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其の九:悪鬼、初夜の翌朝!?
しおりを挟む朝だ。
放たれた窓からの清々しい風。
裸の胸に頭を頭を押しつけて眠るエレノアが起きてしまわないよう、静かにギリアムは寝台に上半身を起こす。
(──私だけの妻)
手に入れて、誰も踏み入れたことのない躰の奥に所有の証を注ぎこんでもなお、執着は褪せない。
「……それにしても、クックク」
あれほど何もかも台無しな経験は、生まれてこのかた一度もない珍事で、しばらくは思い出せば発作のように噴き出しそうだ。
初夜にうっかり笑いの衝動にかられ中断すること数度。絶対に性教育をされていない、初心どころかまさしく妖精姫の純潔を散らせたのは明け方。男としては非常に不本意だが、未知の出来事で意識が朦朧とした新妻の隙をつき、ようやく本懐を達した。
「……ううん……あ、ギル様ぁ?」
パチッと開かれた瞳をこすって、エレノアが名を呼ぶ。
「おはよう、愛しのエレノア」
触れるだけの口づけを落とす。
「おはよう…ですわね…」
嬉しそうに口づけを返しながら、エレノアは何故か自分のお腹を見て、「おはよう」と撫でさすり出す。
「何をしているのかな、エリーは?」
「えっ? 赤ちゃんにもおはようといったのですわ!」
「…………そう、か」
「はい! 結婚して初夜を迎えますと翌日には赤ちゃんがお腹にやって来てくれるのでしょう? ギル様とわたくしも初夜をいたしましたわ。今、お腹に赤ちゃんがいらっしゃるので挨拶を………ギル様?」
「───っ、ふっ」
ギリアムは噛み殺せない笑いの予兆に肩を揺らし、誤解を解くべきか否かを考える。出来たかもしれないが、少なくともまだ挨拶云々ではない。
「ねえ、エリー……」
「はい?」
「私の愛情をたっぷりここにあげないと赤ちゃんは来てくれないのですよ」
エレノアの腹を撫でここと囁き、嬉々として誤解につけこむ。
「まあ! お花もたっぷりお水をあげますものね! 赤ちゃんも同じなのですね!」
「ふふふ…、そうだね」
退屈な人生とは無縁の自分だが、これからの毎日はさらに楽しめるに違いない。
「あなたに愛を注いでもいいですか?」
「もちろんですわ! え、あら、どうしてまたベッドに!」
言質はとった。
ギリアムは深い満足に微笑んで、新妻を再びシーツへ沈めていくのであった。
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