異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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少し肌寒さを感じる曇天の日、ナオキ達は馬に乗り移動していた。ナオキの周りには3百人ほどの人間が馬に乗り馬車に乗り移動している。移動しているのは兵士たちだ。



 城を出発してから数時間は経っただろう。ナオキは同じ体勢で身体が強張っているのと尻が擦れる痛みに耐えながら、あくびをし眠気と戦っていた。



――結局一睡もできなかった……眠いし身体中痛い。特にケツが痛い……



 必死に苦痛に耐えていると、ルカがナオキの傍へ近づいてきた。



「センパイ、大丈夫ですか? 辛そうですけど……」

「あぁ。結局あれから寝れなくってね。ルカちゃんはどう? 少しは寝れた?」



 ルカの顔色はナオキほど悪くはなさそうだ。



「はい、仮眠程度ですけど。私は眠気より身体中が痛くって」

「それオレもだよ。もう身体がヤバい。これって正しい姿勢で乗れてないからなんだってね。オレたちってまだまだだ」



 心なしかルカは嬉しそうだ。昨晩見せた不安な姿は今は見られない。



「フフッ……そうですね。一緒に頑張りましょう」



 乗馬はこの世界に来て始めたことの一つだ。これから馬に乗ることが必須になるので剣術同様、早々に訓練を始めていた。



「あれぇ、なに? 二人とも何だか仲良さそうじゃない。どうしちゃったの?」



 明日香が話に入ってきた。ナオキ達より早くに召喚されてだけあって乗馬の姿勢もサマになっている。



「そ、そう? そんなことないと思うけど。ねぇルカちゃん?」

「え? は、はい……な、何も……無いです」



 当然昨晩のことを明日香は知らない。あれは二人だけの秘密にしておいたほうが良いだろう。



「ふ~ん……まぁいいけど……」



 二人の対応に少し不満げだが明日香はそれ以上触れなかった。こういうサバサバしたところが明日香らしい。



「もう何時間も馬に乗りっぱなしだし疲れちゃった。休憩はまだかしら……」



 明日香は文句を言い始めた。確かにナオキもそろそろ眠気と疲れと痛みが限界だった。



「もう少し行ったところに湖があるからそこで休憩だよ。それまで頑張ろう明日香さん」



 いつの間にか八京もナオキ達の近くに来ていた。出発してからは軍の上官と話していて全然絡んでいなかったのだが、どうやら話は終わったらしい。



「八京さん、ずっと何話してたんですかぁ? 私達まだ乗馬に慣れてないんだし少しはこっちのことも気にしてくださいよぉ」



 早速明日香は八京に話しかけた。この分かりやすさ、流石明日香だ。



「ゴメンゴメン。これからのスケジュールの確認で時間がかかっちゃって。でももう終わったから移動中は一緒だよ」

「やったぁ、じゃあ私、八京さんの隣ね」



 八京の隣にいたナオキを無理やり押しのけ明日香は八京の隣を陣取る。



「おい、明日香危ないだろ。気をつけろよ」

「別にナオキ自身が動くわけじゃないんだから大丈夫でしょ。アンタより馬のほうがお利口さんだから素直に移動してくれたわ」

「まったく……相変わらずの憎まれ口。もうちょっと可愛げがあってもバチは当たらないぞ」



 明日香の態度に思わず小言が出てしまった。



「何? ナオキ、言いたいことがあるならはっきり喋りなさいよ!」



 明日香が凄みを訊かせる。

 これには流石に八京が割って入った。



「まぁまぁ。二人とも、先は長いんだから仲良く行こうよ。ね?」

「は~い。以後気をつけまーす」



 八京に注意され渋々明日香は従った。



やれやれ。先が思いやられるぞ……



「――それはそうと八京さん。背中の剣って初めて見たんですけど、普通のヤツより随分大きくないですか?」



 明日香は八京の剣が気になっているようだ。確かにかなり大きくて黒い。漆黒というべきか。作りもかなり凝っている。



「これは特別なんだ。今まで修理に出ていたのがやっと返ってきて。今回はコイツの感覚を取り戻そうと思ってね」

「そうなんですか。修理って言うと、やっぱり前回のドラゴン退治の時ですか?」

「うん。この剣は珍しい金属で出来ていて中々刃こぼれもしないんだけど、流石ドラゴン。鱗が異常に硬くって……折れはしなかったけど傷だらけで。職人さんが数か月かけてやっと治してくれたんだ」

「そんなに凄い剣なんですか!? やっぱり八京さんくらいになると持ってるものも違ってくるんですね。オレも自分だけの武器が早くほしいな」

「ナオキなんて武器を選ぶ前に魔物をしっかり退治できるようになりなさいよ。先ずはそこからでしょ」



 すかさず明日香から鋭いツッコミが入る。



「ま、まぁそうなんだけどさ。やっぱり自分だけのオリジナルな武器って男としては憧れる訳よ。オレ、魔法が使えない分そこはこだわっていきたいんだよね」

「別にこだわるなとは言わないけど、宝の持ち腐れにならないようにしなさいよ。ねぇルカちゃん」

「え? え~っと……せ、センパイはい、いつも、が、頑張ってるから……だ、大丈夫だと思います……」



 ルカの言葉が有難かった。だが、やはり明日香相手だと話がぎこちなくなっている。けどいずれそれも治っていくだろう。



「へぇ……ルカちゃん随分とナオキのこと褒めるじゃない? ひょっとしてナオキのこと…………」



 明日香が妙な勘繰りを入れてくる。その瞬間ルカは顔を真っ赤にし、片手をブンブン左右に振りながら。



「えっ!? い、イヤイヤイヤイヤイヤ……ち、ち、ち、違いますよ。べ、べ、べ、べ、別にな、何でもないですよ。あ、明日香さん、へ、へ、へ、変なこと言わないでくださいよ!」



 ルカは必死にフォローしようとするがその姿が却って怪しく見えた。



「ルカちゃん案外可愛いとこあるじゃない」



 尚も明日香はルカの耳元へ顔を近づけて小声で何かささやいている。その言葉にルカの顔は茹で上がったタコのごとく耳まで赤くした。だが声が小さすぎてナオキや八京には聞こえなかった。
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