悪鬼の邪恋(マリオン公爵昔話)

猫丸

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其の七:悪鬼、飼い主心!?

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※ウィル視点です。


 王太后の一声で、エレノア王女との結婚が決まった。
 もちろん、相手は俺ではない。

「半年って、早すぎねぇか」 
 婚約して半年ってのは、ギリアムはともかく王女様って身分的にどうよ?
「護る為にも早々の婚姻を、と申し出たら王太后様がお許しになった」
 確かに妻にしたほうが監視も警護もしやすいんだが、もう完全に王太后様は欺されてる。
「それに野放しにしておくとよろしくないからね」
 あ、今、本音だろ。野放しって言いやがったな。惚れた女を野放しって言うなよ、言いたくなるのはわかるけど。

 ……何しろ。あのエレノア王女様ってひとは取り扱いが大変だ。王族としての知識と知性はかなりある。なのに素が「のほほ~ん、ぽやや~ん」なわけで、両極端なそれらが絶妙に組み合わさり……

「……密偵を見破ったって?」
「新人の下級侍女だったようだな」

 密偵として潜入した侍女は、たまたまに王宮を楽しいことを求めてさまよっていたエレノア王女に遭遇。「あら、あなたから香の匂いがしますわ? 東のカンダリ国の特産ですわね。良い香りですね」と云ったことから、輸入されていない香をつけているのは怪しいと詮議にかけられ判明した。ちなみに匂いは微かだった。

「ヘングロシアの使者だっけ──」
「ああ、彼の国の要請で強制送還された」

 使者の身形はシンプルだが上質なものだったらしい。面会時、「あら、使者様はかなりのご身分でしたのね。輸出を優先するためその織物は王家の方もなかなかお召しになれないとお聴きしてますわ」と無邪気に言われ、その後こそこそと王宮を逃げ出そうとして捕縛。どうやら輸出品を横領しており、「まだそんなに出回ってないから見抜かれるとは思わなかった…」と白状したとか……。

 こんな感じで王女様は意図せずに自由気ままにあちこちで何かを見つけてしまうのだ。
 その影響は、王宮の近衛兵も、騎士団も、俺たちランスロット王国軍王太子とギルの犬も巻き込まれるのだ。

「しかしウィル、よく知っているな。その二件はお前に話した覚えがない」
 話をしながら驚異的な早さで執務を熟していたギリアムは唐突にペンを置いた。
「……あ、……いや、これはな。うん、聴いた」
「ああ、侍女殿とお付き合いをし始めたようだったな」 
「えっ!? なんで知ってるんだよ!」
「犬の繁殖は飼い主の務めだからね」
 当然調査してるよ。
 引き出しから報告書の束を取り出したニギリアムはニヤリと嗤った。

「調べるなよ、人様の恋愛事情を!」 
 報告書の表紙には、ウィル・シモンズ男爵の逢瀬報告と書いてあった……。





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