鬼と狐

とぶまえ

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調子に乗ってる狐

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 夕飯に山で取ってきた芋を切って煮たものを食べている時の事だった。芋を口に運び噛んだ瞬間、がり、と芋では有り得ない妙な食感がした。しかも、口の中には気色悪い味が拡がる。腐った肉でも齧った方が何十倍もマシなような、酷い味だ。一瞬で全身にぞわっと鳥肌が立った。

 眉間に皺を寄せながら即座にぺっと床に吐き出すと、その芋の欠片は化け狐へと姿を変えた。

「やあ、酷い顔をしてるね。不味いものでも食べたのかな? 例えば芋に紛れてた化け狐とか。そんなに美味しそうだった? 何の疑いもなく口に運んじゃうほど完璧だった? 
ねえ、ねえ、僕はどんな味だった?」

 得意げに、そして鬱陶しい口調で言う化け狐は頭からダラダラと血を流している。さっき俺が齧った場所は頭だったらしい。
 狐ははあはあとやけに息を乱している。いつ紛れ込んだのかは知らないけれど、俺に齧られるまでこいつは熱い汁の中に身体を突っ込んでいた事になる。
 俺は口元を手で拭った。まだ口の中にさっきの気色の悪い味が残っていて、これ以上ないぐらいに不快だ。

「そこまでして俺をからかって君は何を得るんだよ」
「平穏な食事を邪魔された鬼のしかめっ面と、達成感という素晴らしいものをだよ」

 狐の姿では血の処理が面倒だったのか、狐は人の姿に化けて頭の血を拭いとった。そいつが化けた瞬間、ほんの少し、人間の血の匂いが漂ってきた。

「他の化け狐は化けても匂いはそのままなのに、なんで君は匂いも変わるの?」
「企業秘密だよ」
「なんだよ企業って」
「知らないのかい。人間がそんな言い方をするんだ。匂いが変わるのは僕の素晴らしい技術の賜物だよ。僕以外には出来ないよ。仕組みは内緒、企業秘密だ」

 狐は鼻高々に胸を張って自慢げに言う。小憎たらしい顔だ。

「自慢するためにここに来たの? それとも、死にたくなったの?」
「ふふ、またそんな物騒なこと言って」

 得意げな表情のまま、ずいっと顔を近付けてきた。

「分かってるんだよ? 君、僕の人間の姿をかなり気に入ってるだろう。だって興奮してばきばきに勃起させながら僕を抱き潰すぐらいだ。殺してしまっていいのかい。こんなに見目麗しい人間なんて他にいないよ。勿論他の狐が化けたってこんなにかわいくて格好いい美人にはなれない。後悔するのは君だよ?」 

 つらつらと語った化け狐は自信満々に言い切った。この前逃がしてやったせいか、随分調子に乗ったようだ。

「本当に君は頭が悪いね」
「すぐ暴力で脅す鬼に言われたくないよ。それで? 二度も簡単に騙された君はお怒りなのかな? また僕のこと犯す? そんなに、抱かせて欲しい? 僕のこと好きだって素直に言うならさせてあげない事もないよ」

