異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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魔人の正体

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    「魔王クラス!?」

 「はい。村まであと20キロほどの所まで迫ってきてます」

 「くっ、そんなに近くまで……何故もっと早く気付かなかった?」

 「それが、先ほど突然現れて……今近隣の警備をしている者たちをかき集めています」

 「で、魔人の数は?」

 「確認できるのは一匹です」

 「一匹……妙だな……」



 クルーガーは神妙な面持ちで考え込んだ。そして――



 「よし。お前は戦えるもの以外の全ての者を避難させろ」

 「ハイ!」



 指示を受けた青年は素早く部屋を後にした。



 「レイ、私たちも魔人の元へ向かうぞ」

 「おう! ナオキ、これは俺たちエルフの問題だ。ベルやアイリと一緒に避難してくれ」

 「そういうわけにはいかない! オレだってここで世話になってるんだ。一緒に戦う」

 「駄目だ。相手は魔王クラス。殺される可能性は十二分にある」

 「それでもだ。オレはこの村の人たちに良くしてもらった。ここでその恩を返さないでいつ返すんだ。頼むレイ、オレを連れて行ってくれ」



 レイはナオキの眼を見つめた。ナオキの覚悟を確かめているようだった。



 「ナオキ……わかった。だが、お前を守ることは出来ないぞ?」

 「あぁ。覚悟の上だ」

 「兄さま私も行きます! 私の回復魔法がきっと役に立ちます」

 

 ベルも志願をした。しかし――



 「お前は駄目だ」



 レイに即却下をされてしまった。



 「何故です!? 私だって死ぬ覚悟はできてます」

 「ベル。お前の回復魔法は貴重だ。お前が最前線にいて真っ先に殺されたら怪我人を誰が治療するんだ?」

 「そ、それは……」



 こういった機転が利くレイは流石だと改めて感じる。



 「お前は一度避難して、怪我をした者の治療をするんだ。分かったな?」

 「……わかりました。でも兄さま、決して無理はしないでください」

 「わかってる。安心しろ」

 「アイリ。君も非難するんだ。近くにクーとガーもいるはずだ」



 ナオキがアイリへ促す。



 「は、はい」

 「間違ってもアイツらが近づかないように頼むぞ」

 「わかりました。あの……ナオキさん……」

 「なに? どうしたの?」

 「その……ちゃんと帰ってきてください」

 「? あぁ。大丈夫だよ。心配しないで」

 「ナオキ行くぞ!」

 「あぁ。じゃあ、行ってくる」



 ナオキとレイは魔人の元へ向かった。







 ――魔人との距離はおよそ150m程。村を出てからはナオキでもわかるくらい魔人のオーラがビリビリと伝わり、今では皮膚が痛いほどだ。



 これが魔人……やっばい……怖い……



 不安と緊張で鳥肌が立っている。



 「ナオキ。お前は一人じゃねぇ。それに、怖くなったら逃げてもいいぞ」

 「じょ、冗談じゃない。誰が逃げるかよ」

 「冗談じゃない。ぶっちゃけ、村に危害が及ばないなら俺だって逃げ出したいくらいだ。けどそうも言ってられないからな」



 珍しくレイの拳が震えている。それほどヤバい相手なんだと実感する。



 「それはオレも同じだ。世話になったこの村を守ってみせる」

 「ナオキ君。頼もしい言葉、本当に感謝するよ」



 ナオキの背後からクルーガーが声を掛けた。



 「でも君は息子の客人だ。君になにかあってはコイツの親として、そして族長としてこれほどの無礼はない。君は自分の身を最優先に考えてくれ」

 「クルーガーさん……でも……」

 「ナオキ。お前がここに立っていることが俺たちエルフを奮い立たせてるんだ。それだけで十分なんだよ」

 「息子の言う通り、君の誠意はここにいる皆に伝わっている。だから無理だけはしないでくれ」

 「……わかりました。クルーガーさんの言う通りにします」



 今のところはだけど……



 「族長、魔人までおよそ100m! そのまま歩いてきます」

 「ヨシ! 全員、戦闘準備!」



 クルーガーの声で一斉に臨戦態勢に入った。魔人が一歩ずつ近づくたびにその禍々しいオーラが皮膚に突き刺さるようだった。



 怖い……でもオレだって戦うんだ。八京さんに助けてもらったこの命、八京さんを失望させない。



 先ほど受け取った『クサナギ』を握りしめいつでも動けるようにナオキは構えた。

 魔人の目的は分からない。だが魔人がいつ攻撃を仕掛けてもいいように全員が緊張し、空気が張り詰めている。魔人は変わらず一歩ずつ近づいてきた。



 ……80m……



 ……70m……



 ……60m……



 ……50m……



 ……40m……



 まだか



 心臓の鼓動がデタラメなビートを刻む。剣を握る手は汗で上手く握れない。



 ……30m……



 魔人の姿がハッキリわかる距離まで来た。その時だった――



 ――えっ?――



 ナオキはこの魔人に見覚えがあった。



 まさか魔人だったのか!?



 「こんな離れたところまで逃げてきたんですか。探しましたよ」



 不意に魔人が喋った。その声はやはり聞き覚えがある。

 間違いない。この魔人はナオキに話し掛けている。



 「な……なにか用ですか? ……エドガーさん」 
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