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第2話
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帰国と同時に告げられた婚約解消から一ヶ月が過ぎた。
今日はイアンとミリィが結婚する日だ。
ミリィのお腹が目立たないうちに結婚式を挙げるとのことで、本来ならば時間を取って行う招待客の吟味・招待状の送付、招待客をもてなす為の料理の手配などの負担を少なくする為に、招待客はイアンとミリィの家族というかなり小規模なものになった。
イアンの家族は、イアンの両親、イアンの兄とその妻である。
少人数なので、挙式する場所はヴォクレール伯爵家の庭園で行われる。
ウエディングドレスはオーダーメイドで一から作った場合、一ヶ月では到底用意することは出来ない為、昔、義母が父と結婚することを夢見て作ったドレスが綺麗な状態で保存されていたのでそれを使うことになった。
そもそもが婚約者がいながら婚約者の義妹と浮気した新郎と姉の婚約者を奪った新婦の結婚式なので、その時点で既に印象が悪く、たとえ仮に大勢の招待客を呼ぼうとしてもお断りする者ばかりで結果的に少人数になっていただろうとセリーヌは思った。
二人が誓いのキスをして永遠の愛を誓い、神父様の立ち合いの下、婚姻届けに両名がサインする。
「これでミリィと夫婦だな!」
「はい! ミリィも嬉しいです!」
サインが入った婚姻届はヴォクレール伯爵家の使用人によって役所に届けられ、ここに夫婦関係が成立した。
(あの婚姻届け、貴族用のものではなく平民用のものを準備しておいたけれど、全く気づかなかったわね。この後の展開は二人にとっては地獄かもしれないけれど、二人はどのみち結婚後平民になるしかない。我ながら性格が悪いとは思うけれど、先にことを起こしたのはあなた達の方よ)
結婚式が終わり、全員で一緒に庭園から応接室に移動する。
応接室では侍女が全員分の紅茶と軽く食べられの茶菓子を用意し、全員にカップを行き渡らせる。
「いやぁ、素晴らしい式でしたな! 美男美女でお似合いの夫婦だ」
「これでイアンも結婚して父親としてホッとしたよ。格上の伯爵家に婿入り出来てイアンは本当に恵まれている。伯爵には感謝だ。これからは親戚ということでよろしくお願いします」
「うむ。こちらこそよろしく頼む」
父親同士で今日の結婚式の感想とこれからの挨拶を交わしている。
(さて、このタイミングで言わせて頂きましょうか。皆様の反応が楽しみですわ)
「お父様。ご歓談中、申し訳ございません。私、どうしてもお伝えしたいことがございまして」
にこやかにイアンの父と話していた時と打って変わって途端に不機嫌な表情になる。
「一体何なんだ。今は子爵と話していて忙しいのだ。空気を読め」
「皆様の今後に関わるお話ですし、今ここでお話したいのです」
「手短に言え」
「では、言わせて頂きますわね。この結婚、皆様はイアン様がヴォクレール伯爵家に婿入りしてきて、ミリィと伯爵家で暮らすと思われておりますよね?」
「何を言ってるんだ? それは当たり前じゃないか!」
真っ先に反論したのはセリーヌの父である。
「私の可愛いミリィが伯爵家の後を継ぐのよ? あんたじゃなくてミリィこそが次期伯爵にふさわしいの」
義母が意地悪な表情で告げる。
「結婚相手を入れ替えただけだろう? どちらも伯爵家の娘だから、ミリィ嬢と結婚してもセリーヌ嬢と結婚してもどちらが家に残るか話し合いが必要なだけで、イアンの境遇は変わらないはず」
「我が家はヴォクレール伯爵家と縁繋がりになれればそれで良いので、結婚相手ががどちらになろうと構わないのだけど……」
子爵夫妻は困惑顔を浮かべている。
