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心の戦場
18.歓迎試合・心の戦場
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(負けたのか)
龍也はあまりにも突然の出来事に心がついてこなかった。ただ、そこにあるのは後悔であった。
あの時手が震えなければ、そうすればもっと戦いらしくなったのでないか。そう思うことしかできない自分自身の弱さに怒りすら覚えていた。
龍也がそんな感情になった事は今まで一度もなかった。友と一緒にこの手のゲームをしているときでも、負けて悔しい、やり直したい、もう一度なんて思う感情はなかった。
それは、きっと龍也が初めて本気でやってなにもできなかったからなのだろうが、今の龍也にはこの感情の原因を理解出来てはいない。
「ほんと、ごめん。私の作戦ミスだった」
彩華がボイスチャットで皆に謝罪する。今回の待ち伏せ作戦を指揮していた彼女からしても、今回の奇襲はあまりにも突然であり、対応することが出来ていなかった。
「いや、あやの所為じゃないよ。俺があの突撃の時にダウンさせてれば、こんなことにはことにはなってない」
そんな徹と彩華の話を聞いた時、龍也の心の中で自身のプレイを振り返った。
(俺はどうすれば正解だったんだ?徹や、あやのようにこうするべきという答えをもっているのか?
いや、そもそも、あの奇襲がわかっていたとして、勝てたのか?)
龍也は先の戦闘で味わった敵の来ない間の緊張。そして、早く来てくれとすら祈っていたにも関わらず突然の敵の出現に手が震え、あれほど近くにいた敵にダメージを与えることが出来なかった自分を思うと、どんなに頑張っても今の自分にはあの状況を打開することはできないんじゃないかと痛感している。
「わ、私も全然、衛生兵なのに援護できませんでした。ごめんなさい」
「ううん、恵ちゃんは何も悪くないよ。初心者なんだし、これから練習で慣れていけばああいうときでもきっと動けるようになるよ」
「ほんとうに?」
(そうなのか?)
彩華の言葉に恵は返事を返し、それを聞いていた龍也は心の中で疑問した。
「もちろん。...ていうか。歓迎試合っていってたのに本気出しすぎじゃない先輩たち」
「確かにそれは思った。もうちょっと花を持たせてくれてもいいよな」
「ある意味、eスポーツ部の歓迎試合なんじゃないかな。大会のレベルを教えるために」
彩華と徹の愚痴に智が割って入った。
「なるほど、私たちのレベルはまだまだだって言いたいわけか」
「きっとね。だから見返せるように頑張ろう。まだ自分と徹君は生きているから、一矢報いよう」
「そうだな」
やられた龍也達の画面は、まだ生きている徹と智の画面に切り替わっていた。
動けば普通に索敵兵のマップに移るようになってしまった徹と、未だ発砲をしていないためマップには映らない智。
今二人は轟一神率いる第3グループのマップに移らないように移動をしていた。
「どうする智君。待ち伏せるか?」
「いや、出来ればすぐにでもいった方がいいかも」
「場所がわかってる内にか」
「うん。時間がたって移動されると索敵兵のいないこっちが不利だから」
「でも、俺はもう動いたら映るぞ」
「そこは同じ手を使わせてもらおう」
「なるほど了解。最低一人一キルってことで」
「よし、いこう」
*
「先輩このあとどうします?」
「ん?そりゃあ、他の奴等を探して倒す」
「いや、そうですけど」
茂は一神にこのあとの行動を確認したが、はっきりとした答えは返って来なかった。
「とりあえず。移動はしますか。位置バレしてるし」
「なら、とりあえず上にいこう」
「どうしてですか?」
「上の方が有利だろ?」
「さっき引いたのが待ち伏せてたら?」
「わかってて聞いてるだろ」
茂の問いかけに一神は笑って答える。
「はい、はい、数で押す。……ですね」
「いくぞ!目指すは勝利のみ!」
*
「とりあえず。上の階に来たけど降りて、別ルートでいってたらどうする?」
「もう、そしたら、諦めてアイテムが出てくるのを待つだけ」
徹は龍也達が殺られた5つほど上の階で待機し、智は二つ上の階で待機しながら話していた。
すると、画面の右上にキルログが流れる。
「海藤達も殺られたか」
「みたいだな。それも全滅か」
海藤達、第四チームのキルログが五人同時に出たため、全員がダウンし殺られたことが伺えた。
それと、向かいに座っているリアル海藤が結構な声をあげたためキルログが無くても状況がわかっただろう。
「徹君。先輩達は臆することなく上に来たよ。
僕なら絶対に考えられないけどね」
「よしなら」
「挟み撃ちだ」
龍也はあまりにも突然の出来事に心がついてこなかった。ただ、そこにあるのは後悔であった。
あの時手が震えなければ、そうすればもっと戦いらしくなったのでないか。そう思うことしかできない自分自身の弱さに怒りすら覚えていた。
龍也がそんな感情になった事は今まで一度もなかった。友と一緒にこの手のゲームをしているときでも、負けて悔しい、やり直したい、もう一度なんて思う感情はなかった。
それは、きっと龍也が初めて本気でやってなにもできなかったからなのだろうが、今の龍也にはこの感情の原因を理解出来てはいない。
「ほんと、ごめん。私の作戦ミスだった」
彩華がボイスチャットで皆に謝罪する。今回の待ち伏せ作戦を指揮していた彼女からしても、今回の奇襲はあまりにも突然であり、対応することが出来ていなかった。
「いや、あやの所為じゃないよ。俺があの突撃の時にダウンさせてれば、こんなことにはことにはなってない」
そんな徹と彩華の話を聞いた時、龍也の心の中で自身のプレイを振り返った。
(俺はどうすれば正解だったんだ?徹や、あやのようにこうするべきという答えをもっているのか?
