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第9話 ギルドはやっぱり騒がしい

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 ギルドの扉を開けると先ほどのような慌ただしさもなく、受付の前のホールにあるテーブルに、ちらほらと冒険者が座っているだけだった。

 3つのうちの2つには相変わらず列ができており、残りの1つ、男性のギルド職員の窓口はやはり空いている。

 昨日と違う人だ。
 今日の人は細身の色白の男性で、いかにも事務員さんって感じだ。
まあ空いてるから並ばなくていいのは、時間の無駄がなくていいな。

 そう考え、真ん中の男性の窓口に向かう。すると隣の窓口の受付嬢が話しかけてきた。

「ちょっと待つニャ!そこの新人さん。新人さんはそういう趣味のひとにゃのかニャ?」

 唐突になんだか酷いことを言われた。失礼な!
 横を見ると、昨日の猫の獣人の受付嬢が話しかけてきていた。

「ん?聞こえなかったかニャ?女の子じゃなくて男が好きな趣味なのか聴いてるニャ」

「ちょちょちょっと待って下さい。何でそうなるんですか!女の子が好きにきまっているでしょう!」

 唐突に危ない趣味にされそうになるのを否定し、思っているより大きな声を出して女好きを叫んでしまった。

 恥ずかしさのあまり顔は真っ赤に茹で上がっていた。

「な~んだ。そうにゃのか。昨日も今日も、私ら受付嬢を無視して男の職員の列にいくから、そういう趣味にゃのかと思ったにゃ」

「違います!皆さんの列は混んでいて時間がかかりそうなので、こちらで用件を済まそうとしただけです!」

 受付嬢が自ら絡んでいく光景に、周りから重たい視線を感じつつ、しっかりと否定する。

「こっちあいてるにゃ。こっち来るにゃ」

 明らかに列が出来ている中、強引に隆也を呼ぶ受付嬢。
 やっと自分の番になったと頬を緩ませていた。冒険者の表情は一変しその目は、冷たく殺意すら感じる……。

 ぱかんっ!!

「のぅお~ 痛い痛いにゃ!背が縮んだにゃ!何するのにゃ!」

 そう言って、後ろに立つ女性に猛抗議をする受付嬢を尻目に、女性が頭を下げてくる。

「ごめんなさいね。私は当ギルドの受付を担当しているセリナ。こっちの煩いのが、ミーネです。昨日登録された冒険者のタカヤ様ですね。ミーネが大変失礼致しました」

 自己紹介と同時に、深く頭を下げるセリナと言う受付嬢。タカヤの視線は、一箇所に集中していた。

 スイカだ。これは素晴らしいスイカだ。
 お辞儀とともに強調される神秘の谷間に視線は吸い込まれていった。

 この胸は昨日の受付嬢さんか!

 ようやく我に返り、視線を外しお辞儀を返す。

「こちらこそすみません。はい昨日登録したタカヤと言います。よろしくお願いします」

「ふふふ。礼儀正しいのね。ホント。ミーネが迷惑を掛けたようですみません。こちらでご用件をお伺いしますわ」

 騒ぎの中、全く目立つことなく、なぜか男性職員はいなくなっており、自然とその席にセリナは座っていた。

「あっ大丈夫です。ありがとうございます。実は今日はクエストがどんなのがあるのかを見にきたのと、僕みたいな軽量のスピード重視の冒険者にお薦めの防具屋を紹介して頂きたくてきました。あとはギルドの資料室が使えるか確認したいと思ってます」

 淡々と用件を伝えてしまったが、ニコリと微笑み掛けるセリナさんはドキリとする程綺麗だ。

「はい。承りました。まずは防具屋ですが西区の工房街にある【グーボ防具店】がお薦めです。こちらに紹介状をしたためておきますので、ご活用ください。また資料室は右の階段を登って頂ければ突き当たりにございます。冒険者様であればどなたでもご利用いただけますし、紙とペンを購入、もしくは持参頂ければ書き写すことは可能です。ぜひご活用ください。
 クエストに関しては両壁のクエスト掲示板。タカヤ様の右手側がE~Gの低ランククエスト。左が中ランクB~Dクエストの掲示板となります。S及びAは左手の階段を登った2階に貼り出されますので、ランクを上げて頂ければご利用いただけるようになります。もしも字が読めないようでしたら近くの子供に声をかけてみてください。以上簡単に説明致しましたが、大丈夫でしょうか?」


 小冊子のギルド説明によると、冒険者ギルドはGからSの8ランクに分かれているとのことだった。Gから始まり一番上がSランクとなり、登録したものは全員G、もしくは戦闘試験を受ければFランクからはじまり、最上位のSは大陸全土にも5人しかいないまさに人外との事だった。

