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魔人の提案
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エドガーさんが魔人……間違いない……でもどうして……
ナオキの頭の中はパニックだ。
頭に二本の角、尖った耳、グレーの皮膚。どれも人間ではありえないが、エドガーだと認識するには十分すぎる顔だった。
「なぁナオキ、あの魔人知ってるのか?」
ナオキがエドガーに話し掛けたことでレイが訊いてきた。
「あぁ……なんとなくね……」
「何だよ何となくって。相手は魔人だぞ? それに数か月前までこっちの世界にいなかったお前がどうして知るんだよ!?」
苛立ったレイが言う。当然だ、今がどんな状況なのか分からないのだから。
「八京さんの知り合いなんだ! それもあの時は人間の姿だったし……」
「アイツの!? どういうことだよ? 一体どんな関係だったんだ?」
「オレに分かる訳ないだろ! とにかく八京さんと知り合いだった。それ以上のことは分からないんだよ!」
レイに問い詰められナオキは叫ぶように言った。色々訊きたいのはナオキも同じだからだ。
「す、すまない。ついアツくなっちまった……」
「いや、オレこそゴメン。でも本当に何も知らないんだ」
「お取込み中の所すいません。私も要件があるのですがねぇ」
「!?」
レイと話しているうちにエドガーとの距離はスグそこになっていた。
周りのエルフたちはいつエドガーに斬りかかってもおかしく無かった。
「失礼。別にアナタ方とコトを荒立てるつもりはありませんよ。ですがそれもアナタ方の出方次第ですがね」
エドガーは手を前に出し言った。
「で、ではアンタから出ているオーラを止めてもらいたい。こっちはいつ攻撃されるか分からないんだ。せめてそのくらいの意思表示はしてくれてもいいだろう?」
クルーガーがエドガーに言った。その声には相手の機嫌を損なわないようにゆっくりと、かつハッキリと伝わるように慎重さを感じるものだった。
「おやおや、私としたことが。失礼しました。アナタ方に私という存在がどんなものかを理解してもらうために出していたのです。結果としてアナタ方は私に手を出さなかった。賢明な判断です」
出さなかったのではなく出せなかったのだ。あまりにも力の差がありすぎてこっちから手を出しても勝ち目がないのは明白だったから。ならばナオキ達にやれることは3つだった。
1つ。殺されるのを覚悟で避難者たちの時間を稼ぐ。
2つ。全員でこの場を逃げる。
3つ。エドガーの目的を探り、その内容に賭ける。
勿論、ナオキ達は3を選んだ。誰も死なずに済む可能性が僅かでもあるならそちらを優先するべきだ。
エドガーは自らが出していたオーラを沈めた。途端に体中が纏っていた緊張が幾分楽になった気がする。
「か、感謝する。だが、それでも我々が警戒することを了承してほしい。こちらからの要望ばかりで申し訳ないが、アンタがその気になれば我々など一瞬で殺すことが出来るだろう?」
「私はかまいませんよ。私を認めているという点では当然の対応ですから」
今までのエドガーの言葉遣いといい物腰と言い、以前に会った時と変わりがなかった。ナオキ自身、魔人とはもっと自分勝手で傲慢で殺し好きだと思っていた。
「重ね重ね感謝する。では本題だが……アンタの目的は何だ? 何でこんなエルフの村なんかに来た」
それが最大の問題だ。何故エルフの村に来る必要があるのか。ナオキには一つ心当たりがあった。
「それはですね、そちらにいる青年ですよ」
やっぱりそうだ。
エドガーに指刺されたナオキは自分の予想が当たったことで納得半分、外れてほしいという願望が外れてショックが半分の何といもえない感情が渦巻いた。
「なぜナオキ君を!?」
「それは青年自身、心当たりがあるのではないですか?」
エドガーはあえて答えを出さない。ナオキ達が困る様を楽しんでいるようだ。
「多分……八京さん……ですよね?」
「その通り。ではその先には何があると思いますか?」