いや、そもそも、あの奇襲がわかっていたとして、勝てたのか?)
龍也は先の戦闘で味わった敵の来ない間の緊張。そして、早く来てくれとすら祈っていたにも関わらず突然の敵の出現に手が震え、あれほど近くにいた敵にダメージを与えることが出来なかった自分を思うと、どんなに頑張っても今の自分にはあの状況を打開することはできないんじゃないかと痛感している。
「わ、私も全然、衛生兵なのに援護できませんでした。ごめんなさい」
「ううん、恵ちゃんは何も悪くないよ。初心者なんだし、これから練習で慣れていけばああいうときでもきっと動けるようになるよ」
「ほんとうに?」
(そうなのか?)
彩華の言葉に恵は返事を返し、それを聞いていた龍也は心の中で疑問した。
「もちろん。...ていうか。歓迎試合っていってたのに本気出しすぎじゃない先輩たち」
「確かにそれは思った。もうちょっと花を持たせてくれてもいいよな」
「ある意味、eスポーツ部の歓迎試合なんじゃないかな。大会のレベルを教えるために」
彩華と徹の愚痴に智が割って入った。
「なるほど、私たちのレベルはまだまだだって言いたいわけか」
「きっとね。だから見返せるように頑張ろう。まだ自分と徹君は生きているから、一矢報いよう」
「そうだな」
やられた龍也達の画面は、まだ生きている徹と智の画面に切り替わっていた。
動けば普通に索敵兵のマップに移るようになってしまった徹と、未だ発砲をしていないためマップには映らない智。
今二人は轟一神率いる第3グループのマップに移らないように移動をしていた。
「どうする智君。待ち伏せるか?」
「いや、出来ればすぐにでもいった方がいいかも」
「場所がわかってる内にか」
「うん。時間がたって移動されると索敵兵のいないこっちが不利だから」
「でも、俺はもう動いたら映るぞ」
「そこは同じ手を使わせてもらおう」
「なるほど了解。最低一人一キルってことで」
「よし、いこう」
*
「先輩このあとどうします?」
「ん?そりゃあ、他の奴等を探して倒す」
「いや、そうですけど」
茂は一神にこのあとの行動を確認したが、はっきりとした答えは返って来なかった。
「とりあえず。移動はしますか。位置バレしてるし」
「なら、とりあえず上にいこう」
「どうしてですか?」
「上の方が有利だろ?」
「さっき引いたのが待ち伏せてたら?」
「わかってて聞いてるだろ」
茂の問いかけに一神は笑って答える。
「はい、はい、数で押す。……ですね」
「いくぞ!目指すは勝利のみ!」
*
「とりあえず。上の階に来たけど降りて、別ルートでいってたらどうする?」
「もう、そしたら、諦めてアイテムが出てくるのを待つだけ」
徹は龍也達が殺られた5つほど上の階で待機し、智は二つ上の階で待機しながら話していた。
すると、画面の右上にキルログが流れる。
「海藤達も殺られたか」
「みたいだな。それも全滅か」
海藤達、第四チームのキルログが五人同時に出たため、全員がダウンし殺られたことが伺えた。
それと、向かいに座っているリアル海藤が結構な声をあげたためキルログが無くても状況がわかっただろう。
「徹君。先輩達は臆することなく上に来たよ。
僕なら絶対に考えられないけどね」
「よしなら」
「挟み撃ちだ」
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