 化け狐はにまにまと笑っている。この前散々泣き喚いていた癖にこの態度。こいつの頭、記憶中枢がいかれているんじゃないかと、少しだけ不憫に思った。

「え」

 俺はそいつの足を掴んでその場に引き倒し、馬乗りになった。

「君が言うべきことは、抱かせて欲しい? じゃなくて、許してくださいだろ?」

 ぎちりと、ぎりぎり息が出来る程度に首を絞めると、さっきまであんなに調子に乗っていた狐は半泣きになりながら口を開いた。

「ごめんなさい許してくださいなんでもします」




 ひたすらに謝る狐が面白く、暫く首を絞めていたせいで狐の首元には薄らと手の跡がついていた。

「照れ隠しが、可愛く、ない」
「さっさとして」
「い、今、やってるじゃないか……!」

 狐は俺に跨り後孔で性器を飲み込んでいる。騎乗位で俺の事をイかせられたら許してやる、と言ったのだけれど、狐は途中までいれただけで息を乱して一向に動こうとしない。

「うぅ゙……やだぁ……」
「何でもするって言っただろ」
「だからってこれは…ぁ……!」

 泣き言を言いながら狐はほんの僅かに腰を下ろし、また動きを止めてぐすぐすと鼻をすすり始める。

「もっと奥までいれて」
「むり、だって……」
「いつまで経っても終わらないよ?」
「うゔ……」 

 狐はぎゅっと唇を噛み締め、嫌々という顔で腰を下ろし始めた。

「自分から抱かれに来たようなものなのに積極的じゃない」
「誰が……! 抱きたかったのは君だろ。僕は君が僕恋しいだろうと思って顔を見せに来てあげただけだ」

 ふんと鼻を鳴らしている。こいつの自信、自意識過剰の権化と呼んでも過言では無いのではないだろうか。

「あ゙っ…あ゙……んぅ゙っ…なんで、こんな、無駄に大きいんだ……! 顔に、似合って無さすぎるだろう……!」

 逆にちんこがでかそうな顔ってどんな顔なんだろうか。

「ん゙ぅ゙う……!」

 俺の腹に手を付き、苦しげに息を吐いている。生意気なことを言ってる時はうるさいばかりだけれど、何も喋らず悩ましげな表情を浮かべている時はかなり好きだ。興奮する。

「……ッ僕が、魅力的なのは分かるけれど、あんまり、大きくさせないでくれ……!」

 狐は顔を歪めながら叫んでいる。そんな事を言われても生理反応だ。そんな顔をしている方が悪い。

「ゔぅ゙……ん゙、ぐッ……、ぅ゙ゔー……!」

 性器はかなり深い所まで入っている。一応、狐は頑張ってはいるようだ。その分苦しそうでもある。愉快な光景だ。

「ゔ、ん゙ーー~~~ッ……!」

 先端が結腸の入口にぐちりとぶち当たって、狐は一層苦しげな声を上げる。

「これ、以上は、無理……」

 はきそう、と狐は絶え絶えに呟いた。流石に上に乗られた状態で吐瀉物を撒き散らされたくはない。

「いれるのはそこまででいいから、動いて」
「んん゙……」

 狐は声を漏らしながら腰を動かす。緩慢な動きだ。あまりにもとろとろしているので口を挟もうかと思ったけれど、狐自身そのままじゃいつまで経っても終わらないと分かっているようで、少しずつ動きを早めた。

「ん゙っ……ぁあ゙ッ……あっ……!」

 亀頭の辺りまで抜いて、それからまた腰を下ろす。動きに合わせて狐は弱々しく声を上げる。

「前はずっと悲鳴上げてたけど、今日は良いみたいだね。自分で動いてるから楽?」
「ん……前よりは、苦しくない……けど、奥はきつい……」

 苦しげに目を伏せた狐は自分の下腹を軽く撫でる。ほんの少し膨れていて、俺のものがどこまで入っているのかよく分かる。

「ぅん゙んっ……く、るし……」
「早く動いて」
「ひ、あっ、うごか、ないで、ちゃんと、するから……!」  

 休もうとした身体を軽く突き上げると狐は慌てたように動きを再開させる。

「ん、く……ゔぅ……あ゙、あっ……!」

 いつの間にか狐の性器は勃ち上がっていて、狐が動く度に揺れて僅かに先走りを流している。苦しい苦しいと言いながらも、感じるようになったようだ。

「勃起出来るようになったんだね」
「っ、さ、触っちゃ、だめ……い、きそ」

 指で先走りを掬いとると狐は切羽詰まった声を上げる。前回触った時とは大違いの反応だ。制止に構わず根元から扱きあげる。

「ッ~~~~!!」

 狐は身体を震えさせあっさりと射精した。浅く息を吐きぐったりとしている。

「俺はまだイッてないから休んでないで続きして」
「ぅ、あ゙っ、待って、すこし、少しでいいから、おねがい」
「駄目。動いて」
「ううゔ……!」

 軽く突き上げると、狐は目に涙を浮かべながら動きを再開させた。射精した直後に動くのは相当辛いのか表情は歪んでいる。

「ん゙ッ…うゔッ……あ゙……あ゙ア゙ッ!」

 自分で動いた方が快感は強いけれど、これはこれでいい眺めだ。

「は、や゙く、イッて……!」

 飲み込めないのか狐の口の端から唾液が漏れだしている。
 さっき射精したばかりの狐の性器はまた勃ち上がっていた。そこを軽く撫でると狐はぶんぶんと首を横に振る。

「や゙、めて、ちゃんと、するから、触るのは……」

 後孔できゅううと締め付けながら懇願してくる。随分健気だ。物凄く、邪魔してやりたくなる。

「だめ、だってぇ……! ぁっ……ああ……!」

 手のひらに握り込み扱きあげる。狐が身体を震えさせるのに合わせてびくびくと中も収縮する。

「んぅ゙ー……んん゙ぅ……!」

 射精を我慢しているのか下半身に力を入れているようだ。そのお陰で後ろも締まる。

「っは、なし……て、ッ……! あ……ッッ!」

 扱き続ければそう経たないうちに少し薄くなった精液を吐き出した。

「ッ……ぅん゙ッ…っ……ぁ……ああ゙……!」

 そのまままた休もうとするかと思いきや、狐は身体を震えさせ泣きながらも動きは止めなかった。

「頑張るね」
「だっ、て、君、勝手に動こうとするから……!」
「そんなに俺に動かれたら嫌?」
「嫌に、っ、決まってるだろ……! 好き勝手突いてきて、僕がどれだけ苦しいと思ってるんだ……!」

