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2章
マグナ大森林part20
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夕暮れ時、マグナ大森林南東部を突き進んでいくと霧が立ち込めている。どんどんと濃くなり5M先も見えない濃霧に囲まれてる辺りまで来ると、草木や土壌にも変化がみられる。しなびて、枯れ果てるギリギリまでやせ細っている。ボコボコと沸騰しているように見える沼が点々とあり、活性化している。3匹の狼男達は同じ森とは思えない、異彩を放っているこの一帯を庭のように闊歩し、隠れ蓑にしている岩窟に足を踏み入れる。
八人の部下達が余りにも早い頭目達の帰りにどよめき騒ついている。順調に事を進めていただけに、手負い姿で三人だけしか戻ってこない状況を目の当たりにすれば動揺の一つくらいするものだ。
「詳しく何が起きたのか、説明は後でする。」
冷静さを保ちつつも、心中では煩わしさを感じ、憤っていた。獣人化を解き、斬り落とされた左手の処置を行う為に宝物庫の中からエリクサーを取り出し、斬り落とされた断面に合わせるように人差し指から手の甲にかけて肉片を固定していく。綺麗に斬られていたのが幸いしたようで、エリクサーの小瓶を1本消費し終える頃には元通りになっていた。
左手の傷も癒え、仲間達の元へ顔を出す。
「もういいんです…?」宝物庫のある奥間から出てきたルトに恐る恐る一人の部下が尋ねる。
「ああ、この通りだ」左手を見せ、肩をポンポンと叩き、広間の中央に静かに座る。
集まっていた部下達がルトを囲むようにそれぞれ座り出すと、説明を始める。
簡潔でいて、実に分かりやすく。
「砦にいたメンバーは全滅。または捕縛されているだろう。デールは殺された可能性が高い。じゃなきゃ、知らせの一つくらいアイツなら寄越す筈だからな。生け捕りになった奴等がいるなら捕縛されたまま猫人(キャットピープル)達のとこにでも連れていかれてるだろうな。」
「それじゃあ、里に奇襲でもかけて助け出すか?」
「それは無謀じゃね…?助けるも何も生きてるかすら分かんねえし。」
「あぁ?じゃあ俺達がやられっぱなしでいいのかよ」
「潮時か…?」
「俺達が主力だろ。デールさんが死んじまったのは痛ぇけどよ…」
様々な意見が飛び交う中、ルトは口論に制止をかけ、再び話始める。
「正直、殺り合った犬人(ルプスレクター)の姐ちゃんは手に負えね…。アレはまだ化ける。エルフの方はどうだった?」
戦闘スタイルや妙な技を使うこと伝えた上でルトは自分が対峙しえなかった方の話を実際に対峙していた二人に振る。
「魔力切れとかは狙えなさそうっす。魔力抵抗力も相当なもんで、一線級のエンチャント武器で一瞬怯む程度でした。恐らくは接近戦に持ち込めればって…、死地に突っ込むようなもんすね。アレは…。」目を逸らし、口を噤んでしまったので、ちらともう一人の意見も聞こうとルトは視線を移す。
「同じっすね~。スライムがバカげてますよ。魔法の威力も速度もクールタイムあんのかって言うか、感じさせない連携で、距離取ってなかったら今頃氷で串刺しか丸焼きっすね。使役出来るのもあの二匹だけとは限らないっすから。」
「犬人(ルプスレクター)なんかに上位種の狼人(ウェアウルフ)様が尻尾巻いて逃げるんですかい」
黙って聞いていた留守番組(その場にいなかった狼人)の一人が煽り文句を言う。
「クックック。アレは殺り合わないと正直分かんねぇっす。ダンマリ決め込んでないで何か言ってやれよぉ…あーいぼ~」
「腑抜けだと思われてもね。俺はここで逃げるのが良策なんじゃん。」
