかった……だから私、この世界なら頑張っていけるかなって思ったんです。
そしていろいろ人と仲良くなって、いろいろな人に期待されて、頼られて、褒めてもらえる。そんな人間になれるんじゃないかって思ったんです。
でも、明日のことを考えるとやっぱり怖くて……本当に私に魔物を殺せるのか不安で……また昔の自分に戻ってしまうんじゃないかって考えると不安で不安で……押しつぶされそうになるんです。今だって不安で眠れなくって場内を歩いてたらここに来て、星を眺めてたんです」
そこまで話し、ルカは話すのを止めた。そして二人の間に少しの沈黙が訪れた。
夜中の城庭には時々風が草木を擦らせる音だけで静寂そのものだった。だが、不思議と二人の沈黙が不快だとはナオキは感じなかった。
「……すいません。こんな話。つまらなかったですよね」
そんな沈黙を破ったのはルカだった。
「いや、つまらないなんて……そんなこと思ってないから大丈夫だよ」
正直ルカにどう言っていいか分からなかった。何か言葉をかけても全てが薄っぺらくなってしまいそうで。
再び二人の間に沈黙が訪れた。
「あの、話聞いてくれてありがとうございます。今の話聞いて『気持ち悪い』とか『変な奴』とか感じると思うんですよ。実際そうなんだし……でも私……ナオキさんに聞いてもらって嬉しかったしその……以前の自分より少し前に進めそうな気がします」
「オレは何もしてないよ。でも、前を向けるきっかけになったなら良かった。別にオレは変だなんて思ってないし。それに、ルカさんのこと――」
「『さん』付けはやめてください。そっちのほうが私もその……嬉しいんで……」
「じゃ、じゃあルカちゃん……」
「……はい」
ナオキは自分の体温が上がるのを感じた。おそらくルカも――
「オ、オレ、ルカちゃんのこと知れて良かったよ。ぶっちゃけオレのこと嫌いなんじゃないかと思ってたから……ほら、初めて会った時のことも有ったし……」
「あ……あれは事故じゃないですか……全然気にしてません。こっちこそなんかすいませんでした」
「……ねぇルカちゃん……」
「何ですか?」
「その……今度はオレの話を聞いてもらえるかな……」
「え? その……いいんですか?」
驚いたルカはナオキに伺う。
だがナオキの覚悟は決まっていた。
「オレの話もさ……なんて言うか……ルカちゃんが嫌な気分になるかも知れないし、オレのことを軽蔑するかもしれないんだけど……」
「私、ナオキさんのことを軽蔑するなんて絶対にしません。大丈夫です。信じてください」
ルカはナオキの手を握った。その手はひんやりと冷たかったが手の奥の方からわずかな温もりを感じた。
「……分かった。話すよ……」
ナオキは玲とのことを話し始めた……
「……えっと……私……両親がとても厳しくて……小中学校って進学校に通ってました。私、普段から勉強しかしてこなくて、その甲斐あって成績はいつも一番だったんですけど……って言っても自慢とかじゃなくって、その……私ってこんなだから友達もいなかったし、でも別にそれでもいいやって思ってました。友達がいても特にやりたいことも無いし。
私、周りから浮いてたみたいで、誰も声かけてくれなかったしその……私にはホントに勉強しかなかったんです。私の存在を示せるものが……両親も先生もそんな私に期待してて……私、とにかく周りの期待に応えたくって必死に勉強したんです」
拙いながらも一生懸命に話すルカを月光りが照らす。ルカの手は膝の上で強く握られている。
「当然高校は一流の進学校を受験しました。私の学力なら問題ないって両親も先生も言ってたし、私もそれなりに自信あったんです。
けど……結果は不合格……原因は分かってました。学力じゃないって。だって試験問題は全部分かりましたから……駄目だったのは面接でした」
ここでルカは再び深呼吸をした。
「私、面接官を前に頭が真っ白になっちゃって……何も言えなかったんです。もうどんな質問だったのか、どんなことを言ったのかも覚えてないくらいパニックになっちゃって……気が付いたら家へ歩いてるところでした。
