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第13章 弟橘姫入水
弟橘姫入水(1)
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私は胸をどきどきさせながら、
小虎と良子の待つ観客席に戻った。
席に着くと私は直人さんからもらった紙を見た。
「『第三幕 弟橘比売《オトタチバナヒメ》入水』
ヤマトタケルの一行は浦賀から房総半島に渡ろうとした。
ヤマトタケルが小さな海、
と馬鹿にしたため、
海の神の怒りを買い、
暴風雨、
高波が起きた。
后《きさき》オトタチバナヒメが海に身を投げ荒ぶる海を鎮めた。
出展『古事記』。
脚本、
演出 武藤辰之助。
明治四十年五月三日、
白砂神社大祭前夜祭にて
白砂町青年会により
白砂神社拝殿前の野外舞台にて初演。
昭和三十四年白砂神社大祭前夜祭より
台詞を現代風に改訂したものを
上演するようになった」
良子が武藤辰之助の字を指差して、
私の祖父よ、
と嬉しそうな顔をした。
良子さん!
と女の声がした。
「良子さん。ちょっと手伝って下さらない?」
左から小太りの女が突如姿を見せた。
女と少し話し込んだ後、
良子は用事ができてすぐにでも行かなければならなくなったと私に話した。
小虎をお願いね!
と私の肩を軽く叩くと身を翻して
観客席を囲んでいる紅白の垂れ幕の合間に消えた。
ぷうという音声拡張期の音がした。
幾種類の笛や鈴、
鐘で構成されるお神楽に似た音色が流れた。
緞帳が上がると、
背景には北斎の浮世絵のような
大きな波の絵が描かれている。
お神楽の合間から波の音が聞こえる。
舞台の右袖から二人の黒子が現れた。
そのうち一人が脇に赤茶色い布を抱えている。
それを舞台の左袖に置くと、
舞台中に広げだした。
布は白木の舞台の床を前面と左半分を残して覆った。
黒子たちは置き方が気に入らないらしくしばらく置き方を工夫していた。
布を敷き終わると黒子は舞台袖に引っ込んだ。
かと思うと今度は真四角の帆のような物を三人がかりで掲げて現れた。
それぞれ支柱と両端の部分を一人ずつ支えている。
白いゆったりとしたズボンと筒袖の着物の男達が十人ほど現れた。
頭に白い鉢巻をしている。
皆、
櫂を抱えている。
男達は布の周を囲うように並ぶ。
船をこぐように櫂を動かしている。
舞台の上には即席の船が現れたのだった。
お神楽は止まり波の音が大きくなった。
辺りには波の音だけが広がっていた。
小虎と良子の待つ観客席に戻った。
席に着くと私は直人さんからもらった紙を見た。
「『第三幕 弟橘比売《オトタチバナヒメ》入水』
ヤマトタケルの一行は浦賀から房総半島に渡ろうとした。
ヤマトタケルが小さな海、
と馬鹿にしたため、
海の神の怒りを買い、
暴風雨、
高波が起きた。
后《きさき》オトタチバナヒメが海に身を投げ荒ぶる海を鎮めた。
出展『古事記』。
脚本、
演出 武藤辰之助。
明治四十年五月三日、
白砂神社大祭前夜祭にて
白砂町青年会により
白砂神社拝殿前の野外舞台にて初演。
昭和三十四年白砂神社大祭前夜祭より
台詞を現代風に改訂したものを
上演するようになった」
良子が武藤辰之助の字を指差して、
私の祖父よ、
と嬉しそうな顔をした。
良子さん!
と女の声がした。
「良子さん。ちょっと手伝って下さらない?」
左から小太りの女が突如姿を見せた。
女と少し話し込んだ後、
良子は用事ができてすぐにでも行かなければならなくなったと私に話した。
小虎をお願いね!
と私の肩を軽く叩くと身を翻して
観客席を囲んでいる紅白の垂れ幕の合間に消えた。
ぷうという音声拡張期の音がした。
幾種類の笛や鈴、
鐘で構成されるお神楽に似た音色が流れた。
緞帳が上がると、
背景には北斎の浮世絵のような
大きな波の絵が描かれている。
お神楽の合間から波の音が聞こえる。
舞台の右袖から二人の黒子が現れた。
そのうち一人が脇に赤茶色い布を抱えている。
それを舞台の左袖に置くと、
舞台中に広げだした。
布は白木の舞台の床を前面と左半分を残して覆った。
黒子たちは置き方が気に入らないらしくしばらく置き方を工夫していた。
布を敷き終わると黒子は舞台袖に引っ込んだ。
かと思うと今度は真四角の帆のような物を三人がかりで掲げて現れた。
それぞれ支柱と両端の部分を一人ずつ支えている。
白いゆったりとしたズボンと筒袖の着物の男達が十人ほど現れた。
頭に白い鉢巻をしている。
皆、
櫂を抱えている。
男達は布の周を囲うように並ぶ。
船をこぐように櫂を動かしている。
舞台の上には即席の船が現れたのだった。
お神楽は止まり波の音が大きくなった。
辺りには波の音だけが広がっていた。
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