ルトは部下達の様子を黙って伺っているが、今回留守番組になっていた8人中5人は不服そうだ。好戦的な彼等は挑んでもない敵に臆すような腑抜けではないが、挑んで痛い目をみなければ分からない戯者であった。3人はルトの最終判断を仰ぎたいようだ。
「未知数のテイマーと手負いの剣士。恐らくはもう全快してるか…。殺り合いたい奴はここに残れ。山分けして逃げたい奴は持てる範囲で宝を持ってズらかるぞ。持ちきれない分はここに残ったやつに譲ってやれ。」
現実主義者の彼(ルト)は冷静に最悪の状況を考慮し、ここで引き上げる決断を下す。
「おいおい、それがルトさんの判断かい…?それなら財宝は一つも渡さねえ。牙の抜けた腑抜けは仲間じゃねえ。戦って残る奴だけで山分けだ。逃げ出す奴は命だけは助けてやる。だが、財宝には一切触れるな。」
好戦的な狼人ディルを筆頭に5人の部下達がルトの下した決断に異を唱え、決別を表明する。意見するだけでなく、今まで略奪してきた財宝まで話に持ち出され、殺気立つルト派と一触即発の雰囲気になる。5対3ではあるものの、恐らくこのまま戦闘になれば互角。人数で勝っていても相打ちが関の山だろう。
「お前らはどうすんだ!!財宝の取り分も増えるんだ。もうルトについていっても美味しい思いはできねぇぞ?さっさと決めろ!!」
はぁ、と溜息をつくと、中立の立場にいた一人がディルの方につく。
「ルトの旦那ぁ。すまんね、取り分はしっかり頂きたいもんで。」
どちらにつけばより多くの利が得られるかは明白だ。
この一言がダメ押しになり、残りの2人もディル達につく。ルト達は形成不利となり、ぐっと歯を食いしばり堪える。
「はぁ~~~~~。」
ルトは仲間割れしている現状に嘆いているようで、目に手を当てながら俯き、長い溜息を洩らした。
何も言わずに宝物庫へ向かうとポーションとエリクサーを1本ずつ手に取って持っていくことをアピールする。ディルは腕を組み、無言で見つめている。無言を了承の意と受け取ったルトはウエストバッグに入れ、岩窟から出ていく。部下の2人も同様に必要最低限の回復薬を手に、ルトを追う様に出て行ってしまった。立ち去る際、ルトに一瞥されたディル達は自身の死でも幻視したのか、何とも言えない不気味さに呑まれていた。ルト達がいなくなる頃には、ディル達が感じていた嫌な雰囲気は消え失せていた。
八人の部下達が余りにも早い頭目達の帰りにどよめき騒ついている。順調に事を進めていただけに、手負い姿で三人だけしか戻ってこない状況を目の当たりにすれば動揺の一つくらいするものだ。
「詳しく何が起きたのか、説明は後でする。」
冷静さを保ちつつも、心中では煩わしさを感じ、憤っていた。獣人化を解き、斬り落とされた左手の処置を行う為に宝物庫の中からエリクサーを取り出し、斬り落とされた断面に合わせるように人差し指から手の甲にかけて肉片を固定していく。綺麗に斬られていたのが幸いしたようで、エリクサーの小瓶を1本消費し終える頃には元通りになっていた。
左手の傷も癒え、仲間達の元へ顔を出す。
「もういいんです…?」宝物庫のある奥間から出てきたルトに恐る恐る一人の部下が尋ねる。
「ああ、この通りだ」左手を見せ、肩をポンポンと叩き、広間の中央に静かに座る。
集まっていた部下達がルトを囲むようにそれぞれ座り出すと、説明を始める。
簡潔でいて、実に分かりやすく。
「砦にいたメンバーは全滅。または捕縛されているだろう。デールは殺された可能性が高い。じゃなきゃ、知らせの一つくらいアイツなら寄越す筈だからな。生け捕りになった奴等がいるなら捕縛されたまま猫人(キャットピープル)達のとこにでも連れていかれてるだろうな。」
「それじゃあ、里に奇襲でもかけて助け出すか?」
「それは無謀じゃね…?助けるも何も生きてるかすら分かんねえし。」
「あぁ?じゃあ俺達がやられっぱなしでいいのかよ」
「潮時か…?」
「俺達が主力だろ。デールさんが死んじまったのは痛ぇけどよ…」
