砂漠の中の白い行列

宇美

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第二章

(二)私は墓石を凝視した。

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私は墓石を凝視した。

梁山伯之墓。

十尺あまりの堂々たる御影石の墓には、
彼の名前が刻まれていた。

私は風に吹かれる綿毛のように墓の下の階段を登った。

今は石となったあの人に抱きついた。

か弱い体は、
元気よく墓石に飛び込んでいくなんていうことはできない。

墓石に両手でしがみつくと頭をコツンとぶつける。

一瞬意識が飛ぶ。

また戻って来る。

またコツンとぶつける。

また意識が飛ぶ。

またぶつける。

飛ぶ。

ぶつける。

飛ぶ。

雨だれのように何百回も、
何千回も、
つむりを墓石に打ちつける。

少しずつ、
少しずつ命の炎を消していく。

非力な自分が一人の人間を殺すにはそれ以外の方法は思い当たらない。

周りがよく見えなくなった。

石段を転がり落ちていく。

真っ白になる。

長い間、
昏倒していた。

目を覚ますと、
砂風が目と歯の中に飛び込んできた。

眼前に四本の蹄が現れた。

薄目で見上げると耳をぴんと張ったロバだった。

ロバの毛はばさついていて、
保護色のように砂漠に溶け込んでいた。

革の黄土色の轡を嵌めている。

上にはロバと同じ色の着物の、
でっぷりとした体格の老婆が乗っていた。

皺だらけのカブトムシのような形の手でたずなを握っている。

樽のような両腿でロバの胴をはさんでいる。

老婆は片足を鞍の上に乗せ、
宙に舞い上がると、
砂の上に降りた。

砂埃がたった。

老婆はロバのたずなを掴んだまま、
生きているのかね? 
死んでいるのかね? 
と私をつんつんした。

私が黙って死んだふりをしていると、
えい答えんかね? 
と纏足で私のわき腹を蹴っ飛ばした。

ロバがくうんと鳴いた。

えい、
どっちかい? 
と私の目をこじあけた。

私は、
死にました、
と答えた。

老婆が、
それは都合がよい、
と私の腕を持ち上げると、
私から腕輪をもぎとって、
耳飾をはずし、
銀のかんざしを抜きとって、
持っていた汚らしい麻袋に入れた。

私の全財産だったが、
死人の私は抗議することができなかった。

老婆は私の胸元に手をつっこんだ。

固い豆のある手が肌の上を尺取虫のようにつたう。

帯の下にまで手を入れてくる。

しばらく心臓が止まる思いで、
体を固くさせていた。

なんにもないや、
という声とともに、
老婆は私から離れた。

老婆は、
ああ、
良く動く死体だった、
とロバに飛び乗り、
たずなを引っ張る。

ロバが走り出す。

老婆の、
ごわついた白髪をまとめたお饅頭のような髷には淡い黄緑色のまるっこいかんざしが淡く光っていた。

布袋の腹のようにも、
瓢箪のようにも見えた。
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