「……そうですか。では、お父様にお尋ねしますわ。このヴォクレール伯爵家、元々はどなたのご実家ですの?」
今日はイアンとミリィが結婚する日だ。
ミリィのお腹が目立たないうちに結婚式を挙げるとのことで、本来ならば時間を取って行う招待客の吟味・招待状の送付、招待客をもてなす為の料理の手配などの負担を少なくする為に、招待客はイアンとミリィの家族というかなり小規模なものになった。
イアンの家族は、イアンの両親、イアンの兄とその妻である。
少人数なので、挙式する場所はヴォクレール伯爵家の庭園で行われる。
ウエディングドレスはオーダーメイドで一から作った場合、一ヶ月では到底用意することは出来ない為、昔、義母が父と結婚することを夢見て作ったドレスが綺麗な状態で保存されていたのでそれを使うことになった。
そもそもが婚約者がいながら婚約者の義妹と浮気した新郎と姉の婚約者を奪った新婦の結婚式なので、その時点で既に印象が悪く、たとえ仮に大勢の招待客を呼ぼうとしてもお断りする者ばかりで結果的に少人数になっていただろうとセリーヌは思った。
二人が誓いのキスをして永遠の愛を誓い、神父様の立ち合いの下、婚姻届けに両名がサインする。
「これでミリィと夫婦だな!」
「はい! ミリィも嬉しいです!」
サインが入った婚姻届はヴォクレール伯爵家の使用人によって役所に届けられ、ここに夫婦関係が成立した。
(あの婚姻届け、貴族用のものではなく平民用のものを準備しておいたけれど、全く気づかなかったわね。この後の展開は二人にとっては地獄かもしれないけれど、二人はどのみち結婚後平民になるしかない。我ながら性格が悪いとは思うけれど、先にことを起こしたのはあなた達の方よ)
結婚式が終わり、全員で一緒に庭園から応接室に移動する。
応接室では侍女が全員分の紅茶と軽く食べられの茶菓子を用意し、全員にカップを行き渡らせる。
「いやぁ、素晴らしい式でしたな! 美男美女でお似合いの夫婦だ」
「これでイアンも結婚して父親としてホッとしたよ。格上の伯爵家に婿入り出来てイアンは本当に恵まれている。伯爵には感謝だ。これからは親戚ということでよろしくお願いします」
「うむ。こちらこそよろしく頼む」
父親同士で今日の結婚式の感想とこれからの挨拶を交わしている。
(さて、このタイミングで言わせて頂きましょうか。皆様の反応が楽しみですわ)
「お父様。ご歓談中、申し訳ございません。私、どうしてもお伝えしたいことがございまして」
にこやかにイアンの父と話していた時と打って変わって途端に不機嫌な表情になる。
「一体何なんだ。今は子爵と話していて忙しいのだ。空気を読め」
「皆様の今後に関わるお話ですし、今ここでお話したいのです」
「手短に言え」
「では、言わせて頂きますわね。この結婚、皆様はイアン様がヴォクレール伯爵家に婿入りしてきて、ミリィと伯爵家で暮らすと思われておりますよね?」
「何を言ってるんだ? それは当たり前じゃないか!」
真っ先に反論したのはセリーヌの父である。
「私の可愛いミリィが伯爵家の後を継ぐのよ? あんたじゃなくてミリィこそが次期伯爵にふさわしいの」
義母が意地悪な表情で告げる。
「結婚相手を入れ替えただけだろう? どちらも伯爵家の娘だから、ミリィ嬢と結婚してもセリーヌ嬢と結婚してもどちらが家に残るか話し合いが必要なだけで、イアンの境遇は変わらないはず」
「我が家はヴォクレール伯爵家と縁繋がりになれればそれで良いので、結婚相手ががどちらになろうと構わないのだけど……」
子爵夫妻は困惑顔を浮かべている。
「……そうですか。では、お父様にお尋ねしますわ。このヴォクレール伯爵家、元々はどなたのご実家ですの?」
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