大きい彼女と小さい悪魔

maya

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私はひたすら走って大林くんを探した。

会って、私が気づいた私の本当の気持ちを聞いてほしかった。


私が裏庭に行こうと外に出ると、
一階の校舎の窓の向こうに、大林くんが男子達と歩いているのが見えた。

私はそのまま外から大林くんが見える窓まで走った。

「大林くん!!」

天使が、窓の外の駆けて来る私に目を見張る。
一階の窓はちょっと高い位置にあるけど、私には関係ない。

私は窓に向かって両腕を高くあげて、校舎の中にいる大林くんの両脇に手を差し込み、そのまま外の裏庭に引っ張り出した。

「!!」

「おおっ」

「すげー…」

男子達のどよめく声が聞こえる。
そんなのはお構いなしに、私は胸のあたりにおさまった天使を抱きしめて、まるでスローモーションのように地面に倒れた。

「わたしっ、今まで散々デカいって言われてきて、大林くんにだってずっとコンプレックスを刺激されてたっ。

でもっ、大林くんは他の男の子とはちがうっ…!

私を蔑んだり馬鹿にしてるんじゃなくて、
大林くんが私に言う言葉は、私が普通の女子なんだって気づかせてくれた。

だから私は、大林くんの前ではありのままの私でいられる気がしたの。

大林くんの方が、小さくて可愛いし、私なんか全然不釣り合いだって分かってる。
気にしてないなんて、嘘は言わない。

でも、でも私にはーーー」

私は抱きしめていた腕をさらにギュッと強くした。



「大林くんが誰より大きくてかっこよく見える。

大林くんの隣が、一番安心するの。」



私の心臓がギューーッとなって、どくんどくんと音をたてた。
自分の本音を話したのはいつぶりだろう。
こんな滑稽な告白、絶対に恥ずかしい。
でも、そんなことはどうでもいいことなんだと大林くんがいるから思える。

しばらくして、大林くんが私の胸の当たりで小さく呟いた。

「…めいこ、それって俺が好きってこと?」

私の心臓がさらに爆発しそうなくらい音をたてた。

「え!う、うん!たぶん!!」

「…たぶん?」

「じゃなくて、好き!好きです!!」

「そんなに好きなの?」

「う、うん…だ、大好き…!」

「へぇ。じゃあ、その大好きな彼氏にプレゼントを貰ったら、嬉しいよな?」

「うん!ーーーー…へ??」


私が素っ頓狂な声を出すと、唐突に体を起こした大林くんは、後ろの校舎の中にいる男子から紙袋を受けとって私の前に差し出した。

「これ、めいこの誕生日プレゼント。」

「たん…え!!??」

そういえば、今日は私の誕生日だった。
ここ数日がハードモードだったのですっかり忘れていたが。
天使は日差しを浴びて明るい栗色の髪を輝かせながら、ふわぁと欠伸した。

「めいこって名前だからまさかと思って、昨日めいこの生徒手帳見たら案の定今日が誕生日で焦ったわー。」

「え…じゃあ、昨日先に帰ったのって…」

「単発でバイト。」

「お昼すぐ出て行っちゃったのも」

「駅前でプレゼント買ってた。」

確かにそれで今までの大林くんの言動に納得できる。
でも、でも!
私はプレゼントと天使の顔を交互に見て、安堵とよくわからない怒りで顔をくしゃっと歪めた。

「それなら、言ってくれれば良かったのに…大林くんずっと冷たかったし…!」

「それはめいこがあんまりにも鈍いから、俺がどれだけ大事な存在か気づかせるための計画だよ。計画。」

「え、計画!!?」

「おかげで、自分の気持ちに気づけてよかったじゃん。」

まるで自分は犯人じゃありませんという余裕尺尺な表情の大林くんに、私は目眩がしそうだ。

「よ、よくないっ!!わたし、大林くんを傷つけたと思って、謝りたいけど、うまく言葉にできなくてずっと悩んで…っ」

「…めいこ。」

「ふぇ…。」

突然、いつかのように、大林くんが私の頬を両手でつつんだ。

そして、ぷっくりとした薄紅色の唇が私の薄い唇の上に重ねられた。
どのくらいたったか分からない後、大林くんは私の下唇を軽く噛んでペロリとなめて、いつかのように蕩ける笑顔でこう言った。



「誕生日おめでとう。大好きだよ。」



真っ白な肌を少し桃色に染めた大林くんは本当に天使も負けるんじゃないかっていうくらい天使だったが、私は顔を真っ赤にして大林くんの肩を押して距離をとる。

窓の向こうで囃し立てる男子達の声も耳に入らない私は、すっと立ち上がった。

日の当たる裏庭に風が吹く。
大林くんの明るい栗色の髪が揺れて、長いまつ毛に影ができる。

こんなに、こんなに可愛くて、まるで雲間から降る日差しを通って舞い降りてきた天使のようなのに。

「…あ、あ…」

「あ?」

ぷるぷる震えながら、私は言った。


「悪魔!!大林くんは、天使の顔した悪魔だ!!!」


「…。」

しーんと静まり返った裏庭で、私の叫び声が響く。

固まる男子をよそに、大林くんは私の言葉を聞いて、口角をゆっくりと上げた。

そして、その薄紅色の唇からは想像できない声色で言った。



「天使なんかいるわけねぇだろ。」



顔を真っ赤にして呆然とする私には、その背中に一瞬だけ悪魔の羽が見えたのだった。















ちなみに、プレゼントは8cmのハイヒールだった。

大林くんいわく、これを履いて恥ずかしがりながら駅前を歩く私が見たいらしい。

ほんと悪魔!!


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