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邪魔な誘い
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基地に入ってすぐの場所に一人、ナオキはいた。基地で外に出ている兵士は無く、テントの明かりもまばらだった。
明日香とルカは先ほどの場所で人目に付かないように隠してきた。念には念をということでレイが二人に睡眠の魔法を使った。これで3時間は起きないらしい。
まったく……この世界には便利な魔法があるな……
ナオキはそう思っていたが、レイに言わせると睡眠魔法はそう簡単なものでもないらしい。何でも相手が興奮状態にあると魔法にはかからず、普段の状態でも魔法の効き目に個人差が出てしまうそうだ。だから今回のように意識を失った相手をより深い眠りに落とすために使うのが有効的だとか。
まぁ、魔法が使えないオレには関係ないか。それより、ここからが本番だ
そう、ベルの救出はここからが本番だ。ナオキは作戦の流れを頭の中で整理した。
先ず明日香とルカを人目に付かない場所へ移動させ、眠らせる。これはすでに完了している。
ナオキは前もって、二人と基地を出る際、トイレに行くと言って明日香たちと離れ、その時に八京の元へ行った。そこで八京に『明日は早いから明日香とルカは寝る』と予め伝えていたのだ。そうすることで、二人のテントに明かりが付いていなくても不審がられない。
次はこれから先のプランだ。今からおよそ30分後、基地が更に静かになったころを見計らい、レイがベルの囚われているテントへ行き、救出する。勿論、見張りがいるだろうが、レイの実力なら問題ないだろう。見事、ベルを救出しそのまま人目に付かずに逃げきれればプランβは完了だ。だが、どこかでレイが見つかり、戦闘になった場合が厄介だ。おそらくレイ一人なら逃げることは可能だろう。だが、ベルを優先しながらとなると難易度は跳ね上がる。その時、ナオキがどのように動くかがカギとなり、ナオキ自身、今後を大きく左右することとなる。
大丈夫……きっとうまくいく……
そう言い聞かせながらナオキは自分のテントへ歩いていると、後ろに人の気配がした。
「なんだ、ニイチャン。寝れねぇのか……」
ゾーラと共に殺戮ショーを楽しんでいた人物。名は確か……ルイスだ。これから作戦が行われるのに面倒な奴に見つかった。
「あ、はい。明日からの訓練のことを考えてたら寝付けなくって……でももう寝ようと思います」
話を早く終わらせないと……
はやる気持ちを悟られないようにグッと気持ちを抑えた。
「そうかい。じゃあ寝る前にちょっと付き合ってくれよ」
ッ!?
想定外の言葉だった。ナオキのお陰で散々な目にあったヤツだ。それなのに……何をしでかすか分かったもんじゃない。
「いや、明日も早いんで今日のところは遠慮しときますよ」
そう、今日だけは……
「そう言うなよ。実はさ、上からはこっぴどく叱られるわ、ゾーラからは殴られるわで散々だったんだ。少しくらい俺の愚痴に付き合ってくれてもバチは当たらねぇだろ?」
ルイスの顔は確かに腫れていた。ゾーラに殴られたのだろうか。だとしたらナオキにも責任がある――訳が無い。そもそもナオキを誘ったのはゾーラだ、それも強制的に、そしてあの出来事をナオキは良しとしていない。そんな中での罰や同僚の理不尽な暴力など、ナオキには知ったことではなかった。少し前のナオキならいざ知らず、今はそう思えた。
「あの。殴られたことは気の毒に思いますけど、オレはもうアナタ達と関わらないようにジュダさんから言われてますし(ウソだけど)、とにかく今日は自分のテントへ戻りますよ」
もう話すことは無い。そう言う態度でナオキは踵を返し、歩き出そうとした……
「そこを何とか頼むよ! 本当にちょっとでいいんだ。5分……いや、3分でいい、俺に時間をくれ」
ナオキの腰の辺りにルイスはしがみつき、今にも泣きそうな声で、いや半分泣きながらルイスは言った。
「ちょっ……離してくださいよ! 何でそこまでするんですか。オレのことはほっといてくださいよ」
しがみつくルイスの顔を引きはがそうとするが、ルイスは離れない。どこにそんな力があるのだろう……
「頼むよ! 仲間に見放されて俺、一人になっちまった。ニイチャンだけでも俺の話を聞いてくれよ」
何だかこの男が酷く気の毒に感じてしまった。3分……本当にそれだけ話を聞いてことがすむならそちらのほうが効率的かもしれない。
「……ホントに3分だけですよ? それ以上は話聞きませんから……」
渋々ナオキは了承した。それを聞いたルイスは女神でも見るように笑顔になった。
「もちろんだ! 時間はとらせねぇ。でもここじゃ落ち着いて話せねぇな。向こうに行こうぜ」
まるで友達を誘うかのようにルイスは陽気にナオキの手を引き始めた。
