目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお

文字の大きさ
89 / 166
冒険者~修行~

夢中になると…

しおりを挟む
フェリーチェとアルベルトが、昼食をとりゆっくりしていると、午後の鍛冶を教えてくれるドワーフのメイソンがやってきた。

「鍛冶を教えるのはワシじゃが、お前さんらは魔力での加工ができとるからな。教えるのは、魔力伝導率が低い金属の加工になるのぉ」

「「よろしくお願いします!」」

「考えてみると、私たちミスリルとアルの鱗しか加工した事ないよね」

「そうだね。鱗はまだまだあるけど、ミスリルは殆ど無くなったかな?」

「何をそんなに作ったんじゃ?」

「ほら、何とかって貴族の女が魔族を使って母様たちを襲ったでしょう?」

「そうじゃったな」

「あの時、お兄様たちが死にかけて……」

「兄様たちには、‘お守り’を渡してなかったからね。あの後、多めに作ったんだよ」

フェリーチェとアルベルトの兄であるミゲルとネイサンは、ある事件で胸を貫かれ死にかけた事があった。
当時の事を思い出し、泣きそうなフェリーチェの頭をアルベルトが慰めるように撫でた。
メイソンも顔をしかめながら、疑問を口にした。

「しかし‘お守り’だけなら、そんなに使わんじゃろ?」

「剣やナイフとかの武器や、防具も作りました」

「もちろを、ミスリルって分からないように『隠匿』の効果も付けてるよ」

「……なんじゃと?」

話を聞いて、唖然と聞き返えすメイソンに気付かずフェリーチェとアルベルトは話を続けた。

「学校じゃ持ち歩けないって言ってたので、アイテムリングも渡しました」

「ミゲル兄様は微妙な顔で受け取ってたけど、ネイサン兄様が‘バレなきゃいいんですよ’って言ってた」

「おいおい」

学園の校則を堂々と破るミゲルとネイサンに呆れつつも、校則より命が大事だとメイソンは何も言わなかった。

「それで持ってたミスリルが減ったんですけど、その後また作る事になって」

「何故じゃ?」

メイソンに聞かれ、アルベルトは疲れたような顔で、その出来事を話し出した。

「その次の休みの時に、アダムが乗り込んできて、‘ズルい!欲しい!くれ!’って煩くてさ~」

「ディラン様が‘兄上!みっともないから止めてください!’ってアダム様を引き摺って帰りました」

「あやつは……まだまだ子どもじゃな」

第1王子アダムの子ども過ぎる行動に、メイソンは怒ればいいのか嘆けばいいのか、微妙な顔になっていた。

「まぁ元々、渡そうとは思っていたから作って渡したよ。ディランにもグレースにもね」

「アルったら意地悪して、一番最後にアダム様に渡したんですよ」

「あの時のアダムの顔……ププッ!」

お守り等を渡した時の、アダムの反応を思い出して、アルベルトが吹き出した。
そんな彼を困ったように見ながら、フェリーチェが話を続けた。

「も~、お兄様たちもニヤニヤして止めないし、あの後も大変でした」

「だって、からかうと面白いんだもん!」

「気持ちは分からんでもないがのぉ。して、何があったんじゃ?」

「アダムが剣を自慢気にエヴァンに見せたら、エヴァンが僕たちが誕生祭で渡した剣を出して、‘俺の剣の方が性能が上だ!’とか言っちゃって」

「……そういえば、大きな子どもがおったな」

エヴァンの行動を聞いて、メイソンは頭を抱えてしまった。
どうやら、国王エヴァンの子どもような行動は、嘆く事にしたようだ。

「アダム様が拗ねて、‘同じ剣が欲しい!’って言い出したから、アルが言ったんです」

「今の君に作る気にはなれない。いつか君が、その剣を使うのに相応しい人間になったら、その時は作るよ……ってね」

「ウム……確かにあの剣はアダムには早かろう」

「アダム様は、真剣な顔で頷いていました」

アルベルトの言葉に、納得したように頷くメイソンだが、続いた言葉に呆れる事になった。

「エヴァンはアンドリアに殴られてたけどね」

