テイマーですが何か?

姓名は無し

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2章

マグナ大森林part22

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夜中の一時を過ぎる頃、豚のように太った男(トレース)が家から出てきた。
身震いしながら辺りをキョロキョロ見渡している。誰にも見られていない事を確認しつつ、バックパックを背負い、街灯を避けるようにして北門に近づいてく様は滑稽だ。向かいの家屋からトレースは視られていたからだ。
付近まで来ると暗闇に紛れ、じっとして動かない。偶にこそこそと腕時計を見ているだけだ。
半刻程の時が経つと、警備に動きが見られた。外の様子を見ていた警備兵達が、警備宿舎に戻っていくのだ。
夜勤との交代の時間になったようで見張りをする人間が入れ替わる隙を突いて、男は門を抜け出していく。
屋根から動向を監視していた彼女は、ほぉ。と半ば彼の行動に感嘆しているような態度を示す。すると、後ろからポコっと軽く小突かれる。
隠密中なので声は出していないが、半目で後ろに立つギルド職員の男と数舜軽く睨み合う。彼(トレース)は盗賊達と内通していた為、守衛が交代する時間も把握していても不思議ではない。
早く行け。と目で催促されている彼女(監視する者)は漆黒色の外套(ローブ)を纏うと姿が見えなくなり、気配も知覚出来なくなった。恐らく追跡しに行ったのだろう。この外套(ローブ)には装着者の魔力を糧に不可視(インビジビリティ)の効果を付与されている。職員の男もまた制服の上から同じものを纏うと姿を消し、跡を追いかけた。
不可視外套のように、特定のスキル効果が得られる魔法具という。これらは全般希少価値が高い。


息を切らしながら、やっとの思いで北へ続くマグホーン一家が住まう道を歩いている。
最近全く使われていなかったにも拘わらず、魔物がいる様子はない。誰かが一帯の道に蔓延っていたのを駆逐したのだろうか。不気味ではあるものの、正直有難かった。身体の脂肪が邪魔をして、まともに動ける自信がないからだ。
時計を見ながら時刻を確認する。そろそろ二時になろうとしているのだが、道を歩けど人の姿はない。
警告文の北とは此処の道の事ではなかったのか?間違えてしまったのか…。不安に呑まれかけながらも辺りを備え付けの松明で照らしながら進む。
時計を見ながら約束の時間を迎えるが一向に姿を現さない手紙の主に焦れそうになり、声が出かける。
すると、何処からともなく漆黒の外套を纏っている人間が目の前に現れた。
唐突に音も気配もなく現れ、驚きを隠せないでいる男は震え声で話し掛ける。
「き、君があの手紙をくれた者かね…?」
「…ああ、そうさ。」フードで顔が見えないけれど声のトーンで女であることが分かった。
「ゲイル達はどうした?私を助けてくれるのだろう!何故急に連絡が取れなくなった?!不祥事か??」
矢継ぎ早に質問する男に対して彼女は黙ったままだ。
「何故、何も答えない…!これからどうするのだ!?ええい、さっさと答えんか!!」
にやりと笑い、彼女がやっと口を開く。
「ああ…、すまないね。あんたで“終い”だよ…。連んでた連中のとこに行きな、トレース。」
「なっ…。」
後方より布が擦れる音が聞こえ、振り返るとフードを取っている男が見える。その顔を見てトレースと呼ばれた男は絶句したようだ。
「やぁ、トレース。私だよ。」竜人族特有の濃紅色の瞳は龍のそれと等しく畏怖を覚えずにはいられない。
「…マーロック支部長。そんな、どうして。」後ろから唐突に現れたのはゴールドーン都市管轄ギルド支部長マーロックの姿だ。驚愕に顔を歪ませている。
「マーロックも人が良いとは言えないな…。さっさと潰せばいいのに、な!」
バックパックが急に軽くなり、態勢を崩してしまうトレースは前によろけコケる。
後ろの女が何処から出したのか長槍を右手で軽く振った斬撃で切り裂かれ、荷が地面に落ちる。トレースは背中が灼ける様に痛むのか手を当てている。
「フィア…。手が早いぞ…」
マーロックはフィアが長槍で今にも心臓を貫かんと構えを取っている姿を見て、額に手を当てて眉間に皺を寄せている。
「だってさぁ、こいつのせいなんだろ?部下が辞める原因になったのって。うちが情報をリークしたら青筋立てて殺気立ってたじゃん。」
「俺はな…。でもお前が…(なんでキレてんだ…。)」マーロックは睨まれたような気がして口を閉ざす。

トレースは顔は見えないが、長槍を軽々しく扱うフィアと呼ばれる名前に聞き覚えがあった。頭を死に物狂いで働かせる。蹲っていた彼(トレース)はフィアという名の女性について思い出し、体を起き上がらせる。
「お、お前のこと知ってるぞ!!情報屋のフィアだろ!?金ならある!!頼む、見逃してくれ。マーロックに雇われたんだろ?!いくらだ??倍は払う、ここに、ほら!!」
地面に散乱した荷を掻き集め、下卑た笑みを浮かべ、フィアに見えるように両手で持てる範囲の金貨を差し出そうとする。
次の瞬間、差し出されていた両腕は肘から先が吹き飛んでいた。
「え。…ぎゃあああああああああああいやあああああああああああああ。なんでなんでなん、でぁ!?」
「雇われてるってのはまぁ…そうだけど。それ以前の問題。」
フィアはフードを取ってみせると、
フィアの長槍はトレースの口を裂き、喉を貫いた。叫び声はなくなり、トレースは事切れたようだ。頭部を失った死体(トレース)が前傾になり、かき集められていた金貨にぐしゃっと倒れる。

「…。フィアさぁ、こいつに何かされたでしょ…」マーロックはフィアの態度に確信を込めて問う。
「うち?“うち”は別にかな。」
「(うちはって何?!誰が何されたんですかぁ…)そ、そうか。…じゃあ今度飯でも奢るよ。も、もちろん報酬とは別だぞ!」
じーっとマーロックを見つめるフィアは少し考え込んでから口を開く。
「んー、じゃあさぁ、こいつが最後にヤらかした案件でチカラ貸してくんない…?」
「あー…、全力でお力添えさせて頂きます。」途轍もなく嫌な予感が身体を襲うも、しおらしく振舞う彼女のお願いに応える事を約束する。

悪魔じみた笑みを浮かべる彼女(フィア)からの要求は一つだけだった。
ギルドに帰り、執務室に置いてあるフィアが持ってきた報告書を見直す。最後にトレースが情報操作を行った案件…商館直々のクエストを受諾していた名に目を留める。フローラ・エスメラルダ。冒険者登録簿を引っ張り出し調べると…。マーロックは深い溜息をつき、机に突っ伏した。

後日、マーロックは自分の右腕として此処ゴールドーン都市に活動拠点を置いている、選りすぐりのパーティーに強制クエストを発令する。
クエスト内容は極秘の為、この場で詳細を書くことは憚られた。


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