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夜のいたずら
しおりを挟むその日の、夜のことだった。
マリーはこっそりと起き上がり、寝床を抜け出す。目的はもちろん、ライトの寝顔を見るためである。
干し草を敷きつめてくれたその場所は、思ったよりも寝心地が良かった。
ごはんがおいしかったこともあり、すっかり体力が回復した。
マリーはそっと、ライトに近づく。膝を折って、寝顔をながめた。
疲れたのだろう。
起きる気配はない。
眉間にシワが寄っているし、時々鼻がひくひくと動く。うなされている、というほどではないが、唇もやや噛みしめているようだった。
マリーはその様子を、うれしそうな顔をして見つめる。ゆるんだ頬に手をあて、漏れそうになる笑いを、必死でこらえた。
ふいに、胸の奥が苦しくなったような気がした。
「――会いたかったよ、ずっと」
つぶやくように声にすると、ライトの頬を指でなぞる。
起きる? それとも起きない?
どっちがうれしいだろう。
きっと、どっちでもうれしい。
だって自分は今、ここにいる。それがとても幸せなことだから。
ライトのそばにいる。それが何よりも望んだことだから。
「――そうだ」
マリーは思いついたように、一度立ちあがり、ライトの身体を上から下まで見る。
どうせ起きないんだったら、何をしたって一緒だろう。
上掛けをずらしながら、ライトの身体を少しずつ、奥へやる。
起きないように、でも力はゆるめずに。
ようやく一人分の場所が空くと、マリーはすべりこむようにして、ライトの寝床に入った。
「おやすみなさい」
ライトの頬に小さくキスを落とし、ぴったりと身体を寄せる。
温かい。
そして、ライトのにおいがした。
――起きないほうが悪いんだから。
くすりと笑いながら、そのままゆっくり、目を閉じた。
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