異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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帰還

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パチンッ!



 ナオキの頬に強烈な痛みが走った。

 ナオキの姿を見た瞬間、明日香が近づき張り手をしたのだ。明日香の後ろにはルカが涙を流していた。



帰って早々これかよ……



 幸いにもゾーラにやられた怪我は八京の回復魔法でほぼ完治していた。だが、もしかしたらもう一度八京に頼むことになるかも知れない。



「もう! 今までどこ行ってたのよ! 心配したじゃない!」



 キツイ口調とは裏腹に明日香は目に涙を滲ませていた。



「え~っと……」



 正直もっと怒られると思っていたが、以外にも張り手一発だったので少々拍子抜けてしまった。



「心配かけてごめん」

「まったくよ! アンタ、私たちがどれだけ心配したと思ってるのよ!」



 親に叱られる子供のような気分だ。ナオキは出来の悪い子供らしい。



「色々あってさ。その……明日香もルカちゃんも本当ごめん」



 二人に向ってナオキは頭を下げた。



「セ、センパイ返ってきてくれてホント良かったです。わ、私心配で」

「ルカちゃん」



 ルカはナオキのために泣いている。そんな姿を見てナオキは嬉しくもあり申し訳ない気持ちもあり何とも言えなかった。



「二人とも、ナオキ君も疲れてるからそれくらいにして、とりあえず座ろうよ。ナオキ君、食事持ってきたよ。ここで食べるといい」



 八京が食事を持ってやってきた。昼から何も食べていなかったのでもう腹はペコペコだった。そういえばレイやクーもガーも何か食べただろうか……



「分かりました。そうします。っとその前にちょっとトイレに行ってきます」



 八京たちにそう言ってナオキはテントを出た。だが向かったのはトイレではなく、ナオキが帰ってきた方向だった。レイに合図を送るためだ。



できればこっちの色は使いたくなかったな



 赤い閃光灯を握りレイがいるであろう方向に向けてナオキは光を送った。その光はあまりのも薄かったので、レイに気付いてもらえるか不安だった。だが、少しして森の奥から黄色い光が返ってきた。レイだ。どうやら上手く伝わったらしい。



これでプランβに変更だ



 改めてナオキはこれからのプランを頭の中で巡らせ、気が重くなすのを感じた。そして明日香たちの元へ戻るため踵を返そうとした。その時――



「よぉ。ノコノコ返ってきたな」



 聞き覚えのある声だった。その声を聞いた途端、ナオキの身体は硬直した。



「あれだけのことをしといてよく帰ってこれたもんだな」



 ゆっくり声の方を向くとソコにはゾーラが立っていた。ゾーラの周りには知った顔が数人いる。ゴブリンのショーにいた面々だ。



ヤバい、さっきの見られたか?



 レイへのメッセージが見つかったのではないかと言う焦りからナオキは何も言えなかった。



「どうしたんだよ。まさかまた俺を倒そうってんじゃないだろうな?」



 ゾーラは苦虫を嚙みつぶしたように顔をしかめながら言った。



「い、いやそんなことしないです」



もうオレの前であんなことしなければ――



 とは言わなかった。



「そうかい。そいつは良かった。あの後俺たちは上官にこっぴどく叱られるわ、これから罰が出るわでまったくついてねぇぜ」

「そ、そうなんですね」



自業自得だろ



 とも言わなかった。



「そんなに構えんなよ。もうこっちからニイチャンにちょっかい出すことはねぇ。上から言われてんだ」

「は、はぁ」



 そいつは良かった。



「だがよ、一つだけ言っとく」



 ゾーラはナオキの耳元に顔を近づけた。



「今回の事、ゼッテェ忘れねぇからな。覚えとけよ」



 瞬間、ナオキは背筋を凍らせた。

 声はとても小さかったが、怒気と殺意が感じられた。ゾーラは間違いなくナオキを恨んでいる。そう確信するには十分すぎるほどのものが込められていた。



「じゃあ。またな」



 そう言い残し、ゾーラは仲間たちと歩いて行った。



冗談じゃない。メチャメチャ怒ってんじゃないか。あんなのともう関わりたくないぞ。



 どうやらレイへのメッセージは見られずにすんだようだ。だが、厄介な敵を作ったことは間違いない。ナオキはこれからのことを考えて眩暈がした。



 早く戻ろう。取り合えず飯を食べてプランβを実行だ



 ナオキは明日香たちがいるテントへ向かい歩き出した。その足取りは酷く重かった。

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