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閑話.おまいり。
年が明けて元旦。じい様がいなくなって初めての正月。
浅尾家の朝は正月でも早かった。じい様の仏壇へお茶とご飯を供えると皆で手をあわせる。
「忌中じゃないから初詣に行かない?」
「喪中なのにいいの? 行かないのが普通なんじゃないの?」
父の言葉になんとなく聞きかじった知識で応えるタクミ。
「忌中が明けてるし、僕たちが前を見ようとしてるんだから問題ないよ。気分が滅入ってるなら話は別だけどね」
「そんなものなの?」
夫の言葉に疑問を投げかける。
「そんなもんだよ。それにいつまでも、くよくよメソメソしてたらお義父さんに怒られちゃうよ」
「そっか。前に見たじいちゃんも元気そうだったもんね。僕らも元気になってるってとこを見てもらわなくちゃ」
「いや、父さんに見えるとは思わないんだけど……」
「分からないよ? 僕らからはお義父さんを見れたのに、あっちからは見えないなんて言えないでしょ? なら神様にお願いしてみるのも一興ってもんだよ」
タクミの意見に賛同した夫は荒唐無稽なことを口にしていた。
「じゃぁ、早く行こうよ。神社で甘酒も飲みたいし」
完全に以前と同じにまで心が回復したとは言えないながらも、笑顔を見せるタクミに促され一家での初詣が決まった。
地元にある小さいながらも由緒正しい神社は、正月ならではの賑わいを見せていた。氏子さんによるテントでは、
温かい甘酒が配られ、その他にも日本酒を振る舞っている。お詣りもそこそこに済ませ、タクミは甘酒を、両親は日本酒を飲んでいた。歩いて来れる距離にある神社だからこその風景でもあった。
「じいちゃんに見てもらえるかなぁ」
「どうだろね。それこそ『神のみぞ知る』ってやつじゃないのかな?」
「ゲームじゃないんだから……でも父さんを見た私たちだから、もしかしたら……ね」
「そだね。そのくらいでいいんだよね」
のんびり歩いて家へと帰る時もまたじい様の話題で持ちきりだった。
その晩、またじい様の夢を見た。
「……父さん、楽しんでたわね」
「ところてん食べて、ついた餅をきな粉と大根おろしで食べて、マグロ解体してたね」
「お義父さんならあり得ないことじゃないと思う僕らもどうかと思うよ」
苦笑いしながら夢の話をしていた浅尾家は、一月二日の朝から笑いが起こるのだった。
その晩は自分を神だと名乗る美青年が両親の夢へと現れた。
暇な時にでもじい様の口座を探してみてはどうかと。それは自分からの誠意であり、セイタロウさんが用意しているお金だから、タクミの為に使って欲しいと。
「二日続けて変な夢ね。でもあの人、イケメンだったわ」
「そこを気にするのかい? 話の内容を気にしようよ……」
何事においても今を楽しむ性質をしっかり受け継いでいる奥さんに若干呆れる夫だった。
「お義父さんの口座って前に見たよね? 他にもあったのかな?」
「分からないわね。母さんと一緒に残してたのかもしれないわ。私たちに伝え忘れてただけって線もあるから……」
「急ぐこともないし、今度探してみようか。お義母さんの箪笥とか葛籠に入ってるかもしれないから」
「そうね。母さんの服も陰干ししたいから丁度いいかも。今度やりましょう」
何故か見る度に増えていく通帳を見つけるのはもう少し先のことだった。
浅尾家の朝は正月でも早かった。じい様の仏壇へお茶とご飯を供えると皆で手をあわせる。
「忌中じゃないから初詣に行かない?」
「喪中なのにいいの? 行かないのが普通なんじゃないの?」
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「忌中が明けてるし、僕たちが前を見ようとしてるんだから問題ないよ。気分が滅入ってるなら話は別だけどね」
「そんなものなの?」
夫の言葉に疑問を投げかける。
「そんなもんだよ。それにいつまでも、くよくよメソメソしてたらお義父さんに怒られちゃうよ」
「そっか。前に見たじいちゃんも元気そうだったもんね。僕らも元気になってるってとこを見てもらわなくちゃ」
「いや、父さんに見えるとは思わないんだけど……」
「分からないよ? 僕らからはお義父さんを見れたのに、あっちからは見えないなんて言えないでしょ? なら神様にお願いしてみるのも一興ってもんだよ」
タクミの意見に賛同した夫は荒唐無稽なことを口にしていた。
「じゃぁ、早く行こうよ。神社で甘酒も飲みたいし」
完全に以前と同じにまで心が回復したとは言えないながらも、笑顔を見せるタクミに促され一家での初詣が決まった。
地元にある小さいながらも由緒正しい神社は、正月ならではの賑わいを見せていた。氏子さんによるテントでは、
温かい甘酒が配られ、その他にも日本酒を振る舞っている。お詣りもそこそこに済ませ、タクミは甘酒を、両親は日本酒を飲んでいた。歩いて来れる距離にある神社だからこその風景でもあった。
「じいちゃんに見てもらえるかなぁ」
「どうだろね。それこそ『神のみぞ知る』ってやつじゃないのかな?」
「ゲームじゃないんだから……でも父さんを見た私たちだから、もしかしたら……ね」
「そだね。そのくらいでいいんだよね」
のんびり歩いて家へと帰る時もまたじい様の話題で持ちきりだった。
その晩、またじい様の夢を見た。
「……父さん、楽しんでたわね」
「ところてん食べて、ついた餅をきな粉と大根おろしで食べて、マグロ解体してたね」
「お義父さんならあり得ないことじゃないと思う僕らもどうかと思うよ」
苦笑いしながら夢の話をしていた浅尾家は、一月二日の朝から笑いが起こるのだった。
その晩は自分を神だと名乗る美青年が両親の夢へと現れた。
暇な時にでもじい様の口座を探してみてはどうかと。それは自分からの誠意であり、セイタロウさんが用意しているお金だから、タクミの為に使って欲しいと。
「二日続けて変な夢ね。でもあの人、イケメンだったわ」
「そこを気にするのかい? 話の内容を気にしようよ……」
何事においても今を楽しむ性質をしっかり受け継いでいる奥さんに若干呆れる夫だった。
「お義父さんの口座って前に見たよね? 他にもあったのかな?」
「分からないわね。母さんと一緒に残してたのかもしれないわ。私たちに伝え忘れてただけって線もあるから……」
「急ぐこともないし、今度探してみようか。お義母さんの箪笥とか葛籠に入ってるかもしれないから」
「そうね。母さんの服も陰干ししたいから丁度いいかも。今度やりましょう」
何故か見る度に増えていく通帳を見つけるのはもう少し先のことだった。
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