「エヴァンにも早かったかもしれんのぉ。ところで、おまえさんらはワシとの約束を覚えとるか?」

呆れ顔から、真剣な顔になったメイソンに聞かれ、フェリーチェとアルベルトは首を傾げた。

「「約束?」」

「自分たちで、何か作る時や作った時はワシに話す約束をしとったじゃろ?」

「「…………あっ」」

フェリーチェとアルベルトは、黒龍の鱗でアイテムリングを作った時に、メイソンと約束していた事をすっかり忘れていたようだ。

「剣やナイフはともかく、防具は初めてのはずじゃが?」

「「はい、そうです」」

「次にミゲルたちが戻ったら、ワシに見せるようにな」

「「はい、ごめんなさい」」

ちゃんと反省している2人を見て、メイソンは表情を緩めた。

「今回はこれ以上は言わん。ワシも鍛冶に夢中になると、他の事を忘れそうになるから気を付けとるが、お前さんらも気を付けるんじゃよ」

「「はい」」

この話は終わりとばかりに、メイソンが授業の話しをした。

「さて、今日はまず鍛冶をするのに必要な火炉を作るぞ!」

「火炉ですか?」

「どこに作るの?」

「この敷地内じゃ。ここに作っておけば、授業の度に移動しなくていいからのぉ。クロードからも許可をもらっとるから移動するぞ」

「「は~い」」

3人は外に出て、火炉を作る場所に向かった。
場所は邸の裏手で、邸から5メートル位離れたところだった。

「今回は、レンガ炉を作るぞ」

そう言って、メイソンがアイテムリングから大量のレンガと粘土等の材料を取り出した。

「こんなに使うの?」

「すご~い!」

「作るのは火炉だくじゃないぞ。ちゃんと小屋も作らんといかんからなぁ」

「「成る程~」」

3人はまず、レンガ炉の作成に取りかかった。
メイソンの指示のもと、2人は真剣に取り組んでいたが、途中から楽しげな表情になっていった。
2時間後、1つのレンガ炉が完成した。

「「できた~!」」

「よう頑張ったのぉ。初めてにしては上出来じゃ」

嬉しくて飛び上がる2人を見ながら、メイソンの顔も嬉しそうに笑っていた。

「次は小屋を作るぞ」

「「おぉ~!」」

3人は小屋作る作業を開始した。
今度は、魔法を使いながら作っていく。
基礎を組み立て、外壁を作り屋根を付けた。
その時点で、フェリーチェがある提案をした。

「先生、この小屋に耐火の魔法をかけていいですか?」

「そうじゃな~……レンガ自体が耐火レンガじゃが、念には念をいれといてもいいじゃろ」

「だったらさ、耐火だけじゃなくて他にも付けたら?例えば、耐震とか防塵とか」

「確かにあったら便利じゃな」

3人で意見を出し合いながら、持っていた宝石に付与していき、できたものを小屋全体に埋め込んでいった。
作業が終わると満足そうに頷き合い、内装をする事にした。

「必要なのは、水場とトイレじゃな」

「イスとテーブルもいるよね」

「作ったものを並べる棚もいりますよね」

「木製のもんは、火炉の側にはおけんからのぉ。……いっそ、もうひと部屋作るか?」

「「賛成!」」

と、いう事で部屋を増やす事になった。
その後も、アレが欲しいコレがあったら良いなど言い合いながら、作業は進んでいった。
そして、とうとう鍛冶小屋が完成した。

「ウム!作業修了じゃ!まさか1日で完成するとは思わんかったぞ」

「なんだかんだ楽しかったよ」

「うん!ちゃんと作れて良かった~」

充実感を感じ笑い合っていた3人は、小屋の外に出て固まる事になる。
何故なら、外に出ると夕暮れどころか真っ暗で、仁王立ちしたクロードが目の前に立っていたからだ。
メイソンはクロードと無言で見つめ合った後、フェリーチェとアルベルトに視線を移して一言。

「夢中になるとこうなるんじゃ」

「「な、成る程~」」

3人のやり取りを見たクロードは、大きく息を吸い込んだ。
その日の夜、耳鳴りに悩まされながら眠ろうと頑張る者たちが、いたとかいなかったとか。


















しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...