その後は第二志望も落ちて第三志望の高校に入学したんですけど……その……やっぱり周りと馴染めなくて……元々同じ中学校にいた同級生もいたし周りの人たちが私のこと落ちこぼれだって見てる気がして……分かってるんです。そんなの気のせいだって。気にしなくってもいいんだって……でも今更誰かと話しなんかできないし。
両親は志望校に落ちた時点で私のことに関心が無くなっちゃったみたいで会話はほとんどなくなって」
いつの間にかルカの頬を涙が伝っていた。
「そんなことをしてるうちに、何だか学校に行くのが怖くなって……学校に行かなくなったら今度は家から出るのも怖くなっちゃって……気が付いたら一日中家に閉じ籠ってました。
もう……私には生きる価値が無いんだって感じながら、だからって死んだりとかは怖くて出来なくって……ただ部屋の中で時間が過ぎていくだけの日々だったんです。
そんな時です。この世界に来たのは。正直びっくりしたけど、ここには昔の私を知ってる人はいないし、皆さんこんな私に優しくしてくれて……本当に嬉しかった……だから私、この世界なら頑張っていけるかなって思ったんです。
そしていろいろ人と仲良くなって、いろいろな人に期待されて、頼られて、褒めてもらえる。そんな人間になれるんじゃないかって思ったんです。
でも、明日のことを考えるとやっぱり怖くて……本当に私に魔物を殺せるのか不安で……また昔の自分に戻ってしまうんじゃないかって考えると不安で不安で……押しつぶされそうになるんです。今だって不安で眠れなくって場内を歩いてたらここに来て、星を眺めてたんです」
そこまで話し、ルカは話すのを止めた。そして二人の間に少しの沈黙が訪れた。
夜中の城庭には時々風が草木を擦らせる音だけで静寂そのものだった。だが、不思議と二人の沈黙が不快だとはナオキは感じなかった。
「……すいません。こんな話。つまらなかったですよね」
そんな沈黙を破ったのはルカだった。
「いや、つまらないなんて……そんなこと思ってないから大丈夫だよ」
正直ルカにどう言っていいか分からなかった。何か言葉をかけても全てが薄っぺらくなってしまいそうで。
再び二人の間に沈黙が訪れた。
「あの、話聞いてくれてありがとうございます。今の話聞いて『気持ち悪い』とか『変な奴』とか感じると思うんですよ。実際そうなんだし……でも私……ナオキさんに聞いてもらって嬉しかったしその……以前の自分より少し前に進めそうな気がします」
「オレは何もしてないよ。でも、前を向けるきっかけになったなら良かった。別にオレは変だなんて思ってないし。それに、ルカさんのこと――」
「『さん』付けはやめてください。そっちのほうが私もその……嬉しいんで……」
「じゃ、じゃあルカちゃん……」
「……はい」
ナオキは自分の体温が上がるのを感じた。おそらくルカも――
「オ、オレ、ルカちゃんのこと知れて良かったよ。ぶっちゃけオレのこと嫌いなんじゃないかと思ってたから……ほら、初めて会った時のことも有ったし……」
「あ……あれは事故じゃないですか……全然気にしてません。こっちこそなんかすいませんでした」
「……ねぇルカちゃん……」
「何ですか?」
「その……今度はオレの話を聞いてもらえるかな……」
「え? その……いいんですか?」
驚いたルカはナオキに伺う。
だがナオキの覚悟は決まっていた。
「オレの話もさ……なんて言うか……ルカちゃんが嫌な気分になるかも知れないし、オレのことを軽蔑するかもしれないんだけど……」
「私、ナオキさんのことを軽蔑するなんて絶対にしません。大丈夫です。信じてください」
ルカはナオキの手を握った。その手はひんやりと冷たかったが手の奥の方からわずかな温もりを感じた。
「……分かった。話すよ……」
ナオキは玲とのことを話し始めた……
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