「えっと……八京さんはオレの師匠で、その八京さんが死んで、オレがここまで逃げて……あ!」
ナオキの中で何かが閃いた。
「そうです! アナタはあそこから逃げてきた。そこが重要なんですよ」
「どういうことだ!? ナオキ。お前が逃げてきたから何なんだ」
「オレが今人間に見つからないのは魔石が付いてないからなんだ……」
「魔石? そんなもん付いてなくて当たり前だろ?」
「違うんだ。召喚された人間は……リスタは……皆魔石を埋め込まれるんだ……」
「え!? 一体何のためにそんな……」
「リスタを逃がさないためだ。今回のオレみたいに逃げても居場所を突き止めて捕獲できるようにしてるんだ」
「なっ……」
「けど、オレには魔石が付いていない。付けられる前にレイたちと逃げた。だから人間たちはオレを見つけられないでいるんだ」
「素晴らしい! そうです。あの八京が望んだ状況、『リスタの自由』それをアナタは図らずとも手に入れたのです」
「や、八京さんが望んだ?」
「そうです。今のアナタは何でもできます。何処へでも行けます。それを止める人間は誰もいない。八京はそれが欲しかったのです」
「でも……それがオレに何の関係が……」
「ソレを確認するために私がアナタの元へ来た理由ですよ」
「え?」
訳が分からない
「私は以前から八京さんと交流がありましてね。でもそれは私個人が望んだことではないのです」
「は?」
「私は『あるお方』の命で八京さんと連絡をとり、八京さんに協力していたのです」
「一体誰がそんな命令を――」
「魔王様ですよ」
「ま……」
「魔王様は八京さんをとても気に入りましてね。そんな八京さんのサポートをするように私が仰せつかったわけなんですよ」
「そんな……」
話がデカすぎる
「ですが、そんな八京さんも死んでしまった。魔王様のお気に入りがですよ! だが魔王様は次の人間に興味を持たれた……アナタですよ。ナオキさん!」
「オレ!?」
「そうです。リスターターとしてこの世界に召喚され、魔石の縛りを受けずに八京の意志を継ぐことができる者。ナオキさん。アナタには魔王様と会っていただきたい」
「はぁ!?」
ナオキの頭の中はパニックだ。
頭に二本の角、尖った耳、グレーの皮膚。どれも人間ではありえないが、エドガーだと認識するには十分すぎる顔だった。
「なぁナオキ、あの魔人知ってるのか?」
ナオキがエドガーに話し掛けたことでレイが訊いてきた。
「あぁ……なんとなくね……」
「何だよ何となくって。相手は魔人だぞ? それに数か月前までこっちの世界にいなかったお前がどうして知るんだよ!?」
苛立ったレイが言う。当然だ、今がどんな状況なのか分からないのだから。
「八京さんの知り合いなんだ! それもあの時は人間の姿だったし……」
「アイツの!? どういうことだよ? 一体どんな関係だったんだ?」
「オレに分かる訳ないだろ! とにかく八京さんと知り合いだった。それ以上のことは分からないんだよ!」
レイに問い詰められナオキは叫ぶように言った。色々訊きたいのはナオキも同じだからだ。
「す、すまない。ついアツくなっちまった……」
「いや、オレこそゴメン。でも本当に何も知らないんだ」
「お取込み中の所すいません。私も要件があるのですがねぇ」
「!?」
レイと話しているうちにエドガーとの距離はスグそこになっていた。
周りのエルフたちはいつエドガーに斬りかかってもおかしく無かった。
「失礼。別にアナタ方とコトを荒立てるつもりはありませんよ。ですがそれもアナタ方の出方次第ですがね」
エドガーは手を前に出し言った。
「で、ではアンタから出ているオーラを止めてもらいたい。こっちはいつ攻撃されるか分からないんだ。せめてそのくらいの意思表示はしてくれてもいいだろう?」
クルーガーがエドガーに言った。その声には相手の機嫌を損なわないようにゆっくりと、かつハッキリと伝わるように慎重さを感じるものだった。
「おやおや、私としたことが。失礼しました。アナタ方に私という存在がどんなものかを理解してもらうために出していたのです。結果としてアナタ方は私に手を出さなかった。賢明な判断です」
