たんぽぽ学園は、今日も平和(じゃない)です。

kuro.

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1年生編

第12話「森と星と、ドタバタ林間学校!。」

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「え~!? 集合時間、朝の6時!?」

 ゆいの悲鳴が朝の空に響いたのは、出発当日の朝。あわてて荷物を詰めて、玄関を飛び出す。

 すでに隣の家からは、つかさが大きめのリュックを背負って出てきていた。

「ゆい、遅いよ。バス、待ってくれないかもよ?」

「ご、ごめん~! 寝坊じゃなくて、夢見てたの! たんぽぽちゃんが森の妖精になる夢!」

「そんな夢見るから遅れるんだよ~」と、後ろからりんが明るく笑って追いついてくる。



 朝早くに学校に集合した生徒たちは、バスに揺られて山へ向かう。ゆい、つかさ、りんの三人も例外ではなく、大きな荷物を抱えて笑顔で乗り込んだ。

「バスの中でお菓子食べすぎないようにね」

「えー、ちょっとくらいならいいでしょ? りんちゃんも食べるよね?」

「もちろん! 旅のお供にスナックは欠かせないよー」

 そんな会話をしながら、山道をくねくねと進むバス。レイもバスの後ろの方で怪しげな道具をいじっており、黒田先生は眠そうにカーテンを閉めて目をつぶっていた。

 バスに揺られて数時間、着いたのは、空気の澄んだ高原のキャンプ場。

 

 緑の木々、きらきら光る小川、そしてどこまでも広がる空。

「うわあ……まるで、ジ○リの世界……!」

「ゆい、それ言いたいだけでしょ」

 さっそく班ごとに分かれてテントを設営。汗をかきながらも、ゆいたちは声を掛け合いながら協力して作業を進める。

「よし、発明品『自動テント設営くんver3.1』の出番だ!」

 レイが得意げにスーツケースを開け、謎の装置を取り出す。

「このボタンを押すと、誰でも簡単にテントが立ち上が――」ぼふっ!!

 黒煙が上がり、設営中のテントが一瞬でペシャンコになる。

「……って、なるはずだったんだけど……?」

「レイくん!!」

「レイ~~!?!?」

「ま、またやったの!?!?」

 黒田先生が遠くからチラリとこちらを見て、面倒そうに口を開く。

「……その発明、毎回同じオチじゃない?」

「むむっ、今回は特別バージョンだったのに……!」

 そんなこんなで設営に手間取りながらも、無事にテント完成。



 昼食を済ませた後はハイキング。森の中の小道を歩きながら、自然観察を楽しむ一行。虫の声、風の音、葉のこすれる音……都会では味わえない音に包まれて、ゆいたちはリラックスした表情を浮かべていた。

「こっちの道、すっごく涼しい~!」

「川の音も気持ちいいね~!」

 自然の風景を楽しみながら歩いていると、ふと、分かれ道に差しかかる。

 前を歩いていたつかさが立ち止まって、振り返った。

「これ、右と左……どっちだったっけ?」

「えーと、確か地図が……あれ?」

 ゆいがポケットを探り、リュックを覗き込む。

「う、うそっ!? 地図が、ない!?!?!?」

「ええっ!? ちょっと待って、それって結構まずいやつじゃない!?」

「さっきの川のところまではあった気がするよ!」

「じゃあ戻るしかないよ!急ごうっ!」

 大慌てで全員が来た道を駆け戻る。

 しばらく探していると、川辺の岩の上、レイの“虫除け超音波くん”の近くにくしゃっとなった地図が落ちていた。

「……あっ! あったあったーっ!!」

「よかったー!……って、レイ、なにしてんの?」

「うむ。この虫除け音波がどうやら高周波すぎて、生き物だけじゃなく人間の記憶力にも影響を……」

「影響しないでぇぇぇ!!」

 ゆいの全力ツッコミがこだました。

 黒田先生はその様子をちょっと離れたところから眺めながら、

「やっぱりトラブル要員、固定だな……」とつぶやいていたとかいないとか。

 そんなやり取りの末、無事に進路を修正した一行は、夕方にはキャンプファイヤーの準備へ。日が沈み、火が灯る頃には、生徒たちの輪の中から楽しげな笑い声が響いていた。



 夜には星空観察も行われた。静かな草原に敷かれたシートの上で、寝転がるゆいとつかさ、そしてりん。

「わぁ……こんなに星って見えるんだ……」

「天の川、あんなにはっきり……」

「……なんか、夢みたい」

 そのとき、遠くから微かに「にゃーん……」という声が響いた気がした。

「今の……たんぽぽちゃんの声?」

「まさか、こんな山の中にいるわけ──」

 そう言いながら振り向いた先、キャンプ場の灯りの隅に、確かに一瞬だけ白と茶の影が見えた気がした。

「……気のせい、かな?」



 翌朝、先生に確認したところ「近くの民家で飼ってる猫がたまに来るらしい」とのこと。──けれど、生徒たちの間では、「やっぱりたんぽぽちゃんは何か特別なんじゃないか」という噂が、そっと広がっていくのだった。
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