様々な意見が飛び交う中、ルトは口論に制止をかけ、再び話始める。
「正直、殺り合った犬人(ルプスレクター)の姐ちゃんは手に負えね…。アレはまだ化ける。エルフの方はどうだった?」
戦闘スタイルや妙な技を使うこと伝えた上でルトは自分が対峙しえなかった方の話を実際に対峙していた二人に振る。
「魔力切れとかは狙えなさそうっす。魔力抵抗力も相当なもんで、一線級のエンチャント武器で一瞬怯む程度でした。恐らくは接近戦に持ち込めればって…、死地に突っ込むようなもんすね。アレは…。」目を逸らし、口を噤んでしまったので、ちらともう一人の意見も聞こうとルトは視線を移す。
「同じっすね~。スライムがバカげてますよ。魔法の威力も速度もクールタイムあんのかって言うか、感じさせない連携で、距離取ってなかったら今頃氷で串刺しか丸焼きっすね。使役出来るのもあの二匹だけとは限らないっすから。」
「犬人(ルプスレクター)なんかに上位種の狼人(ウェアウルフ)様が尻尾巻いて逃げるんですかい」
黙って聞いていた留守番組(その場にいなかった狼人)の一人が煽り文句を言う。
「クックック。アレは殺り合わないと正直分かんねぇっす。ダンマリ決め込んでないで何か言ってやれよぉ…あーいぼ~」
「腑抜けだと思われてもね。俺はここで逃げるのが良策なんじゃん。」
ルトは部下達の様子を黙って伺っているが、今回留守番組になっていた8人中5人は不服そうだ。好戦的な彼等は挑んでもない敵に臆すような腑抜けではないが、挑んで痛い目をみなければ分からない戯者であった。3人はルトの最終判断を仰ぎたいようだ。
「未知数のテイマーと手負いの剣士。恐らくはもう全快してるか…。殺り合いたい奴はここに残れ。山分けして逃げたい奴は持てる範囲で宝を持ってズらかるぞ。持ちきれない分はここに残ったやつに譲ってやれ。」
現実主義者の彼(ルト)は冷静に最悪の状況を考慮し、ここで引き上げる決断を下す。
「おいおい、それがルトさんの判断かい…?それなら財宝は一つも渡さねえ。牙の抜けた腑抜けは仲間じゃねえ。戦って残る奴だけで山分けだ。逃げ出す奴は命だけは助けてやる。だが、財宝には一切触れるな。」
好戦的な狼人ディルを筆頭に5人の部下達がルトの下した決断に異を唱え、決別を表明する。意見するだけでなく、今まで略奪してきた財宝まで話に持ち出され、殺気立つルト派と一触即発の雰囲気になる。5対3ではあるものの、恐らくこのまま戦闘になれば互角。人数で勝っていても相打ちが関の山だろう。
「お前らはどうすんだ!!財宝の取り分も増えるんだ。もうルトについていっても美味しい思いはできねぇぞ?さっさと決めろ!!」
はぁ、と溜息をつくと、中立の立場にいた一人がディルの方につく。
「ルトの旦那ぁ。すまんね、取り分はしっかり頂きたいもんで。」
どちらにつけばより多くの利が得られるかは明白だ。
この一言がダメ押しになり、残りの2人もディル達につく。ルト達は形成不利となり、ぐっと歯を食いしばり堪える。
「はぁ~~~~~。」
ルトは仲間割れしている現状に嘆いているようで、目に手を当てながら俯き、長い溜息を洩らした。
何も言わずに宝物庫へ向かうとポーションとエリクサーを1本ずつ手に取って持っていくことをアピールする。ディルは腕を組み、無言で見つめている。無言を了承の意と受け取ったルトはウエストバッグに入れ、岩窟から出ていく。部下の2人も同様に必要最低限の回復薬を手に、ルトを追う様に出て行ってしまった。立ち去る際、ルトに一瞥されたディル達は自身の死でも幻視したのか、何とも言えない不気味さに呑まれていた。ルト達がいなくなる頃には、ディル達が感じていた嫌な雰囲気は消え失せていた。
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