 Aランクも英雄級の実力があり、5都市の大ギルドマスターのいずれかの推薦と、過半数以上の賛成多数でしか昇格出来ない狭き門と記載されていた。

 そしてクエストにはいくつか種類があり、常設依頼はわざわざ受付で処理しなくても依頼の品を持ってくるだけで完了。
 ランクの一つ上の依頼まで受けることが出来き、ランク下の依頼は受けられないとの事だった。

 これは、依頼成功率のUPと後継の育成の為、ランクが高い冒険者が下の依頼を受けないようにするためとの事だ。

 それ以外の依頼は、依頼掲示板に貼られている紙を剥がして持ってくるというもので、依頼の内容も採取・討伐・駆除・調査・護衛等様々ある。

 また、仕事が認められると指名依頼が来ることもあり、これは商人や貴族、またはギルドが信頼度の高い冒険者を指名して依頼をすると書かれていた。

「はい。まずは何回か採取のクエストでも受けてみたいと思います。それと防具屋の紹介と資料室の件。ありがとうございます」

「いえいえ。またいつでもお待ちしております」
 にこやかに笑みを浮かべ、軽くお辞儀をするセリナに、軽くお辞儀を返しクエスト掲示板に向かう。


 ランク:G
 依頼内容:常設依頼 ➖薬草採取➖
 報酬:3本あたり銅貨30枚
 数量:常設依頼の為 上限なし
 その他:薬草は根を残し、根元から切って採取。毒草が非常に似ている為注意。

 ランク:G
 依頼内容: ➖手紙配達街中のみの配達➖
 報酬:1枚銅貨10枚
 数量:5通 
 期限:受領後24鐘まで
 その他:場所は受付にて確認

 ランク:G
 依頼内容: ➖大鼠の納品➖
 報酬:1匹銅貨30枚
 数量:1日10匹迄納品可能 
 期限:受領後2日
 その他:討伐部位ではなく大鼠そのものを納品。買取額は納品された状態にて査定

 流石にGランクはお使い系、採取系が多いな。
 この大鼠って何に使うんだろう。Gランクの討伐依頼としても安すぎないか?
 やっと追いかけて捕まえて銅貨30枚って。割に合わないんじゃ。

「何かお困りですか?」
 悩んでますオーラでも出てたのだろうか、後ろからセリナさんが声をかけてくれた。

 やはり知らぬ間に窓口の席はあの男の人に戻っている。

「セリナさん。すみません。薬草などの報酬に比べて、大鼠の討伐納品報酬が少ない気がして」

「あ~。そういう事ですね。それはその他の部分を読んで頂ければ分かると思います。大鼠等の討伐依頼には買取での報酬がメインとなっていますので、討伐報酬自体は低く設定してあるんです。大体大鼠ですと1匹いれば10体は周りにいるので買取額と合わせて1匹で銅貨60枚、10体で銀貨6枚は稼げるかと思いますよ」
 と言ってセリナさんはFランクの掲示板の前に行き一枚のクエストを指し示す。


 ランク:F
 依頼内容:常時依頼 ➖ゴブリン討伐➖
 報酬:1体あたり銀貨1枚銅貨40枚
 討伐証明部位:右耳
 数量:常時依頼の為 上限なし
 その他:1体1体は大人の一般男性程の強さだが、群れている場合に注意。5体まではバラバラに襲ってくるがそれ以上、特にゴブリンリーダー以上の個体が統率している場合危険。


「こちらのように部位証明以外買取部位がない魔物の場合、討伐報酬自体が少し高めになっています。あとは魔物の場合心臓近くに魔石が埋まっているので、こちらも買取対象になってます。ちなみにゴブリンの肉は、臭くて食べられないので買取はしておりません。まあ魔物の部位の中で一番単価としては高額なのが魔石となりますが。ちなみにゴブリンの魔石は30銅貨で買い取ります」

「ありがとうございます。なるほど買取部位も考えて解体する必要があるんですね。ところでゴブリンの耳って何に使うんです?」

 買取部位がないと言いながら討伐部位を出す意味があるんだろうか。討伐部位証明はギルドカードに出ているのに。

「はい。ゴブリンの右耳には小さなイヤリングが付いています。これが耳と一緒に加工すると錬金術の材料になるんです」

「あ~確かにイヤリングついてましたね。ありがとうございます」

 一通りクエストを確認し、薬草依頼と大鼠のクエストを受けることにした。

「はい。大鼠のクエスト受注いたしました。期限は丸2日間となります。薬草は常時なので、いつでもお持ち下されば大丈夫です。それでは初依頼お気をつけて、行ってらっしゃいませ」

「はい。いってきます!」

 何故か世話を焼いてくれるセリナさんに頭を下げ。ギルドを後にした。
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