悪役令嬢に転生したようですが、知った事ではありません

平野とまる

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第4章 乙女ゲーム編

お帰りなさい

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 何とかナタリーを寝しつかせ、皆さんを中に招き入れます。
 何か言いたそうにしていらっしゃる事には気付いておりましたが、先に席に座って頂く事にしました。
 こう言う時は本当に無駄に豪華な部屋で良かったと思います。
 全ての椅子を集めたら、何とか人数分足りましたし。空間的にも余裕がありますからね。

「姫様、黙っていようと思っていたのですが、我慢できません。
 何故姫様の傍使えは何もしないのです?」

 私以外の全員が席に着いたタイミングで、一応顔は分かる程度の伯爵家の令嬢に言われてしまいます。
 ゲームでの取り巻きだった子達の中で、多分一番身分的に上なのでしょうね。

「先程も申した通り、とても動ける状態ではないのです」

「だからと言って、姫様が動かれるのもおかしいでしょう。
 私達の傍使えは近くに居るのですし、私達が動く必要はないと思うのです」

 まるでそれが正しいかのように言い切られ、何とも言えない気持ちになります。
 確かにこの国での常識では私の方がおかしいのですよね。
 それに、今の事情が事情ですからどう言ったものか。
 悩みながらも口を開きます。

「お心遣い誠にありがとうございます。
 ですが、私の部屋の物を無闇矢鱈に触れられたくないのです。
 皆さんのお気持ちは大変嬉しいのですが、マリベルさんとテレーゼさんはともかく貴女方との交流は今までそんなに深くなかったでしょう」

 そんな私の言葉にショックを受けたご様子の皆様。
 いや、だって事実ではないですか。
 寧ろそんな反応をされても困惑しかありませんし、でも、マリベルさんとテレーゼさんが妙に誇らしそうなも微妙な気持ちになりますね。
 そんな中、とばっちりでこの部屋までついてきたクラスメイトさんは、最早仏頂面で黙っていらっしゃいますし。
 と言うか、何故付いてこられたのでしょう? 集団心理と言う奴でしょうか。

「ひ、酷すぎます、姫様」

「酷いも何も事実でしょう。
 昨日の今日で急に態度を変えろと言われても、私には無理です。
 ただ、皆さんのお気持ちを否定したり蔑ろにしたい訳ではないのですよ。
 単純に、関係を築くのには時間も必要だと、私はそう思うのです」

 かなり言葉を選んだつもりですが、皆さん視線を下げてしまわれました。
 ええい、もうまだるっこいですわ!

「ああもう、今からお茶の準備をしますので元気を出して下さい!
 私の淹れるお茶なんて飲めないと仰るのでしたら、それで構いませんけど」

「お、お待ち下さいませ!」

 全員が驚愕の表情を浮かべる中、いの一番に言葉を発されたのはテレーゼさんでした。

「そんな、姫様がお茶を淹れて下さるだなんて、あまりにも畏れ多すぎます!」

「黙らっしゃい!」

 あっ、つい大声に大声で返してしまいました。
 何とはしたない。
 ただ、雰囲気は緊迫した物になってしまいましたし、落ち着いて話せそうなのは好都合ではあります。
 以後もっと注意するとして、このまま言葉を続けましょう。

「私は私の好きにやります。
 皆さんが私の事を好いて下さると言うのでしたら、聞き入れなさい。
 私がこう言うスタンスだったのは、マリベルさんならよくご存知ですわね?」

 強めに言った方が良いと判断して、かなり高圧的な物の言い方になってしまった気がします。
 ですが、やはりこれも致し方ないでしょうか。
 判断が難しいところです。

「た、確かに姫様はよくご自身でお茶を振舞って下さいましたね」

「そう言う事です。
 私と親しくなりたいと思って下さるのでしたら、受け入れて下さい。
 では、お茶を淹れて参ります」

 有無を言わさぬように言い切り、そのまま踵を返します。
 ちょっと目まぐるしく展開がありすぎて、少し頭痛がする気もしますね。
 転校生さんがどんな言動を今後取るかで、また色々変わってくるでしょうし。
 現時点ではとにかく油断せずに気を引き締めなければなりません。

「姫様、その、私も以前の様にお手伝いしても宜しいでしょうか?」

「わ、私も手伝わせて下さい!」

「マリベルさん、テレーゼさん」

 考えつつお茶の準備をしていたら、お二人に声を掛けて頂きました。
 意固地になる必要もありませんし、確かに一人で運ぶには結構な量になってしまいそうですからね。
 ここは手伝って頂く事にしましょう。

「分かりました、宜しくお願いします」

 笑顔でお礼を言い、そのまま運ぶのだけ手伝って頂きます。
 お菓子は保存の効く物がありますので、そちらも運んで貰いましょう。
 あまり面識のない方々とお話する事自体は嫌いではないのは、不幸中の幸いですね。
 それでも、普段のように気楽に構えていられないのが本当に勿体無い気がします。

 ああ、でもお話しが長くならないようにしなければなりませんね。
 ナタリーの事も心配でなりませんし。
 本当次から次へと、転校生さんとの接触もない時点ですのに、頭が痛いですわ。



 予想を遥かに超える、とても静かなお茶会になりました。
 お茶もお菓子も私の手作りだと分かると、皆さん本当に黙ってしまわれましたし。
 個人的に落ち着くのが目的でしたから、そのままにしてまいましたけど。

 どうも様子がおかしいと気付いたのは、今日の全ての授業が終わる鐘が鳴り響いた時で。
 元々解散の時間でしたので、何だか照れたご様子を見せる皆さんを予定通りお見送りします。
 うーん、違和感を感じますけど、原因が思いつきませんね。

 それはともかく、授業に出れない。
 そして、出たとしてもまともに受けられない現状は、少しでも早く何とかせねばならないでしょう。
 勿論個人で勉強は続けますが、それだけでは限界がありますからね。
 メルベル老もマリア婦人もどんな反応をされるのか、かなり不安ではありますし。

『大丈夫よ、ちゃんと私が守るからね』

「ありがとうございます、ディア様」

 ディア様のお言葉に返事をして……えっ?