出さなかったのではなく出せなかったのだ。あまりにも力の差がありすぎてこっちから手を出しても勝ち目がないのは明白だったから。ならばナオキ達にやれることは3つだった。
1つ。殺されるのを覚悟で避難者たちの時間を稼ぐ。
2つ。全員でこの場を逃げる。
3つ。エドガーの目的を探り、その内容に賭ける。
勿論、ナオキ達は3を選んだ。誰も死なずに済む可能性が僅かでもあるならそちらを優先するべきだ。
エドガーは自らが出していたオーラを沈めた。途端に体中が纏っていた緊張が幾分楽になった気がする。
「か、感謝する。だが、それでも我々が警戒することを了承してほしい。こちらからの要望ばかりで申し訳ないが、アンタがその気になれば我々など一瞬で殺すことが出来るだろう?」
「私はかまいませんよ。私を認めているという点では当然の対応ですから」
今までのエドガーの言葉遣いといい物腰と言い、以前に会った時と変わりがなかった。ナオキ自身、魔人とはもっと自分勝手で傲慢で殺し好きだと思っていた。
「重ね重ね感謝する。では本題だが……アンタの目的は何だ? 何でこんなエルフの村なんかに来た」
それが最大の問題だ。何故エルフの村に来る必要があるのか。ナオキには一つ心当たりがあった。
「それはですね、そちらにいる青年ですよ」
やっぱりそうだ。
エドガーに指刺されたナオキは自分の予想が当たったことで納得半分、外れてほしいという願望が外れてショックが半分の何といもえない感情が渦巻いた。
「なぜナオキ君を!?」
「それは青年自身、心当たりがあるのではないですか?」
エドガーはあえて答えを出さない。ナオキ達が困る様を楽しんでいるようだ。
「多分……八京さん……ですよね?」
「その通り。ではその先には何があると思いますか?」
「えっと……八京さんはオレの師匠で、その八京さんが死んで、オレがここまで逃げて……あ!」
ナオキの中で何かが閃いた。
「そうです! アナタはあそこから逃げてきた。そこが重要なんですよ」
「どういうことだ!? ナオキ。お前が逃げてきたから何なんだ」
「オレが今人間に見つからないのは魔石が付いてないからなんだ……」
「魔石? そんなもん付いてなくて当たり前だろ?」
「違うんだ。召喚された人間は……リスタは……皆魔石を埋め込まれるんだ……」
「え!? 一体何のためにそんな……」
「リスタを逃がさないためだ。今回のオレみたいに逃げても居場所を突き止めて捕獲できるようにしてるんだ」
「なっ……」
「けど、オレには魔石が付いていない。付けられる前にレイたちと逃げた。だから人間たちはオレを見つけられないでいるんだ」
「素晴らしい! そうです。あの八京が望んだ状況、『リスタの自由』それをアナタは図らずとも手に入れたのです」
「や、八京さんが望んだ?」
「そうです。今のアナタは何でもできます。何処へでも行けます。それを止める人間は誰もいない。八京はそれが欲しかったのです」
「でも……それがオレに何の関係が……」
「ソレを確認するために私がアナタの元へ来た理由ですよ」
「え?」
訳が分からない
「私は以前から八京さんと交流がありましてね。でもそれは私個人が望んだことではないのです」
「は?」
「私は『あるお方』の命で八京さんと連絡をとり、八京さんに協力していたのです」
「一体誰がそんな命令を――」
「魔王様ですよ」
「ま……」
「魔王様は八京さんをとても気に入りましてね。そんな八京さんのサポートをするように私が仰せつかったわけなんですよ」
「そんな……」
話がデカすぎる
「ですが、そんな八京さんも死んでしまった。魔王様のお気に入りがですよ! だが魔王様は次の人間に興味を持たれた……アナタですよ。ナオキさん!」
「オレ!?」
「そうです。リスターターとしてこの世界に召喚され、魔石の縛りを受けずに八京の意志を継ぐことができる者。ナオキさん。アナタには魔王様と会っていただきたい」
「はぁ!?」
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