……やれやれ……さっさと終わらせないとな……
引かれるままナオキはルイスに付いて行った。
明日香とルカは先ほどの場所で人目に付かないように隠してきた。念には念をということでレイが二人に睡眠の魔法を使った。これで3時間は起きないらしい。
まったく……この世界には便利な魔法があるな……
ナオキはそう思っていたが、レイに言わせると睡眠魔法はそう簡単なものでもないらしい。何でも相手が興奮状態にあると魔法にはかからず、普段の状態でも魔法の効き目に個人差が出てしまうそうだ。だから今回のように意識を失った相手をより深い眠りに落とすために使うのが有効的だとか。
まぁ、魔法が使えないオレには関係ないか。それより、ここからが本番だ
そう、ベルの救出はここからが本番だ。ナオキは作戦の流れを頭の中で整理した。
先ず明日香とルカを人目に付かない場所へ移動させ、眠らせる。これはすでに完了している。
ナオキは前もって、二人と基地を出る際、トイレに行くと言って明日香たちと離れ、その時に八京の元へ行った。そこで八京に『明日は早いから明日香とルカは寝る』と予め伝えていたのだ。そうすることで、二人のテントに明かりが付いていなくても不審がられない。
次はこれから先のプランだ。今からおよそ30分後、基地が更に静かになったころを見計らい、レイがベルの囚われているテントへ行き、救出する。勿論、見張りがいるだろうが、レイの実力なら問題ないだろう。見事、ベルを救出しそのまま人目に付かずに逃げきれればプランβは完了だ。だが、どこかでレイが見つかり、戦闘になった場合が厄介だ。おそらくレイ一人なら逃げることは可能だろう。だが、ベルを優先しながらとなると難易度は跳ね上がる。その時、ナオキがどのように動くかがカギとなり、ナオキ自身、今後を大きく左右することとなる。
大丈夫……きっとうまくいく……
そう言い聞かせながらナオキは自分のテントへ歩いていると、後ろに人の気配がした。
「なんだ、ニイチャン。寝れねぇのか……」
ゾーラと共に殺戮ショーを楽しんでいた人物。名は確か……ルイスだ。これから作戦が行われるのに面倒な奴に見つかった。
「あ、はい。明日からの訓練のことを考えてたら寝付けなくって……でももう寝ようと思います」
話を早く終わらせないと……
はやる気持ちを悟られないようにグッと気持ちを抑えた。
「そうかい。じゃあ寝る前にちょっと付き合ってくれよ」
ッ!?
想定外の言葉だった。ナオキのお陰で散々な目にあったヤツだ。それなのに……何をしでかすか分かったもんじゃない。
「いや、明日も早いんで今日のところは遠慮しときますよ」
そう、今日だけは……
「そう言うなよ。実はさ、上からはこっぴどく叱られるわ、ゾーラからは殴られるわで散々だったんだ。少しくらい俺の愚痴に付き合ってくれてもバチは当たらねぇだろ?」
ルイスの顔は確かに腫れていた。ゾーラに殴られたのだろうか。だとしたらナオキにも責任がある――訳が無い。そもそもナオキを誘ったのはゾーラだ、それも強制的に、そしてあの出来事をナオキは良しとしていない。そんな中での罰や同僚の理不尽な暴力など、ナオキには知ったことではなかった。少し前のナオキならいざ知らず、今はそう思えた。
「あの。殴られたことは気の毒に思いますけど、オレはもうアナタ達と関わらないようにジュダさんから言われてますし(ウソだけど)、とにかく今日は自分のテントへ戻りますよ」
もう話すことは無い。そう言う態度でナオキは踵を返し、歩き出そうとした……
「そこを何とか頼むよ! 本当にちょっとでいいんだ。5分……いや、3分でいい、俺に時間をくれ」
ナオキの腰の辺りにルイスはしがみつき、今にも泣きそうな声で、いや半分泣きながらルイスは言った。
「ちょっ……離してくださいよ! 何でそこまでするんですか。オレのことはほっといてくださいよ」
しがみつくルイスの顔を引きはがそうとするが、ルイスは離れない。どこにそんな力があるのだろう……
「頼むよ! 仲間に見放されて俺、一人になっちまった。ニイチャンだけでも俺の話を聞いてくれよ」
何だかこの男が酷く気の毒に感じてしまった。3分……本当にそれだけ話を聞いてことがすむならそちらのほうが効率的かもしれない。
「……ホントに3分だけですよ? それ以上は話聞きませんから……」
渋々ナオキは了承した。それを聞いたルイスは女神でも見るように笑顔になった。
「もちろんだ! 時間はとらせねぇ。でもここじゃ落ち着いて話せねぇな。向こうに行こうぜ」
まるで友達を誘うかのようにルイスは陽気にナオキの手を引き始めた。
……やれやれ……さっさと終わらせないとな……
引かれるままナオキはルイスに付いて行った。
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