 そこまで嫌がられると、やりたくなってくる。腰を軽く掴むと狐は怯えたようにびくりと震えた。

「ッひ、ぅ、イかせてあげるから、じっとしててくれ……!」

 切羽詰まった様子で叫んだ狐はぐっと深く腰を下ろした。

「っ、う……んうう……ぁ゙ッ……! んんッ……!」
「……ん、っ」

 強く締め付けながら一心不乱に腰を動かしている。搾り取るような動きに射精感が湧いてきたけれど、もう少し狐の様子を見ていたくて堪えた。

「な、んで、っイかないの……ぉ…っ」

 いっぱいいっぱいなのか狐は動きながらひんひんと泣いている。

「ああっ……ぁ…ゔ…ッ……んうぅっ……! イ、って、ってば……!」
「……ッ……」

 一際強く締め付けられて思わずイきそうになって短く息を吐いた。狐は全身に汗を滲ませ懸命に腰を振りたくっている。自慢の無駄に整った顔は涙で濡れて歪みきっていた。

「ん、ぐ……ぅ゙ゔ……うゔッ……!」

 出来うる限り奥まで咥え込み、必死に俺をイかせようとしている狐の目の焦点はかなり怪しくなってきている。口からは音が漏れているだけで段々言葉らしい言葉も発さなくなってきた。
 狐はそろそろ限界のようだし、俺もずっと我慢しているのも疲れてきた。

「あ゙、ん゙ッ……んぅ゙っ……!」
「……もうちょっと締めて」
「ん゙…ぅ…?」

 狐は訳も分かっていなさそうだったけれど黙って大人しく従う。

「そのまま締めてて」
「っ、やっ……ぁあッ!」
「ッ──」

 腰を掴んで突き上げ、奥に吐精すると狐の顔にほんの少しだけ喜色が現れた。

「あ……やった……ぁ」





 
 あれだけ泣いていた癖に。あれだけ醜態を晒した癖に。
 
「これで許してくれるよね?」
「……良いけど」
「それってやっぱり僕がかわいくて格好よくて美人だから?」
「君の頭の中、枯葉でも詰まってるの?」

 何故こうも自信満々でいられるのか。そして何故ここまで立ち直りが早いのか。狐はへらへらと笑いまとわりついてくる。苛つく顔だ。鬱陶しい。

「さっさと帰れば?」
「まだ腰が痛いんだ。それに、僕がいなくなったら君が寂しいだろ?」
「全く」
「照れなくて良いんだよ」

 しっしっと手で追い払っても狐はにやけながら更にまとわりついてくる。

「見た目が好かれてるから殺されないなんて本気で思ってる?」
「だって実際そうだろ? 怖い怖い鬼様が、化け狐ごときに二回もからかわれたって言うのに五体満足で見逃してくれるんだ。僕の容姿にぞっこんって事だろ?」

 飽きれて溜め息をつきながら狐の頭を軽く撫でた。愛でられているとでも思ったのか「ほらやっぱり」なんて言って狐は気分良さげに笑っている。
 この小さい頭の中にはそれこそ枯葉でも詰まっているんだろう。だからこんなに、馬鹿なんだろう。
 撫でていた頭を鷲掴みにし、ほんの少し力を込めてみしりと狐の骨をきしませた。

「勘違いだよ、それ」
「……──」

 このまま俺が力を込めればこいつの頭ぐらい簡単に砕ける。それを悟ったらしく狐の顔から血の気が引いていき真っ青になる。やめてくれとばかりに首を小さく横に振っている。

「どうしたの? 惚れられてるって本気で思ってるならそのままじっとしてればいい。殺されないって自信があるんだろ? 俺が照れ隠しに脅してるだけなんだから、かわいいかわいい狐が死ぬ前に、手、離すに決まってるもんね?」
「……っ」

 耐えきれなくなったようで狐は一瞬だけ元の狐の姿に戻って強引に俺の手から逃れた。

「自信、無くなったんだ?」

 再び人の姿になった狐はそれはもう悔しそうな表情を浮かべていた。


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