テイマーですが何か?

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2章

マグナ大森林part21

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(時系列はゴールドーン都市をフローラ一行が出発する辺りまで遡ります、すみません)


ギルドに勤めている中年の男がいる。名はトレース、ヒューマンだ。入社当初は痩身だった彼も今では腹回りに脂肪を備える肥満体型だ。外見もそうだが、内面も昔の面影が見つけられないほどの変わりようだ。中間管理職の地位に就いている彼を良く思っている同職員(ギルド)はいないだろう。悪評は尽きないものの、これと言った根拠や証拠もない。解雇するにも決定打に欠ける為、ギルド上層部(トレースの上司)の対応は口頭注意に留まっている。上層部は一度も動かなかったわけではない。以前、噂を聞きつけた上司が「火のない所に煙は立たないだろう!」と、言及したことがある。ギルドは機関の性質上、悪事に手を染めるような事があってはならない。話が発展し退職勧奨にまで至った。それに対し、トレースは異議を申し立てた。根拠のない悪評が理由なら不当解雇ではないか、とわめき散らしたのだ。真相を確かめる為、徹底的にトレースを調べ上げたが証拠は何一つ出なかった。噂はトレースを貶める為に広められたものであり、上司の解雇勧告は不当なものであるということになった。証拠を見つけられなかった上司は退職を余儀なくされ、空いたポストに彼(トレース)が繰り上がり、就くことになる。それが今手にしている彼の地位だ。安易に疑えばこちらの寝首をかかれることになりかねない。ゴールドーン管轄ギルド支部長マーロックが慎重になっているのはそのせいだ。
同職員達に疎まれていながらも神経が図太い彼(トレース)は依然淡々と仕事をしている。
ただ、仕事効率が悪いせいで上手く捌き切れていないようにみえる。
彼(トレース)は内心焦っていたから。“ヘマをした”可能性があるのだ。
先刻から連絡の取れない商館員の内通者ゲイル、常駐しているはずの盗賊達の姿も見えない。監禁していた女達の姿もだ。彼は商館直々のクエストをもみ消すほどの権力も度胸もない。
だが、工作の一つもしないわけにはいかない。彼はクエストの等級を故意に下げる(難易度の偽装)と、それを新米に請けさせるよう、情報操作を行ったのだ。勿論、等級を下げた為、過分に用意された報酬も減額されている。言うまでもないが、減額した分の報酬はトレースの懐に入っている。
週末休みを利用してその旨を伝えようと隠れ家にしていた居住区の一郭を訪れたが、もぬけの殻となっていた。
誰とも連絡が取れないことがあっただろうか。事態の深刻さには気づいたがどうすべきか頭を働かせるには許容範囲外(キャパオーバー)をきたしていた。(それはニーナが暗躍した3日後のことだ。)
仕事が手に着かず、もたついたせいで夜分遅くまで仕事をこなした彼はへとへとになりながら岐路に就こうとしている所だ。夜道は不気味な程何も…誰もいないのだ。時刻は二三時を過ぎているとはいえ守衛の一人すら見かけない。顔を真っ青にし、脂汗が噴き出ている中、精神はパニック状態に陥っていた。俺がつるんでいた事がバレてるのか…?それとも羽目を外した時に顔を見ていた女達がチクったのか…?その仕返しを受けるのか…殺されるのか?!
心の余裕が無くなるとトレースの足取りは自然と早くなり、家に辿り着く頃には駆け足になっていた。
扉の前でぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、彼は玄関の戸を閉める。無事に帰って来れたことに安堵し、その場でへたり込む。乾いた笑い声を上げながら、平静を取り戻すと額から流れ落ちる汗を拭う。喉が渇きを潤す為、リビングへ向かうとポツンと明かりのようなものが見えた。恐る恐る戸を開くと、リビングテーブルの上に見覚えのない赤い蝋燭が一つ、妖しく火を揺らめかせている。蝋燭の下には紙切れが一枚挟まっており、取り出すとそこに文字が掛かれていることが分かった。蝋燭の灯りを頼りに読み進めていると警告メッセージのような内容が綴られていた。
殺サレタクナクバ…
スガタを消セ。
北デ、二時スギ迄マツ。
デハ、健闘ヲ祈ル。

送り主不明の警告文を読み終えたトレースは紙切れを蝋燭の火で燃やしながら自分がどう動くべきか考えていた。



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