異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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無駄な戦い

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――な……何でこうなった――



 剣を握りながらナオキは今の状況を整理した。

 先ず、ルイスの向かった先にはゾーラともう一人が待ち構えていた。

 次に、ルイスはゾーラに命令され、ナオキをここまでおびき寄せたのだ。

 そして、ゾーラ・ルイス・もう一人(名前は知らない。もうモブ男と呼ぼう)は今まさにナオキに仕返しをしようとしている。



「る……ルイスさん……もう約束の3分は過ぎてると思うんで、オレは戻りたいんですけど」

「残念だなニイチャン。ルイスとの約束は3分だったかもしれないが、新規で俺の都合に付き合ってくれよ。勿論、嫌とは言わせねぇけどな」



 ルイスが喋るより早く、ゾーラが言った。



「に、ニイチャンには悪いけど、そういうわけだから……」



いったいどういうわけだ



 おそらくルイスが必死だったのはこれ以上ゾーラに殴られないためだろう。そのためにあんなにしつこくナオキを誘ったのだ。



 少し考えれば予想できたことだ。作戦のことで頭がいっぱいだったとはいえ、ナオキは後悔した。



 ハァ~ッとため息をつき、ナオキは心を落ち着かせた。ここで頭に血が上ってより時間をくってしまうことは避けたい。かと言ってこの場を逃げればレイが見つかってしまう危険もある。



……やるしかないか、それも出来るだけ早く……



 多少の焦りを感じながらナオキは決意した。



「またやられても知りませんよ?」



 挑発するようにナオキは言った。



「あん時は酔ってたし、油断してたんだ。だが、今度はそうはいかねぇ」



はい、フラグ来たー



「なんだ、もう震えてるのか? だらしねぇやつだ」



 笑いを堪えながら小さく震えていると、ゾーラは勘違いをした。



「それともアレか? これからエルフを救い出そうとしてるのに俺たちに捕まったもんだから焦ってんのか?」



「!? なんでそれを……しまった」



 思わず反応してしまった。これではゾーラが言ったことを肯定したも同然だ。



「知りたいか? ニイチャンがジュダさんに頼んでエルフを見に行ったろ? それを見たヤツがいてな。俺もニイチャンの後を着けたわけよ。で、その後少しして、ニイチャンが森の方へ何か合図を送ってるじゃねぇか。アレ、エルフの仲間か何かだろ? 何か面白れぇことが起きそうだからあえてあの時知らない振りをしたのさ」



 迂闊だった。ゾーラの存在にもっと配慮しておくべきだった。



「今頃お仲間がエルフのいたトコに行ってるのか? だが残念だったな。ソコにはもうエルフはいねえ」

「えっ?」

「当たり前だろう。仲間が救出に来るって解ってるのにわざわざソコに残しておくことはねぇ。もう別のとこに移動してあるぜ」

「っ!」

「それとな、折角追加で向こうから来てくれんだ、こっちもそれなりに用意をしてもてなさないといけねえだろ?」



 ゾーラは不敵な笑みを浮かべている。



「な、なんだって?」

「わからねぇか? こっちで最高の戦力、ウチの上官とニイチャンの先輩がお出迎えだよ」



八京さん!!



 目の前が真っ暗になる感覚にとらわれ、足元がふらついた。



「そ、そんな……」

「ウソだと思うか? だが事実だ。本来なら助けに来たエルフとニイチャン、二人同時に捕らえてニイチャンの責任を追及するって話だったがな、それじゃあ俺の気がすまねぇ。この俺が直々にニイチャンに罰を与えてやろうって訳よ」

「随分横暴な気がしますが……」

「理由なんて何でもいいんだ、ただ、ニイチャンを痛い目にあわせて後悔させてやれりゃあそれでいい」

「オレは後悔しませんよ」

「はん、言ってろ。ニイチャンがどういう経緯でエルフなんかと繋がったか知らねぇがもう言い逃れは出来ねぇ。覚悟しな」



 ゾーラはナオキ目掛けて走り出した。それに続いてルイスとモブ男もナオキに襲い掛かった。



来た……



 ナオキは呼吸を整えゾーラたちを待ち構えた。

 ゾーラはナオキの頭目掛けて剣を振り下ろした。ナオキは横に避けたがルイスがナオキの動きを読んで切りかかる。ルイスの剣をナオキは自身の剣で受け止めたが、すかさずモブ男がナオキを襲う。ナオキは後ろに飛び、3人の攻撃を回避した。だが、ゾーラたちは休む間もなくナオキに攻撃を繰り出した。



 ゾーラたちのどの攻撃にも殺気が込められ、ナオキを痛い目に合わせるというレベルではなかった。『殺しても構わない』そんな感情が溢れ出る攻撃をゾーラたちは繰り出していた。しかし、どの攻撃もナオキに当たることは無かった。



 この世界に来て八京の訓練を受け、先ほど僅かだがレイと剣を交えたナオキにとってはゾーラたちの動きはとても遅くその全ての攻撃を躱すことは容易いモノだった。



「……くっ……な、なんで……」



 攻撃の当たらないゾーラは苛立ち、その攻撃は徐々に雑なものになった。



凄い……3人の攻撃が当たる気がしない……これなら何とかなりそうだ



 ゾーラたちとの力の差がよりナオキをより冷静にさせ、自身の動きを無駄のないモノにさせた。ゾーラのソレとは対極な者だった。



「ゾーラ、全然当たらねぇ……どうするんだよ……」



 痺れをきらしたモブ男が泣き言を漏らした。



「うるせぇ! 泣き言言う暇があったらもっと動け!」



 ゾーラの苛立ちも最高潮に達しようとしていた。



「そろそろオレの攻撃の時間ですよ」



 ナオキはゾーラの攻撃のスキを付き、ミゾオチに膝を入れた。そして、後ろで振りかぶっていたルイスに向って裏拳を顔面に入れ、最後にモブ男に剣を振るフェイントを入れた後ハイキックを送り、全員を倒した。



オレやべぇ。今まで全然実感できなかったけどこんなに強かったんだ……



 ナオキ自身、こんなに上手くいくとは思ってもみなかった。



「ゾーラ、コイツ強すぎる。やっぱりリスタ相手は無理だったんだ」



 ルイスが殴られた顔面を押さえながら言った。



「クソ……こんなはずじゃ……」



 ゾーラは苦しそうにミゾオチを押さえている。ソコには悔しさと憎しみが込められている。



「まだやります? オレはもう終わりにしてもいいんですよ?」



むしろ終わってくれ



「なぁ、もうやめようぜ? どうせこいつには上から罰があるんだ、それでいいじゃねぇか」



 ルイスが更に言う。忘れていたが最早ナオキには何かしらのペナルティが下るだろう。



「うぅ……」

「なぁゾーラ……」



 モブ男もゾーラを諦めさせようとしている。



「……ウルセェ……」



 ゾーラは小声で呟いた。



「え?」



 ナオキが思わず聞き返した。



「うるせぇうるせぇ! 上からの罰とかそんなのどうでもいいんだ! 俺はコイツが気に入らねぇそれだけだ! もう容赦しねぇ!」



 ゾーラはナオキ目掛けて手を伸ばした。



「や、やめろゾーラ!」



 なんだ?



「喰らえファイヤーボール!」
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