お姉様、ご自分が婚約破棄されたからと言って私の婚約者を奪わないで下さい

水月 潮

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第2話

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 婚約破棄という茶番劇の数日後、レジーヌとシャルロットの父であるルーキエ公爵は国王からの呼び出しの手紙を受け取り王宮へと出向いた。

 呼び出された用件は、勿論先日のダミアンとレジーヌの婚約破棄の件だ。

 婚約破棄について王家とルーキエ公爵家で話し合いが王宮で行われることになった。


 王宮に出かけてから数時間後、公爵は疲れ切った顔で屋敷に帰ってきた。

 公爵は家族全員をダイニングに呼び出し、ディナーを食べながら話をすることにした。

 ルーキエ公爵家は公爵夫妻に長女レジーヌ、二女シャルロットという四人家族だ。

 因みにレジーヌは18歳、シャルロットは16歳である。


 ダイニングに全員集まり、ディナーが始まる。

「知っていると思うが、今日王宮で婚約破棄についての話し合いが行われた。結論から言うと、ダミアン王太子殿下とレジーヌの婚約は白紙に戻ることになった」

 婚約が白紙に戻るということはなかったことになるということと同義だ。

 この言葉にレジーヌは泣き崩れた。

「お父様が国王陛下にとりなして頂ければ大丈夫だと思っていたのに……! じゃああの子爵令嬢がダミアン王太子殿下と新たに婚約するの!? あんな教養も何もあったものじゃないあの令嬢が、幼い頃から王太子妃教育を受けていた私に成り代わると言うの!?」

「落ち着け、レジーヌ。婚約破棄は国王陛下夫妻の許可を取ってから宣言したことではなく、ダミアン王太子殿下の独断で行われた。確かにレジーヌがあの子爵令嬢に対してやったこともあまり誉められたものではなかったが、それ以上にダミアン王太子殿下が王家と我が家の間で決められた婚約を国王陛下夫妻の許可もなく勝手に破棄する宣言をしたことを問題視しておられた。しかも内輪で婚約破棄するのではなく、パーティーという公の場で宣言。沢山の人の前で宣言してしまったものだから、なかったことにするには王家にしてみても些か外聞が悪い」

「やはり婚約破棄は国王陛下夫妻の許可を得てから宣言したことではなく、ダミアン王太子殿下の独断だったのですわね。それで、お話の続きは?」

 シャルロットは冷静に話の続きを公爵に促す。

「この件はレジーヌという婚約者がいながら恋人を作ったダミアン王太子殿下に責任がある。婚約破棄ではなく、婚約白紙にしたのはレジーヌの受ける傷を少しでも小さくしようとする国王陛下からの温情だ。陛下も王妃もレジーヌのことを未来の王太子妃として認めていた。国王陛下は勝手な行動をした罰としてダミアン王太子殿下を廃嫡し、クレマン第二王子殿下を王太子にする意向を示していた。当然、ダミアン王太子殿下は王家から除籍だ」

「ダミアン王太子殿下は廃嫡され、除籍される予定なのですわね。では、子爵令嬢はどうなるのです?」

 取り乱しているレジーヌの代わりにシャルロットが尋ねる。

「子爵令嬢は婚約者がいると知りながらその婚約者からダミアン王太子殿下を奪った謂わば略奪者。今日、令嬢の父であるオランド子爵も来ていたが、自分の指示でやったことではなく、娘が勝手にやったことだと主張していた。それに、娘が王太子殿下の婚約者の公爵令嬢を押しどけて恋人の座に収まるなんて大それたことをしてしまった詫びに子爵位を返上するとも言っていた。国王陛下と私の話し合いで、領地の民の生活への影響を考えて子爵位の返上ではなく、令嬢を勘当すれば不問に付すとしたので、令嬢は勘当。子爵家の籍から除籍され、平民扱いになった」

 公爵は赤ワインを一口、口に含み、話を続ける。

「廃嫡・除籍され、平民になったダミアン王太子殿下と平民になった子爵令嬢を結婚させ、何があっても離縁は出来ない。それが国王陛下が二人に課した罰だ。当然、この結婚に関して生活費の援助は一切ない。子爵令嬢は王太子妃の地位・財産目当てならこれ程の罰はないだろう。ダミアン王太子殿下もレジーヌを切り捨ててでも結ばれようとした子爵令嬢が本当に自分を心から愛していたのか、地位・財産目当てだったのかわかるだろう」
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