目覚めたら地下室!?～転生少女の夢の先～

冒険者～学園騒動～

張り切って出発

野外演習当日、参加者は集合場所の王都外壁前に集まっていた。それぞれ班に分かれ荷物を馬車に乗せたり、地図の確認をしている。護衛や冒険者は手出しを禁じられているので、その様子を見ているだけだ。ただ助言を求められれば答えても良いので、そういうやり取りも見受けられた。

「では、準備できた班から出発してもらいますが、出発する前に必ず報告するように」
「わたくしの一班が出発致しますわ」
「一班……班長はメリンダ・マーシェルですね。では、出発して下さい。緊急じーー」
「行きますわよ！」

顔合わせの時グレースに絡んでいたメリンダが、教師の言葉を遮り勢い良く馬車を出発させていた。その行動に教師はもちろん護衛や冒険者たちも呆れた顔をしていたが、幸か不幸か本人は気付いていなかった。何班かは同じように飛び出して行ったが、大半はしっかり荷物の確認や必要事項の確認をしてから出発した。グレースたちも馬車に乗り出発する。最初の御者はコニーがするようだ。ブレンダたちとフェリーチェたちは、馬車の周り散らばり辺りを警戒している。森に入り暫く進むと、馬車の渋滞ができていた。コニーも気付き馬車を止めたので、中の三人が顔を出した。

「コニー、どうしました？」
「それが馬車が渋滞していて、僕ちょっと見てきます」
「えぇ、お願いします」

コニーが、確認に向かったのでコニーの護衛がついていった。

「ここ一本道だったよね」
「道がデコボコしてるしね」
「スピード出してたからな」

フェリーチェたちは、何が起きているのかを察し呆れていた。グレースたちもその会話から察し、思わずタメ息が出ていた。戻ってきたコニーに話を聞くと、予想通りメリンダたちの馬車の車輪が溝に填まり動かなくなり、更にその馬車に後ろから来た馬車がぶつかったらしい。当事者たちは責任の擦り付け合いをしてたそうだ。全員、呆れていたが道は一本しか無いので、問題が解決するまで動けない。序盤も序盤から躓くことになった。異変に気づいた教師が今回だけ周りが手を出しても良い事にしたのだが、馬車を退かそうにも場所が無く困っていた。

「ねぇフェリーチェ、馬車を浮かせられないかしら？」
「できますよ」
「では、この馬車を浮かせて運んでもらえる？」
「はい。コニーさんも中に入ってくださいね」
「う、うん」
「じゃあ、僕はグレースたちと荷物の固定をしておくよ」
「お願いします」
「「「え？」」」
「ブレンダたちは俺が運ぶから力を抜いててくれ」
「「「はい！」」」
「「「「はぁ？」」」」

トントン拍子に話が進むが、コニーたち三人とその護衛たちは訳が分からずキョトンとしていた。そしてーー

「おいあれ！」
「馬車が飛んでる!?」
「人もだ！」

ざわつく下を気にする事なくグレースたちの馬車は前に進んだ。馬車の中ではシルビアとランドルフが楽しそうに外を見ていて、コニーは若干不安そうにしていた。彼等の護衛たちは無心になろうと必死だ。馬車はブレンダたちの馬車を通り越してから地面に降り、コニーが御者席に座ると何事もなく出発した。唖然とした他の参加者を残して。それから少しして、フェリーチェとアルベルトとガイが戻ってきた。

「グレース様の配慮で、皆さま方の手助けをするように言われております。手助けが必要な方は挙手をお願いします」
「但し、今回の原因になった奴等は自分たちで何とかしなよ」
「さっさと手を挙げろ。日が暮れる」

アルベルトとガイの物言いに呆気にとられた生徒たちは、三人の意味を遅れて理解し一斉に手を挙げた。

「「「「「宜しくお願いします！」」」」」

その日、いくつもの馬車と人が空を飛ぶという非常識な光景を目にして、自信喪失になった魔法学の教師がいたとかいなかったとか。