「で、ディア様!? 大丈夫だったのですか?
 ああ、良かった! 本当に良かった!」

 感激のあまりに涙が溢れ、周りがよく見えません。
 ああ、これではディア様のお姿が見えないではないですか。
 早く収まって下さい。

『むぅ、元気だったらこんな事にはならなかったのですよ。
 でも、あの卑怯者ったらやってくれたからね。
 あーもー、悔しいったらないわ。
 あの小僧にも借りが出来ちゃいましたし』

 プリプリと怒りを表現されるディア様。
 ふと繋がりと言うより、ある場所から感情が流れてきている事に気付きます。
 もしやと思って手に取れば、淡く輝いている殿下から頂いたブローチ。

「もしかして、ディア様ですか?」

『むー、本当はここは嫌なんだけど、でも、ここほどアメリアへの気持ちが溢れている物もないし。
 それに、ここに逃げ込む時は本当に危なくて、緊急事態でしたから。
 もう、助けられるなんて本当に悔しい!』

 恐る恐る聞いてみると、少しズレた回答が返って来ます。
 それに思わず笑みが溢れてしまいました。

「ディア様が無事で、本当に嬉しいです」

『……ごめんね、アメリア。
 あー、もう、抱いて欲しいのにこれじゃ抱いて貰えないじゃないですか!
 もう、忌々しいわ! 少しでも早くあいつもとっちめましょう!』

 ディア様の力強い思考に、本当にご無事だったんだって改めて安心出来ます。
 そのせいでしょうか、また視界が歪んできました。
 慌ててハンカチで目元を抑え、気を鎮めるために深呼吸をします。

「ディア様、色々とお聞きしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」

『勿論! アメリアならいくらでも良いわよ』

 上機嫌に思考を飛ばされるディア様。
 そのタイミングでノックの音が響いてきます。
 はっと体を固くしてしまいますが、そんな私にディア様の思考が流れてきました。

『むー、折角の良いタイミングで。
 ああ、でも小僧か。
 ……もう! これで貸し借りなしだからね。
 アメリア、貴女の大好きな小僧が来たから出てあげて』

 どこか不服そうなディア様のお言葉。
 そのお陰でどなたがいらっしゃったか、知る事が出来ました。

「ありがとうございます、ディア様」

『うん、だからこのブローチ今は捨てたらダメよ』

「勿論、一生大切にしますわ」

『……私がここから出たら捨ててくれても良いのに』

 やはりディア様は自分のお気持ちにどこまでも正直ですのね。
 自然と苦笑いが浮かんでくる中、切羽詰った殿下の声が聞こえてきます。

「大丈夫か、アメリア!
 何かあったのか!」

「ああ、申し訳ございません。
 ただいまお開け致しますわ!」

 急いで言葉を返せば、外が静かになります。
 扉を叩く音と殿下の大声に、嬉しさと申し訳なさを感じて、何だか色々と複雑ですわ。
 ふぅっと息を吐きだし、ほんの少しですが感情が落ち着いたのを実感して扉へと向かいます。

「ああ、無事で良かった。
 色々まずい事になっている、中で話そう」

 深刻そうな殿下の表情と声色から、何か重大な情報を得られたのだと、そう感じます。
 そのまますぐに殿下を招き入れ、しっかりと施錠しました。
 これは心して聞かねばならないでしょうね。

「私も殿下にお話ししたい事が出来ていたのです。
 ああ、でもこの後ラクサスとフランソワーヌ様がいらっしゃいますね。
 一度にお話しした方が良いでしょうし、このままお待ちしますか?」

 テーブルまでご案内した所で思い出し、それを言葉にしました。
 私の言葉を聞いて、悩むような素振りを見せる殿下。
 しばらく黙られた後、結論を導き出されたようで口を開かれます。

「ここまで来れるのか正直言って怪しい。
 そのくらい事態は滅茶苦茶な事になっているんだ。
 ただ、アメリア嬢の言う事も最もでもあるし、少し待ってみよう。
 それで来なかったらお互いに得た情報を話す。
 これでどうだろうか?」

「異論はございませんわ。
 それでは、お茶の準備をしてまいりますので少々お待ち下さいませ」

 私の言葉に頷かれた殿下を見届け、本日何度目かのお茶を淹れます。
 今回はお菓子は要らないでしょう。
 色々と情報交換をするのが目的ですし。

『うー、私もアメリアのお茶を飲みたいー』

「ふふふ、飲んでも良いのですよ、ディア様」

『そう言う訳にもいかないのですよ。
 あーもー、忌々しい』

 お茶の準備をしていると、物凄く不満そうに呟かれるディア様。
 不思議に思ったのですが、それも皆様が集まってからにした方が良いと判断します。
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