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第三章 禁色の誘い 第四章 湯気と影の懐
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第三章 禁色の誘い
店を出ると、街の光は冷たく、水面の反射のように揺らめいていた。
夜風に触れた彼女の黒髪が、薄い影を僕の胸元へ落とす。
別れ道へ差しかかる前、
僕は喉の奥の罪を押し出すように言った。
「……このまま。
よかったら……ホテルへ行かないか」
彼女には友人が少ないから、大学にバレることもないだろう。そんな打算な背景があって言葉にした自分がどうしようもなく情けない。
一方で、その情けなさを曝け出す心地よさがあった。
彼女はわずかに目を細め、
笑いそうで、怒りそうで、飽きているような表情で言った。
「うわ、キモ。ほんと、どうしようもなく気持ち悪いですね。
先生って、そういう人でしたっけ」
その“気持ち悪い”は、
拒絶の刃ではなく、
僕を試すための微笑を逆さにしたような語感だった。
そして小さく息を吐くと、
「……でも、可哀想。
……可哀想な感じ、なんとなく嫌だから」
ゆっくりと視線を合わせてくる。
「行ってもいいですよ」
その声音は冷ややかなのに、
どこかで僕を“見捨てない”という気配を含んでいた。
わずかに距離を詰めてくれた彼女。
この時点で支配関係は決定的であった。
◆ 第四章 湯気と影の懐
ホテルの部屋は琥珀色の弱い光が沈み、
夜景が窓ガラスを滲ませながら、
部屋の奥へ淡い影を落としていた。
照明は強くせず、
影が主役になる程度に落とした。
「学生とこういうところ来るの?」
初めてであることを伝える。
「エロいね……」
このやり取りで彼女が支配側となった。
圧倒的に弱者となっているのは僕であることが決定的になった。
僕は躊躇いながら言う。
「……一緒に風呂に入りたい」
彼女は首を傾け、
その表情を一瞬だけ影に隠すと、呆れたように言う。
「先生ね……どこまで気持ち悪さを更新するつもりですか」
その言葉でさえ、
影の中では笑みのように感じられた。
「でも……いいですよ。
その弱さを、今日は聞いてあげるって決めたので」
浴室の灯りを落とすと、
湯気が濃い影のように天井へ漂い、
湯面は黒い硝子のように静かに揺れた。
湯の中で彼女は、
背後から僕の背にそっと額を寄せる。
「弱いですね……ほんと、びっくりするぐらい」
囁きの冷たさが、なぜか胸を温めた。
「でも……嫌じゃないですよ。
その弱さを向けられるのは……たぶん、私だけでしょうから」
湯気の揺れが二人の境界を曖昧にし、
影の温度だけが互いを確かめ合う。
彼女に触れたいと手を伸ばすと、大腿部に触れた。
ぬるい湯船の中でさらに冷たい大腿部が陶器のように感じたれた。
それだけで射精感が込み上げる。
店を出ると、街の光は冷たく、水面の反射のように揺らめいていた。
夜風に触れた彼女の黒髪が、薄い影を僕の胸元へ落とす。
別れ道へ差しかかる前、
僕は喉の奥の罪を押し出すように言った。
「……このまま。
よかったら……ホテルへ行かないか」
彼女には友人が少ないから、大学にバレることもないだろう。そんな打算な背景があって言葉にした自分がどうしようもなく情けない。
一方で、その情けなさを曝け出す心地よさがあった。
彼女はわずかに目を細め、
笑いそうで、怒りそうで、飽きているような表情で言った。
「うわ、キモ。ほんと、どうしようもなく気持ち悪いですね。
先生って、そういう人でしたっけ」
その“気持ち悪い”は、
拒絶の刃ではなく、
僕を試すための微笑を逆さにしたような語感だった。
そして小さく息を吐くと、
「……でも、可哀想。
……可哀想な感じ、なんとなく嫌だから」
ゆっくりと視線を合わせてくる。
「行ってもいいですよ」
その声音は冷ややかなのに、
どこかで僕を“見捨てない”という気配を含んでいた。
わずかに距離を詰めてくれた彼女。
この時点で支配関係は決定的であった。
◆ 第四章 湯気と影の懐
ホテルの部屋は琥珀色の弱い光が沈み、
夜景が窓ガラスを滲ませながら、
部屋の奥へ淡い影を落としていた。
照明は強くせず、
影が主役になる程度に落とした。
「学生とこういうところ来るの?」
初めてであることを伝える。
「エロいね……」
このやり取りで彼女が支配側となった。
圧倒的に弱者となっているのは僕であることが決定的になった。
僕は躊躇いながら言う。
「……一緒に風呂に入りたい」
彼女は首を傾け、
その表情を一瞬だけ影に隠すと、呆れたように言う。
「先生ね……どこまで気持ち悪さを更新するつもりですか」
その言葉でさえ、
影の中では笑みのように感じられた。
「でも……いいですよ。
その弱さを、今日は聞いてあげるって決めたので」
浴室の灯りを落とすと、
湯気が濃い影のように天井へ漂い、
湯面は黒い硝子のように静かに揺れた。
湯の中で彼女は、
背後から僕の背にそっと額を寄せる。
「弱いですね……ほんと、びっくりするぐらい」
囁きの冷たさが、なぜか胸を温めた。
「でも……嫌じゃないですよ。
その弱さを向けられるのは……たぶん、私だけでしょうから」
湯気の揺れが二人の境界を曖昧にし、
影の温度だけが互いを確かめ合う。
彼女に触れたいと手を伸ばすと、大腿部に触れた。
ぬるい湯船の中でさらに冷たい大腿部が陶器のように感じたれた。
それだけで射精感が込み上げる。
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