奪われし者の強き刃

ゆうさん

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第2章 vs陸王

第2章19話 悠vs艮 最強の実力

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氷室が坤と対峙していた時と同刻、悠は『ミノタウロス』の力を得た艮と互角の勝負を繰り広げていた。

 「流石だ悠。そのただの刀で今の俺と互角とはな。」

 「それはどうも。」

『ミノタウロス』の力を手にした艮のパワーとスピードは会議の時より格段に上がっていた。さらに、悠たちを囲っている霧を自由に形を変えてまるで迷宮の様に壁を生成して攻撃の妨害や奇襲して盤面を有利に進めていた。

 「流石に壁は面倒だな。どうしたもんか。」

 「戦っている最中に考え事とは余裕だな。」

艮は背後から大きな斧を振り下ろした。その攻撃を悠は『夜行』で軌道をずらし、瞬時に反撃したがやはり霧の壁により憚れた。

 「やっぱりめんどくさいな。」

艮は坤や巽の様に2つ能力を持っていない代わりに霧の操作が坤より精密に扱える。坤が霧を出すだけなのに対して艮は霧の大きさ・形・出てくる魔物の数など霧の扱いに長けていた。そのため『ミノタウロス』の力を得た今、さらに精密な霧の操作が可能になっていた。

 「いいぞ、楽しいな悠。こんな戦いを待っていた。」

 「そうかい。『夜行流一刀術 朧月夜《おぼろづきよ》』」

悠は囲っている霧の溶け込むように姿をくらました。『朧月夜』は独特な足運びと緩急のある動き、夜行流一刀術の性質によって悠が瞬時にあちらこちらに移動しているように見せて次第に悠が複数人いるように見せ、相手を惑わす。

 「どいつが本物だ?」

悠は艮に気づかれないように背後に回り、艮に首に向かって刀を振った。しかし、霧が悠の攻撃に反応し攻撃を防いだ。

 「なっ!」

 「そこか!」

艮の斧による反撃に悠は刀で防御した。

 「なるほど、完全に隙をついたと思ったんだが。霧で囲ったのはそういう使い方もできるからか。」

 「そうだ、この霧は相手の攻撃に反応して自動的に防御する。つまり、ここは俺のテリトリーだ。このままでは俺に傷1つ付けられないぞ。」

 「絶対防御に変幻自在の霧、さらに『ミノタウロス』のパワーとスピードか。これは確かに厄介だ。」

悠は夜行を鞘に納めた。

 『夜行流一刀術 夜刀神』

抜刀術で艮との間合いを一瞬で詰め攻撃したが、この攻撃も防御されてしまった。

 「やっぱりこんなんじゃ無理か。」

 「どれだけ早く攻撃しようと無駄だ。この絶対防御は破られない。」

 「さて、次はこっちの番だ。」

艮は霧を自由自在に形を変えながら悠の動きを制限しながら大きな斧で攻撃を繰り返し続けた。悠は刀を使って動きを制限されながらも完璧に捌いていた。捌きながらも反撃をしていたがすべて霧によって防御されてしまった。

 「攻撃の隙に反撃をするとは流石の戦闘センスだ。あの乾がやられたのも頷ける。だが、今はあの時のような特殊な武器はない。そのただの刀だけで後どのくらい持つかな。」

 「おいおい、俺の武器を馬鹿にしてたら足元すくわれるぞ。それに俺の武器の中に『ただの武器』なんて一つもないんでね。」

 『夜行流一刀術』

悠は構えるや否や艮に向かって真っすぐ突っ込んでいった。

 「もう策がなくなったのか。」

艮は突っ込んでくる悠に合わせて斧を振り下ろした。

 『新月《しんげつ》』

艮が斧を振り下ろした瞬間、悠は周りに溶け込むように消えた。

 「消えただと!だが、絶対防御がある限りお前に居場所はバレバレだ。」

次の瞬間、艮の背中に切られたような痛みが襲った。

 「切られた?なぜだ。霧のよる防御があるはず。」

続けざまに右脇腹までも切られた。そして、少し離れたところに悠が現れた。

 「お前どうやって防御を潜り抜けた。」

 「ちょっとした高等技術を使って完全に気配を消しただけだ。」

 「気配を消しただと?」

 「あぁ、何回かの攻撃で分かったが霧の防御は俺の気配や殺気に反応してたからな。だったらそれを消して攻撃したら当たるってことだ。」

『夜行流一刀術 新月』は辺りが暗ければ暗いほど効果を発揮する移動術。月が出てない真っ暗な夜の様に足音のみならず気配すら完全に消して、瞬時に相手の視界から消えることで消えたように見せる。

 「『夜行流一刀術』の真髄は緩急のある動きと無音からの攻撃だからな。でも、流石に気配を消すのは骨が折れる。」

 「さて、これでトントンかな。やろうか。」

悠と艮は激しくぶつかり合った。
お互い互角の戦いを繰り広げている最中、悠が艮の攻撃に反応できずに左腕を切り落とされてしまった。艮は間髪入れずに悠の左鎖骨から右脇腹に向かって深い一撃を与え、悠はその場で倒れてしまった。

 「倒した。ついに師団長を倒したぞ!」

艮はあまりの嬉しさに雄たけびを上げ、囲っていた霧をといた。しかし、次の瞬間艮の左鎖骨から右脇腹に切られ、深い一撃を食らった。

 「は?」

艮が悠の方に目をやるとそこには、先程確実に与えたはずの傷ひとつなく五体満足で立っている悠の姿があった。

 「どういうことだ?」

 「『夜行流一刀術 胡蝶之夢《こちょうのゆめ》』。この技は切った対象物に直前に刀身に塗った幻覚作用がある毒を注入して相手に都合のいい幻覚を見せる。いい夢は見れたか。」

 「幻覚?いつから?」

突然の出来事に艮は理解が追い付いていない様子だった。

 「『新月』でお前に近づいて切った後からだ。今回はかなり強い毒を使ったから毒が周るのも早かった。」

 「ここまでしてもお前に勝てないのか。」

 「会議で会った時より確実に強くなっていたよ。敵ながら天晴だ。」

悠のその言葉に艮は思わず涙を流した。

 「はっ、早く殺せよ。もう動けねえから。」

 「あぁ、楽しかったぞ艮。『夜行流一刀術 夢幻泡影《むげんほうよう》』」

優しい一撃が艮の首を切り落とした。

 「安らかに眠れ。」
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