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第9話
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「おはようございます」
朝、早めに登校して教室で本を読んでいた俺に、挨拶が聞こえた。
顔を上げると、清水さんだった。
「おはよう」
俺はそう返事だけをして、再び活字に視線を戻す。
「何の本を読んでいるんですか?」
清水さんが訊ねてくる。
俺の手元を覗いてきた。
ブックカバーをしているからどんな表紙なのか気になるらしい。
「あー。ファンタジー小説...かな?」
別に隠すことでも無いなと、カバーを外し表紙を見せた。シリーズもののファンタジー小説。来年の夏にはアニメ化も決まっている今、1番勢いのあるライトノベルである。
「本、好きなんですか?」
「んー。どうだろ。暇潰しにはなるかな。」
「どういうジャンルが好きなんですか?」
気の所為かもしれないが、やけに食い気味な質問が飛び交う。
「わりと雑読してるよ。哲学、ファンタジー、ラブコメ、純文学とかなんでも。今は、この異世界シリーズにハマってるってだけ」
「なるほど。」
うんうんと興味深そうに頷いてくる。
「.....?」
俺の知る清水沙希菜はこんな静かに俺の話を聞くタイプじゃなかった。どちらかと言えば、毒舌お嬢様キャラだったのに...。俺は慣れない彼女の違和感に戸惑う。
やはり、気づいてはくれないのだろうか?
正体を明かしたところで...な感じもするが、彼女の拍子抜けした顔を見てはみたいなと少しだけ口角が上がるのを感じた。
■■■■■
「竹中君の趣味はなんですか?」
突然そんなことを聞いてきた。
「趣味?」
「はい。なんとなく、気になるなぁと思って...」
「趣味...、趣味か...」
趣味。昔は歌って踊る事だと即答えていたのに今は一枚の分厚い壁が遮ってくる。
「なんだろ...」
何か無難な回答ねーかな。
「やっぱ、読書かな」
と、俺は答えた。
「昔は活字、見るのも嫌いだったけど最近はわりと...」
入院中、暇を持て余して本を読み漁ったなんて口が裂けても言えない。だから、俺は語尾をごまかした。けれど、彼女は疑いの無い顔で納得していた。
「なるほど。本、読むって見分を手軽に広められるのでいいですよね」
「...ああ」
「私の知り合いも竹中君を見習って欲しいです」
はぁ。本を読むのは本当に楽しいのに...とあきれ顔で笑ってきた。
「ん?」
俺はどういう意味だ?と聞き返す。
「私の知り合いに本が嫌いな人がいたんです。どんなに面白い本を渡してもゴミ箱に捨てるような人で...」
「それで、何度か私が選んで読むように勧めてみたんですけど、断固拒否されて...」
「なんだそれ。ゴミ箱とか...どれだけ本が嫌いなんだよ。せっかく清水さんが勧めてくれたのにさ。一回、読むだけ読めばいいのに」
「本当ですよね。」
本当に、困った人なんです。
そう口調はため息交じりだけれど、なぜか彼女の顔は曇っていた。
「......」
最近、彼女のこの表情をよく見る。
俺が声を掛けても届かなさそうな遠くに彼女の心がぽつんと沈んでいる。
「そうだ。竹中君。今日から午後の授業が学園祭の準備に充てられるんですが、まだ何も詳しい事知らないですよね?」
九重先生の事です。どうせ、何も説明してないんでしょう。先生も困った人です。
清水さんは思い出したように、明るくふるまう。
俺には、悲しい思い出を忘れ去るために切り替えた空元気に見えた。
■■■■■
私立宝生《しりつほうせい》学園。学園祭。
高校生にとって一大イベントとなるお祭り。
3日間に渡って文化の部と体育の部がある。
簡単に言えば文化祭と体育祭が2日間と1日、連日開催される。
「文化祭では展示と舞台があるんです。」
「展示?舞台?」
俺は理解に苦しむ単語を聞き返す。
「んー。なんて説明したらいいんでしょうか。簡単に言えば、展示は、教室を使ってカフェやお化け屋敷の出し物をするか、舞台は、体育館で劇やダンスを披露するかって事です。」
「なるほど」
「基本、1年生が展示。2年生が舞台。そして、3年生はどちらでも。と決まってるんです。私達は2年生なので舞台ですね。」
「なるほど...」
「舞台では何するんだ?」
文化祭2週間前って事はやる事は決まっているんだろう?
俺はそう尋ねる。
「はい。私達はミュージカル劇をやりますよ?」
ミュージカル...。
元アイドルとして演目は気になるとこだ。
「どんな?」
俺は彼女の顔を見た。
「ちょうど、今、彼女に台本を書いてもらっているところです。」
彼女?
