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其の三:悪鬼の玩具は人ッ!?
しおりを挟む「エレノア姫、召し上がれ?」
愛らしいピンク色の唇が、寄せられた菓子を食む。
「まあ、美味しいですわ!!」
「それはよかった」
ギリアムの笑顔。蜂蜜のようなとろりとした甘やかな声と眼差しを、膝の上に乗せたやんごとなき姫へと惜しみなく注いでいる。
またしても王宮である。
週一度、進捗報告のためギリアムは王太子に会いに訪れている。そして、常ならばウィルは直立不動でギリアムの傍らに佇むのがあるべき姿だ。茶会の席で茶を飲み、王太子と会話を楽しむ--そんな役割はウィルには本来、ないはずだ。
「ギルは本当にエリーがお気に入りだ。ねぇ、ウィルもそう思うよね? 私との会話を報告書で済ませて? ははは、エリーを愛でる為の名目、私は?」
「…………はぁ」
なんで俺に話題振るんだ!? 王太子の愚痴などという難問は、ギリアムに日毎「脳筋」と揶揄されるウィルには手に余るのだ。
現国王陛下には、嫁ぎ先から離縁してお戻りになられた妹君がいる。
東にある中堅どころの国から、「お身体の不調によるやむなき理由」で、当時六歳のご息女を連れて戻られた--というわけだ。夫の第五王子はその後に幽閉されたそうだから、何かしら真の理由があるのだろう。
離縁後早々にまたしても嫁がれた母君に代わり、離宮に住まう祖母である王太后は孫娘を愛した。溺愛し、過保護に、のびのびと。それはそれは大切に。孫娘が、淑女からは遠ざかった乙女に育ってしまった事実を悟った時は、既に--浮世離れしまくった妖精さんになっていた。
慌てた王太后から相談された王妃により、妖精から人間の淑女にするべく王宮滞在の身となった。
淑女のマナーなんて異世界に放り投げ、心の趣くまま、あくまでも素直な純粋さであらゆる常識
をなぎ倒す、穢れない無敵の妖精姫エレノア王女、御年十五歳。
エレノア姫と衝撃の出逢いを果たしたあの日。姫君が顔面蒼白な侍従に連れられて退場した後、ギリアムは怖ろしいほどご機嫌だった。
それから。
毎日どこからともなく届けられるようになった報告書をご満悦で読み、ふふふ…と笑うギリアムが誕生したのであった。
なんだ、あれ。
どういう生き物だ。
報告書を読むほどおかしくなる。
マナーは完璧。知性も合格。
なのに、やることなすこと淑女らしからぬあれこれ。
傍から見れば顔面蒼白で大迷惑な数々を何故か周囲は諦念しつつ微笑ましく愛しむのが面白い。
動きさえしなければまさしく妖精のように可憐な美少女は、身につけた教養を力技で無意識に無用の長物としてしまう。
面白い。
愉しくて、たまらない--。
こんな誰かが記した文字の羅列より、きっと愉しいはずたから。
もし期待以上なら、手にいれよう。
面白くて愉しい私の玩具--
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