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プロローグ
しおりを挟む「つ、付き合ってください!」
学校に植えられた桜が綺麗に咲いていて、風で花びら舞っていた。
現在、始業式の後。
つまり放課後。
突然校舎裏に呼び出された僕は、これまた突然交際を申し込まれた。
放課後の校舎裏といえば、僕は二つのことが頭に浮かぶ。
一つは暴力。
学校の校舎裏なんて、僕にとっては怖いものであり、関わりたくない。
もう一つは告白。
今回は学校中に暴力事件が起こったと広まることは内容だ。
だが、まさか僕が告白されるとは思っていなかった。暴力を振るわれる理由もないから、第三の可能性を探していたけどそんなものは見つかることもなく、見つける必要もなかった。
まさか僕が彼女に告白されるとは思わなかった。
なぜなら、僕と彼女の関係はただのクラスメイトであり、それ以上でもそれ以下でもないから。
「……はい」
僕は断る理由もなく、渋々彼女からの交際の申し込みを了承してしまった。
それにこんな顔されてしまったら、僕に断るという選択肢がそもそも存在しなかった。
このたった一言で彼女の緊張で強張っていた顔が、ぱっと明るくなる。
僕にとっては、この一言が彼女の表情を変えるほどの力があるとは思えない。
僕と彼女は、全然違う人種らしい。
これから明るく人気者の彼女と、物静かで冴えない僕との騒がしい日常がスタートする。
この新しい日常について考えると、僕は憂鬱になってしまう。
僕の心を覆い隠す雲を払いどけるかのように太陽が僕を照らし、程よく暖かい風が僕の髪をなびかせた。
とても春らしくいい天気だ
「これからよろしくね」
彼女の笑顔は、春に咲く桜とは違い、夏に咲くひまわりのようだ。
春には似合わないとても眩しい笑顔だ。
高校二年の春、僕―小野靖人は彼女―晴矢明日香と付き合うことになった。
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