清水さんはそう言って、一番前の席を指さした。
朝、早めに登校して教室で本を読んでいた俺に、挨拶が聞こえた。
顔を上げると、清水さんだった。
「おはよう」
俺はそう返事だけをして、再び活字に視線を戻す。
「何の本を読んでいるんですか?」
清水さんが訊ねてくる。
俺の手元を覗いてきた。
ブックカバーをしているからどんな表紙なのか気になるらしい。
「あー。ファンタジー小説...かな?」
別に隠すことでも無いなと、カバーを外し表紙を見せた。シリーズもののファンタジー小説。来年の夏にはアニメ化も決まっている今、1番勢いのあるライトノベルである。
「本、好きなんですか?」
「んー。どうだろ。暇潰しにはなるかな。」
「どういうジャンルが好きなんですか?」
気の所為かもしれないが、やけに食い気味な質問が飛び交う。
「わりと雑読してるよ。哲学、ファンタジー、ラブコメ、純文学とかなんでも。今は、この異世界シリーズにハマってるってだけ」
「なるほど。」
うんうんと興味深そうに頷いてくる。
「.....?」
俺の知る清水沙希菜はこんな静かに俺の話を聞くタイプじゃなかった。どちらかと言えば、毒舌お嬢様キャラだったのに...。俺は慣れない彼女の違和感に戸惑う。
やはり、気づいてはくれないのだろうか?
正体を明かしたところで...な感じもするが、彼女の拍子抜けした顔を見てはみたいなと少しだけ口角が上がるのを感じた。
■■■■■
「竹中君の趣味はなんですか?」
突然そんなことを聞いてきた。
「趣味?」
「はい。なんとなく、気になるなぁと思って...」
「趣味...、趣味か...」
趣味。昔は歌って踊る事だと即答えていたのに今は一枚の分厚い壁が遮ってくる。
「なんだろ...」
何か無難な回答ねーかな。
「やっぱ、読書かな」
と、俺は答えた。
「昔は活字、見るのも嫌いだったけど最近はわりと...」
入院中、暇を持て余して本を読み漁ったなんて口が裂けても言えない。だから、俺は語尾をごまかした。けれど、彼女は疑いの無い顔で納得していた。
「なるほど。本、読むって見分を手軽に広められるのでいいですよね」
「...ああ」
「私の知り合いも竹中君を見習って欲しいです」
はぁ。本を読むのは本当に楽しいのに...とあきれ顔で笑ってきた。
「ん?」
俺はどういう意味だ?と聞き返す。
「私の知り合いに本が嫌いな人がいたんです。どんなに面白い本を渡してもゴミ箱に捨てるような人で...」
「それで、何度か私が選んで読むように勧めてみたんですけど、断固拒否されて...」
「なんだそれ。ゴミ箱とか...どれだけ本が嫌いなんだよ。せっかく清水さんが勧めてくれたのにさ。一回、読むだけ読めばいいのに」
「本当ですよね。」
本当に、困った人なんです。
そう口調はため息交じりだけれど、なぜか彼女の顔は曇っていた。
「......」
最近、彼女のこの表情をよく見る。
俺が声を掛けても届かなさそうな遠くに彼女の心がぽつんと沈んでいる。
「そうだ。竹中君。今日から午後の授業が学園祭の準備に充てられるんですが、まだ何も詳しい事知らないですよね?」
九重先生の事です。どうせ、何も説明してないんでしょう。先生も困った人です。
清水さんは思い出したように、明るくふるまう。
俺には、悲しい思い出を忘れ去るために切り替えた空元気に見えた。
■■■■■
私立宝生《しりつほうせい》学園。学園祭。
高校生にとって一大イベントとなるお祭り。
3日間に渡って文化の部と体育の部がある。
簡単に言えば文化祭と体育祭が2日間と1日、連日開催される。
「文化祭では展示と舞台があるんです。」
「展示?舞台?」
俺は理解に苦しむ単語を聞き返す。
「んー。なんて説明したらいいんでしょうか。簡単に言えば、展示は、教室を使ってカフェやお化け屋敷の出し物をするか、舞台は、体育館で劇やダンスを披露するかって事です。」
「なるほど」
「基本、1年生が展示。2年生が舞台。そして、3年生はどちらでも。と決まってるんです。私達は2年生なので舞台ですね。」
「なるほど...」
「舞台では何するんだ?」
文化祭2週間前って事はやる事は決まっているんだろう?
俺はそう尋ねる。
「はい。私達はミュージカル劇をやりますよ?」
ミュージカル...。
元アイドルとして演目は気になるとこだ。
「どんな?」
俺は彼女の顔を見た。
「ちょうど、今、彼女に台本を書いてもらっているところです。」
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清水さんはそう言って、一番前の席を指さした。
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